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真っ青な空の下、一面のひまわりが風に揺れていた。背丈ほどもある花たちが、まるでこっちを見て微笑んでいるみたいだ。
その真ん中を、翔太と並んで歩く。
「すげぇな……全部、同じ方向向いてる」
「太陽の方を向くんだよ。ひまわりって」
「じゃあ、夏海も太陽の方見なきゃ」
「え?」
「だって名前、夏の海でしょ? 夏の花と太陽に似合うじゃん」
ふざけた調子で言うのに、耳が少し熱くなる。
私はカメラを取り出し、翔太の後ろ姿を一枚撮った。
「ちょっと、俺ばっか撮ってない?」
「そうかな」
「ほら、今度は俺が撮る」
彼がスマホを構えると、私はとっさにひまわりを一輪抱えるポーズをとった。
カシャ、というシャッター音が、夏の空に軽く響く。
「うん、いい感じ。待ち受けにしよ」
「やめてよ」
「じゃあ、交換条件。俺の写真も夏海の待ち受けに」
「……考えとく」
風が吹き抜け、ひまわりの葉がざわざわと揺れる。
その音が笑い声に重なって、まるでこの日が永遠に続くような気がした。