テラーノベル
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#赤ずきん
#玉座がメインヒロイン
夜の森は静かだった。
風の音すら、何かを隠しているように思えるほどに。
「……またか」
低い声が、ぽつりと落ちた。
木々の間を歩くのは、一人の男。
無造作な足取り、面倒くさそうな表情。だがその目だけは鋭く、周囲を警戒している。
彼は“人狼”だった。
もっとも——
本人にその気はない。
「……人殺し、ね」
村で起きた連続事件。
すべて“人狼の仕業”とされている。
だが、彼は知っていた。
自分はやっていない。
なのに、疑われ、追われ、
そして今もこうして“犯人探し”をしている。
「はぁ……めんどくせぇ」
その時だった。
——ぐちゃり。
嫌な音が、すぐ近くで響いた。
男の足が止まる。
ゆっくりと、音のした方へ視線を向ける。
そこにいたのは——
赤いフードを被った、小さな少女。
「……あ」
少女は振り返った。
手には、まだ温かい“何か”。
月明かりが照らす。
それは——人の腕だった。
「こんばんは!」
少女は、にこっと笑った。
まるで、道で誰かに会った時のように。
「……お前、何してる」
男の声は低い。
だが少女は気にした様子もなく、首をかしげた。
「え?見て分かんない?」
ころころと笑う。
「お片付けだよ!」
その足元には、すでに動かなくなった人間が横たわっていた。
血が、ゆっくりと地面に広がっている。
「……お前がやったのか」
「うん!」
即答だった。
悪びれる様子は、一切ない。
それどころか——
「ねぇねぇお兄さん」
少女は近づいてくる。
血のついた手のまま。
「お兄さんってさ、“人狼”?」
——空気が凍る。
男の目が細められた。
「……違うって言ったら?」
少女は、少し考える素振りをしてから。
にぱっと笑った。
「どっちでもいいや!」
——ぞくり。
本能が告げる。
こいつは危険だ。
「だってさ」
少女は一歩、また一歩と近づく。
「お兄さん、壊れなさそうだもん!」
その言葉の意味を、理解する前に。
「ねぇ、一緒に遊ぼ?」
無邪気な声。
血まみれの手が、差し出される。
「……断る」
男は短く言った。
だが少女は、全く気にしていない。
「えー、つまんないなぁ」
ぷくっと頬を膨らませて、すぐに笑う。
「でもいいや!また会おうね!」
くるり、と背を向ける。
そして——
まるで散歩でもするかのように、森の奥へ消えていった。
静寂が戻る。
男はしばらく、その場に立ち尽くしていた。
やがて——
「……あれが、“犯人”かよ」
深く息を吐く。
頭をかきながら、ぼそりと呟いた。
「……めんどくせぇのに、見つけちまったな」
月は、何も知らない顔で輝いている。
その下で——
冤罪の人狼と、無邪気な怪物が出会った。
それが、すべての始まりだった。
コメント
2件
なにこれ?すげぇ!