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#貴種漂流譚
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ぶぅん!!
空を切る音を立てて、ダインの小さな頭を目がけて、無慈悲な落下を開始する大剣。
その赤錆びた刃がダインの顔を真っ二つにする――、その直前だった。
「…………ッ!?」
その場に飛び込んできたのは、一陣の黒い旋風。
そこから撃ち放たれる、銀の一閃。ギィン、と冷たく乾いた音を響かせ、大剣が大きく弾き飛ばされる。
「子どもが夜、一人で出歩いくと必ず面倒が起きる」
ダインを庇うかのように、その目の前にサラリと落ちる、漆黒の外套の裾。
「姉上が悲しむようなことは避けるがいい」
「あ、あんた……?」
仮面の旅人、ヴァロフェスだった。
肩越しにダインを振り返り、感情のこもらない、冷淡な視線を送ってくる。
「な、なんで? なんで、あんたが……」
「そこで大人しく待っていろ」
涙と鼻水で顔をグチャグチャにしているダインにヴァロフェスが短く命じた。
「カタは、私がつけてやる」
そう言って、ヴァロフェスには手にした得物――、銀のステッキの先端を戦士に向かってつき付ける。「さて。……今宵も狂い咲くとしようか」
うぉおおおおおおおおおおおおっ!!
獣のような咆哮をあげる、巨体の戦士。凍てつくような殺気をまとい、大剣を大上段に振りかざしながら、仮面の男に切りかかってゆく。
断頭台の刃のごとき斬撃が、空を裂き、横薙ぎにヴァロフェスを襲う。
しかし、仮面の男は、足を僅かにずらしただけでその一撃を回避。勢いあまり、そこに立っていた樹木を真っ二つに切り飛ばす大剣。
その隙を逃さず、ヴァロフェスは外套をはためかせ、全身を回転させながら、戦士の懐へと飛び込む。そして、気合いの声を発し、手にしたステッキを槍のように突き出して、敵の胴を深々と貫く。
否――、貫いたかに見えた。
次の瞬間、戦士の巨体は煙のように薄れ、霧散し、消えた。ぬぅ、と唸り声を発しながら後ろへと飛び退くヴァロフェス。
その頭上で燃え上がったのは、青白い怪火だった。
「いいだろう……」凄まじいまでの怒気を孕んだ、戦士の声が響く。
「ダインよ、お前につけを払わすのはやめだ。その代わり――」
「逃げるかッ!!」
一喝し、怪火に向かってステッキを投擲するヴァロフェス。
しかし、その一撃は怪火をすり抜け、近くの木の幹に深々と突き刺さった。
「そんなもので、この俺が滅ぼせるものかよッ!!」
ゲラゲラと高笑いを残し、空を飛び去る怪火。
ダインは呆然と、口を半開きにしてそれを見上げているしかなかった。