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水面に落ちた星屑

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水面に落ちた星屑

第46話 - 第46話

200

2024年07月18日

#恋愛

#大人の恋愛

#大人ロマンス

#第3回テノコン

#ハッピーエンド

#純愛

瑠璃マリコ

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200

瑠璃マリコ

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午後に予定通り三人の来客があった。

一人目は建築士の夏樹涼平。彼は岳大の友人で今度オープンする第一号店の設計を任されていた。

そして二人目は、こちらも岳大の大学の二年後輩の佐倉健吾。佐倉は為替トレードで巨額の財を成した個人投資家で、ネット上

で投資系ジャンルでのライブ動画配信もしているという少し風変わりな男だった。

しかし見た目は端正な顔立ちのかなりのイケメンで、佐倉は今回岳大の出店の共同出資者を買って出てくれた。

最後は岳大と同じ歳の田村浩。彼は大手広告代理店勤務で岳大とは共通の友人を介して知り合った。

岳大の写真を用いた大企業のポスターやパンフレット、そして写真集の仕事は、全てこの田村が間に入っている。

岳大が山岳写真家として有名になったのも、この田村の力が大きいと言える。

そんな田村自身も趣味がバス釣りやキャンプといったアウトドアだったので、今回の仕事に関しては大乗り気だった。

皆の顔合わせが済んだ所でいよいよ話し合いが始まった。

まずは夏樹が店舗設計のパースデザインと、実際の建物に近い3DCG画像を見せてくれた。それを見た他の五人は感嘆の声あげ

た。

大きな片流れ屋根の店舗は全体がアッシュブラウンの木材で覆われ、前面がガラス張りとなっていた。

店の前は広い駐車場になっており、店から駐車場に繋がる一角には芝生で覆われたスペースがあった。この場所はテントの張り

方等の講習やちょっとしたイベントスペースとして利用が可能だ。

店の周りには木のベンチやテーブルセットがいくつも置かれ、来店客が寛げるようなスペースがあちこちにある。

駐車場にキッチンカーを置けば、ちょっとしたカフェの雰囲気も味わえるだろう。

店内は大きなガラス窓からの採光でとても明るい。天井は吹き抜けになっていて開放感に溢れていた。

商品を置く棚やレジがあるカウンターにも、ふんだんに木材が使われており、まるで山小屋の中にいるような雰囲気だ。

店内にもいくつものベンチや椅子が置かれており、買い物客が自由に寛げるようになっている。

それを見た優羽は思わず、

「素敵！」

と呟いた。すると設計した夏樹が、

「ありがとうございます。リクエスト通り、思いっきり山小屋風にしてみました」

と言って笑った。

店舗のデザインは一同総意でクリアした。これにより、夏樹は本格的に店舗の建築へ向かっての準備を進める事になった。

次に広告代理店の田村がいくつか岳大に質問をした。

ブランドのイメージ戦略、そしてカタログの撮影やネットショップについて、また具体的なオープンの時期や、スタッフの募集

の仕方など、それこそ細かい部分までチェックを始める。

カタログ作成の件については優羽にも質問が来た。具体的なコーディネートのイメージや、どんなモデルが希望か等、いよいよ

優羽のコーディネートが具現化する。優羽は慣れない企画会議に緊張しつつも、出来る限り具体的に、そして詳細に田村の質問

に答えていった。

六人での戦略会議は夕方の六時まで続いた。

店のオープンに関するPRは、雑誌やテレビで取り上げてもらえるように田村が手配してくれる事になった。また、投資系動画配信者の佐倉も、ネット上で宣伝してくれると言った。

佐倉のチャンネル登録者数はかなりの数にのぼり、佐倉自身も投資以外に釣り動画などを上げているので、今後はその際に『peak hunt5』のウェアを着用してくれる事になった。

その後企画会議は終了した。

三人が帰ると、井上はファーーーと伸びをしてから言った。

「さすがに疲れましたねー。でもかなり充実した会議でしたね」

「いよいよだな！　これからはもっと忙しくなるぞ！」

岳大はカップの中の冷めたコーヒーを飲み干す。

それから来客用のカップを洗っている優羽に聞いた。

「優羽さんも疲れたでしょう？」

「緊張しましたが、なんだかワクワクの方が大きくて、これからがすごく楽しみです！」

優羽が笑顔で答える。

その時井上が、

「あっ、もうこんな時間か！　すみませんが、一足お先に失礼します」

そう言って慌ててバッグに荷物を詰めて帰り支度を始めた。

「優羽さんが長野に帰るのは明日の昼過ぎですよね。だったら明日の朝もう一度会えますね！」

「はい」

「井上君お疲れ！　今日はデートだったのに悪かったね」

「いえ、全然大丈夫ですよ」

井上は笑顔で言うと、二人に挨拶をして部屋を後にした。

食器を片付け終わった優羽も帰り支度を始めると、岳大が声をかけた。

「今夜予定がなければ一緒に飯に行きませんか？　東京での最後の夜だし」

「予定は特にないです」

「じゃあ行きましょう」

岳大が車の鍵を手にして玄関へ向かったので、優羽も慌てて岳大の後を追った。