次の日優羽は仕事を5時で上がらせてもらい流星を迎えに行く。
山荘を出る際スタッフの皆は楽しんでおいでと言ってくれた。これから山に入る岳大としばらく会えない優羽を気遣ってくれているようだ。
皆の優しさに優羽は心から感謝の気持ちでいっぱいだった。
一泊するのに必要な物を車に詰め込むと優羽は保育園に向かう前にスーパーに寄った。
今日は流星のリクエストでハンバーグを作る予定だ。
流星にはいつものハンバーグを、大人二人には赤ワインを効かせたレストラン風のソースにしようと赤ワインもカゴに入れる。
その他にもデザートや朝食用の食材を買ってから保育園に向かった。
保育園の園舎に入ると流星は友達の大樹とお喋りをしていた。
「ぼくね、きょうね、おとうさんのおうちにいくんだ」
「あれ? りゅうちゃん、おとうさんいないっていってたよね?」
大樹が不思議そうな顔をして聞くと流星は得意気に言った。
「うん、いままではね。でもね、あたらしいおとうさんができるんだ」
「へぇーそうなんだーよかったねー」
流星と大樹はニコニコと微笑んでいる。
流星が誇らしげに岳大の事を語る様子を見て優羽の目頭がジーンと熱くなる。
しかしぐっと涙をこらえると優羽は流星を呼んだ。
「流星、お待たせ」
「あっママ! じゃあね、だいきくんバイバイ」
流星は大樹に手を振りながら優羽の元まで走って来た。
それから満面の笑みを浮かべて聞く。
「いまからたけちゃんのところにいくんだよね?」
「そうよ。今夜はお泊まりして明日までいられるからいっぱい遊べるわね」
「やったーぼくね、たけちゃんのおうちにおとまりしてみたかったんだ」
流星は優羽と手を繋ぎながらぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねる。
それから二人は岳大の家に向かった。岳大の家は保育園の近くなのであっという間に到着した。
車の音を聞きつけた岳大が玄関を開けて待っていてくれた。
岳大が玄関にいる事に気付いた流星は車を降りると勢いよく走って行き岳大に抱き着く。
「たけちゃんこんにちは」
「おーっ、勢いよく来たなー! いらっしゃい!」
岳大は笑いながらr流星を抱き上げると優羽が車から降りて来るのを待った。
優羽がバッグと買い物袋を手にして出て来ると岳大が笑顔で言う。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
すると岳大は優羽が持っていた買い物袋を空いている方の手で持ちキッチンまで持って行ってくれた。
家に入ると早速流星が岳大に纏わりつく。
「たけちゃん、いまからぼくのすきなアニメがはじまるからいっしょにみようよ」
流星は珍しく甘えたように岳大にせがんだ。すると岳大は「よーしわかった」と言いソファーへ流星を座らせる。
「あれ? ソファー?」
「やっと買ったよ」
流星は早速ソファーの上でぴょんぴょんと跳ねている。
ブラウンのソファーはカウチ付きの三人掛けで座面の奥行きも広くとても座り心地が良さそうだ。
飛び跳ねていた流星はカウチ部分へ移動するとゴロンと寝転がる。
「ここでねんねできるねー」
流星は嬉しそうに言う。すると岳大が流星の隣にゴロンと横たわった。
二人はそこへ寝そべったまま始まったばかりのアニメを見始める。流星はニコニコと嬉しそうだ。
その間に優羽はキッチンで料理を作り始めた。サラダを先に作り冷蔵庫で冷やしておく。
そしてハンバーグとミネストローネを同時に作り始めた。
料理が仕上がるとスーパー内のパン屋で買ったフランスパンを切り分け流星にはロールパンを添える。
デザートは流星にプリンを、大人二人にはコーヒーゼリーを買って来たので食後に出す予定だ。
室内には美味しそうな匂いが漂い始めた。
優羽がキッチンで手際よく動く様子を時折岳大がチラリと見ている。その表情はとても嬉しそうだ。
テレビのアニメが終わると流星はバッグから昆虫図鑑を取り出してきて岳大に読んでとせがむ。
岳大はカウチから起き上がると今度はソファーに胡坐をかいて座りその上に流星を乗せ本を読み始める。
その様子はまるで本当の親子のように見えた。
料理の合間に二人に視線を送ると楽しそうに話していた。
その光景を見て感無量になる。優羽の心の中は今幸せな気持ちに満たされていた。
そして夕食が出来上がった。
子供用のハイチェアがなかったので食事はリビングテーブルで食べる事にした。
優羽が部屋から持って来た子供用ローチェアを置くと流星はそこにちょこんと座る。それを見た岳大が言った。
「ダイニング用のハイチェアを買わないとね」
「わざわざ買わなくても…勿体ないわ」
「いや、これからはこういう機会も増えるだろうから今度買っておくよ」
優羽は岳大の言葉を聞いて嬉しくなる。
それから三人は「いただきます」と言って食事を始めた。
岳大は優羽が作った料理がどれも美味しいと褒めてくれた。特に赤ワインが効いたハンバーグソースが絶品だと言って嬉しそうに食べている。
流星はいつものようにほっぺたにソースをつけながら一生懸命食べている。
そしてハンバーグをもぐもぐしながら岳大に言った。
「ぼく、ママのはんばーぐがいちばんすきなの」
「僕も好きだなぁ。どれも美味しいね」
岳大がニッコリ微笑んで言うと釣られて流星も笑顔になる。
「みんなでたべるとおいしいねぇ」
流星がいつものように大人びた口調で言ったので岳大と優羽は声を出して笑った。
春の気配が少しずつ近づいて来るこの季節、岳大の家にはあたたかいオレンジ色の明かりが灯っていた。そしてその明かりの下では新しい家族三人の楽しそうな笑い声がいつまでも響いていた。
コメント
3件
素敵な家族風景🧑🧑🧒
やっぱり流星くんがキーパーソンだよねー。 流星くんが岳大さんになつかなければこごまでにはならなかっただろうし… これから流星くんはお父さんとお風呂にはいるのかな?
さりげなく保育所でお友達新しいお父さんができることを話す流星君がいじらしい😊🥰❣️ そしてそれを聞いた優羽ちゃんも感涙ですね♪ 岳大さん家でも岳大さんに抱っこしてもらったり優羽ちゃんの美味しいハンバーグを2人とも堪能してもうほぼ家族だよね🧑🧑🧒💞 優羽ちゃんも岳大さんと流星くんの仲良しショットでますます癒されて幸せ満喫🩷羨ましい✨🥰