テラーノベル
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そして翌朝、花純は知らない部屋で目覚めた。
一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。
壁も天井も真っ白で、窓一面には澄み切った青空が見える。
(そうだ、ここは副社長の家だったわ…)
その時花純はここへ来る事になった経緯を思い出した。
車がタワーマンションの地下駐車場へ停まった瞬間、花純は体調が一気に悪化したのだ。
強烈な寒気と高熱により意識も朦朧としていた。まっすぐ歩く事もままならない。
火事による精神的ショックがさらなる追い打ちをかけ、心身共にかなりダメージを受けていた。
だから花純は車を降りた所までの記憶しかなかった。
意識が薄れゆく中、誰かが花純の名前を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
しかしそれが誰だったのか覚えていない。
(まさか副社長がここまで運んでくれたの?)
花純は必死に記憶を辿り始める。
(そう言えば、一度目覚めて薬か何かを飲んだような?)
花純はハッとすると、すぐにベッドの周りを見回す。
するとナイトテーブルの上には水の入ったコップと薬局の薬袋が置かれていた。
(えっ?)
病院に行った記憶がないのに病院処方の薬が置いてある。
不思議に思った花純はその袋を手に取りじっと見つめる。そこには調剤薬局の名が記されていた。
その後花純はのろのろとベッドから起き上がり部屋全体を見回した。
部屋の片隅には、花純の荷物がまとめて置かれていた。
その横の椅子の上には、花純のジーンズとカットソーが綺麗に畳まれて置いてある。
(えっ? もしかして洗濯してくれたの?)
その服は、アパートから持ち出す際にびっしょりと濡れていた服だ。
それが今はきちんと乾いて綺麗に畳まれていた。
洗濯された服は他にもあるようだ。全てきちんと畳まれて椅子に積み上げられていた。
花純は慌ててベッドから飛び起きた。
急に激しい動きをしたので頭がズキンと痛む。
その時花純は自分がパジャマに着替えている事に気付いた。
火事の日チェストの奥に入っていた為、濡れずに済んだパジャマだ。
(えっ? 誰が着替えを?)
花純は途端にギョッとする。
(まさか副社長が?)
びっくりして花純は慌てて部屋を飛び出した。
廊下に出ると、長い廊下の両側にはいくつもの扉がある。
床は白い大理石で艶々と輝いていた。
(うわっ、凄く高級なマンションだわ…)
花純が緊張しながら廊下を歩いていると、一番突き当りのドアが開き壮馬が姿を見せた。
壮馬はなぜかエプロンをつけている。
「起きたか? 体調はどうだ?」
びっくりした花純は慌てて答える。
「もう大丈夫です。すみません、ご心配をおかけしました」
「それなら良かった。今朝食の準備をしているけど食べられるかな?」
(えっ? 副社長が朝食の準備を?)
花純は驚きながらすぐに返事をする。
「食べられると思います」
「じゃあ洗面所はそこだから、顔を洗って着替えたらこっちに来なさい」
壮馬はそう言ってドアを閉めた。
パジャマのままポカンと立ち尽くしていた花純はしばらく動けずにいたが、
急に我に返ると部屋へ戻って着替える。
洗いたてのジーンズとカットソーはフワッとしていて着心地が良かった。
着替えを終えた花純は洗面所へ向かう。
洗面所には、フワフワのタオルと新しい歯ブラシが置かれていた。
(うわっ、副社長気が利く…)
花純は思わず感心する。
そして歯を磨きながら洗面所を見回した。
(凄いわ、まるでホテルみたい……)
洗面所の造りが普通のマンションとは違い、まるでホテルのパウダールームのようだ。
奥の扉が開いていたのでチラリと中を覗くと、豪華なバスルームがあった。
おそらく壮馬がシャワーを浴びたのだろう。バスルームには使われた形跡がある。
花純は再び鏡の前に戻ると、鏡に映る自分の姿を見る。
(うわっ、最悪…)
そこにはボロボロの身なりの自分の姿が映し出されていた。
化粧も落とさず寝た上に、高熱で汗をかいたせいで肌はボロボロだった。
こんな顔を副社長に見られたのかと思うと、恥ずかしさのあまり穴があったら入りたい気持ちになる。
花純はその顔の汚れを落とそうと丁寧に顔を洗った。
そしてフワフワのタオルで顔を拭きながら考える。
(こういう場合って、化粧をするべき? それともスッピン?)
男性の家で目覚めた経験のない花純は、どうしたらいいものかと悩み始める。
しかし顔は洗ってすっきりしたものの、身体はまだ汗でベタベタで髪もクシャクシャだ。
花純は悩んだ末、スッピンのまま副社長の元へ行く事にした。
コメント
3件
熱が下がって一安心🤒 えっと、お着替えは何方が? 猟銃民壮馬さん、お顔緩んでませんか?
花純ちゃんの熱が下がって良かった~😌 壮馬さん、花純ちゃんを 付きっきりで看病してあげていたようですね♥️✨ お洗濯や 食事の準備、えぇ~~っ⁉️着替えも⁉️(/ω\)キャアー( 〃▽〃)スパダリ...♡
壮馬さん副社長なのにいろいろできる男👨✨凄い👍 花純ンはいろいろしてもらって恐縮だろうけど、壮馬さんにお任せしちゃお❣️ なんたって狩猟民族なんだから花純ンがここに来た今ご満悦です🤭