私は個人で絵のモデルをやっている。今日は新しい絵画教室で採用の面接だ。ちゃんとしたところだといいな。
「こんにちはー」
「あ、こんにちは!」
若い男性の先生だった。ちょっとびっくりしたけど、良かった。優しそうな感じだし。
「えっと、じゃあまずお名前教えてください」
「はい! 『小鳥遊』です」
「小鳥遊さんですね。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「えっと……じゃあとりあえず服脱いでください」
「はい」
やっぱりそうきたか。まぁそうだよね。でも大丈夫かな。あんまり変な人じゃないと良いんだけど。私は着ていたシャツを脱ぎ、スカートも脱ぐ。ブラジャーを外すときに一瞬躊躇したが思い切って外す。
「はい。全部脱げましたよ」
「…………」
ん? どうしたんだろう。何かおかしいところあったかな?
「あ、あのどうかしました?」
「いえ……刺青とかはないですし、体格もいいですね。いきなりごめんなさいね。うちは、小学生が社会見学に来たりするくらいしっかりした絵画教室なんで、モデルさんもちゃんとした人でないと困るもので」
「そうなんですね」
よかった……。本当に良かった。でもまだ安心はできない。これから何があるかわかんないし。
「じゃあ次は、この椅子に座ってください」
「はい」
うわぁ……なんか凄く恥ずかしいなこれ。座ったことで私の下半身は完全に丸見えになっている。しかもポーズの指示はまだないから、ずっとこのままの状態が続くことになる。
「あの、ポーズの指定って……」
「ああ、特にありません。ただじっとしてるだけでいいですよ」
そんなことある!? 何もしてなくていいなら楽だけどさ。それからしばらく待っても指示はなかった。私もだんだん慣れてきて、この状況にも落ち着いてくる。
「そろそろいいですかね」
「はい。もう大丈夫です。次は、ここに立ってください」
「わかりました」
ようやくポーズ指定があったようだ。でもこれでやっと終わるのか。少し疲れたなぁ。私が指定された場所に立っていると、先生が近づいてきて耳元で言う。
「うん、合格ですね。それでは、今日からさっそくモデルに入ってもらえますか?」
「え? は、はい! ありがとうございます!」
やった! 採用されたみたいだ! まさかこんなに早く採用されるとは思わなかった。
「それじゃあ絵画教室は30分後なので、それまでは休憩していてください」(続く)