一方、朝倉家では深刻な事態が起こっていた。
凪子から送られて来た写真を見た良輔の母親は、その後夫と良輔にその事を伝える。
それからの日々、絵里奈は窮地に立たされていた。
良輔と義理の両親は、絵里奈にDNA鑑定を受けるように要求してきた。
子供の父親は、以前同棲していた年下のバンドマンかもしれないと絵里奈はうすうす気づいていた。
しかしそのバンドマンの元彼も良輔も血液型はO型だった。そして絵里奈もO型だ。
だからバレないと思い、そのまま良輔と結婚したのだ。
良輔と結婚する前に、絵里奈はバンドマンの元彼とはきっちりと別れている。
生活費も払えない元彼との関係に将来性がないと思った絵里奈は、良輔を選んだのだ。
そしてそれ以降元彼とは連絡も取っていない。
やっと経済的な不安もなく安定した妻の座につけたというのに、
まさかこんな事態になるとは思ってもいなかった。
絵里奈はかなり焦っていた。なぜバレたのか? しかし考えてみても全く見当はつかない。
いくら義理の両親に聞いても、情報の出所は教えてはもらえなかった。
絵里奈が親子鑑定を受けなければ、絵里奈の実家に全て話すと脅されたので絵里奈はしぶしぶ二週間前に鑑定を受けた。
その結果が今日届いた。
この日、絵里奈がソファーに座ってテレビを見ていると、ものすごい形相で義理の両親が二階へ上がって来た。
その後四人はテーブルを囲んで座っていた。重々しい空気の中、良輔の母が一番に口を開いた。
「鑑定の結果が来たのよ。先に見せて貰ったわ。絵里奈さん、あなたのお腹の中にいる子供は良輔の子供じゃなかったわ! 一体どういう事? あなたは良輔を騙したのね? 良輔だけじゃなく私達まで騙したのね?」
義理の母のものすごい形相にギョッとしながら絵里奈は必死に言った。
「お母様、それは何かの間違いです! お腹の子は確かに良輔さんの……」
そこで遮るように良輔が言った。
「絵里奈、お前騙したな! お前はあの時俺とバンドマンと二股かけてたんだろう?」
「違うのよ良輔さんっ、その時はもう別れていて……」
「言い訳するなっ! これ以上嘘を重ねるつもりなら裁判でもなんでもしてやるからな」
良輔は怒りのあまり大声で怒鳴った。
「お前は凪子と俺の結婚生活を壊しただけじゃなく、俺の親まで騙して違う男の子供を俺達に育てさせようとしたんだぞ! もう許せない! 今すぐ家を出て行けっ! 俺は他の男の子供をこの家で育てるつもりはないっ! いいかこの尻軽女っ! 二度と俺の前に姿を見せるな!」
捲し立てる良輔の事を、良輔の両親は感極まった様子で見つめていた。
自分達が言いたかった事を全て息子が言ってくれたので良輔の両親の出る幕はなかった。
その時、つけっぱなしだったテレビから歓声が漏れて来た。
「おめでとうございまーす!」
「戸崎さん、おめでとうございます! 一言お願いします!」
「えー、今日はこんなに大勢の方にお集まりいただき感激しております。私達はこれから教会へ移動して式を挙げる予定です」
「新婦様が身に纏っているドレスは、戸崎さんがデザインされたものですか?」
「そうです。これは彼女の為に作った特別なドレスです」
そこで周りにいた女性達から「キャーッ」という歓声が湧き上がる。
「おめでとうございます!」
「おめでとうございまーす!」
四人はそれを呆然と見つめていた。そして中でも一番ショックを受けていた良輔が呟いた。
「凪子が戸崎と?」
ウェディングドレスを着た凪子は、とても美しかった。モデル、女優…いやそれ以上に美しく輝いていた。
テレビに映る女性は、かつて自分の妻だった。ハワイでウエディングドレスを着て自分と結婚した女だ。
その女が今、別の男と結婚しようとしていた。
そしてその女は、ハワイの時よりも何十倍も、いや何百倍も美しくなっていた。
ショックのあまり良輔の身体が硬直する。
すると横から良輔の母親がポツリと呟いた。
「凪子さんがずっとお嫁さんだったら良かったのに…あの子は本当に優しい嫁だったわ」
母親はテレビに映る凪子を感慨深げに見ていた。そして隣にいる父親もうんうんと残念そうに頷いていた。
そんな義理の両親を見てムッとした絵里奈が言った。
「とにかく私はこの家から出ませんから! 離婚はしませんから!」
頑なにこの家を出る事を拒否をした。
そこで、ずっと黙っていた良輔の父親が口を開いた。
「絵里奈さん、うちの家系の血が入っていない孫をどうして私達が育てなきゃいけないんだい? 本来ならあなたはご実家へ帰るべきでしょう?」
静かな口調だったが、とても威圧感のある言葉だったので絵里奈も黙り込んでしまう。
そこで良輔の母が追い打ちをかけるように言った。
「とにかく今からあなたのご両親へ連絡をさせて貰うわ。すぐに迎えに来てもらうから。当面必要な荷物を纏めておきなさい。残りの荷物は後で送るから」
良輔の母が言い終えるとちょうどテレビの画面が切り替わった。どうやら話題が変わったようだ。
しかし次に流れ始めた映像を見て絵里奈が息を呑んだ。
「えー、次の話題は、デビューした途端大人気のロックバンドグループ『stormストーム』のボーカル・柳原圭さんのホットな話題です。本日発売の週刊誌で柳原さんが女優の川村秋奈さんのマンションへ一緒に入っていく所をパパラッチされましたねー! いやぁ驚きましたー」
ワイドショーの話題は、柳原圭というバンドのボーカリストの熱愛の話題へと変わった。
良輔はそのボーカルの顔に見覚えがあるような気がした。良輔の両親も同じ思いのようで不思議そうな顔をしている。
しかし絵里奈だけは手をわなわなと震わせながら真っ青な顔をしていた。
そこで三人は気づいた。今テレビに映っているボーカリストは絵里奈と同棲していた男だということに。
絵里奈の元彼は今では有名バンドのボーカリストとして活躍していた。そしてその元彼は現在有名女優と熱愛中のようだ。
そこで良輔が大声で笑い出した。
「ハハハハッ! お前罰が当たったな! そんなちゃらんぽらんな生き方をしているから罰が当たったんだよ! 相手は今や、テレビのワイドショーで騒がれるほどの有名人だってさ。お前が我慢してずっと支えてやってれば今頃テレビに出ていたのはお前かもしれないのにさ、ハハハハッ笑っちゃうよな!」
そこで追い打ちをかけるように良輔の母も言う。
「ほんとねぇ…あの人と付き合い続けていたらきっと今頃は彼の奥さんだったかもねぇ。でももう遅いわね。今はあんな綺麗な女優さんと付き合ってるんだから」
良輔の母も愉快そうに笑う。
そこで、とうとう絵里奈が声を出して泣き始めた。泣きながら、
「なんなのよっ! 私が一体何をしたって言うのっ! なんなのよっ、もうーーーーっ!」
絵里奈は悲痛な声で叫びながら大声で泣き続けた。
しかしそんな絵里奈に優しい言葉をかける者は一人もいなかった。
コメント
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なんか…もう。 全員につける薬なし
凪子さんと信也さんの二人を欺くまでして せっかく手に入れた妻を裏切り 浮気を重ねていた良輔、二股不倫の絵里奈、凪子さんをずっと冷遇していた良輔の両親....💦 どっちもどっち、似た者同士達の醜くすぎる足の引っ張り合いに苦笑😓 まあ やらかしてしまったことをしっかり反省し、これからは まともな道を歩んでください。
そもそも良輔も凪子さんが入院した時に戸崎さんのお見舞いを伝えるべきだった。その後は絵里奈との不倫も合意だったんだから絵里奈と同罪なの、わからない💢⁉️ 平気で嘘を浮くくせに偉そうに親と一緒にほざくな‼️‼️ しっかり反省して今後人に迷惑をかけない人生を歩めよ😡🤬💢