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雨上がりの空気が残る屋上の片隅。金網越しに、遥は空を見上げている。
蓮司と日下部は、少し離れたベンチに腰かけている。
遥「“普通の人生”って、なんなんだろうな」
蓮司「いきなりどうした、哲学者」
遥「別に。朝起きて、家に“親”がいて、何も聞かずにメシ出てきて……
学校行ったら、嫌なことあっても“まあそんなもん”って済ませて。
……そういうのを、“普通”って呼ぶんだろ?」
日下部「……それは、“誰かの理想”でしかない」
蓮司「そう。で、それを“常識”って名札で押し売ってくるのが社会。
要は、“自分が気持ちよく生きるためのテンプレ”を、他人にも強制してるだけ」
遥「じゃあ……オレみたいなのは、“異常”なんだよな。
“普通じゃない子”って、ずっと言われてきた」
蓮司「あー、それ、俺も言われた。
“おまえ、他人の顔色ばっか見て、気持ち悪い”って」
日下部(静かに)「……オレも、“もっと喋れ”って、言われた。
“言わないやつは信用できない”って。……よくわからなかった」
遥「ほんと、“普通”って何だよ」
蓮司「たぶん、“そう思いたい人の都合”の塊なんだよ。
安心したいから、“枠”作って、そこからはみ出すやつを異物扱いしてるだけ。
……で、その“はみ出し”を笑うやつが、いちばんビビってる」
日下部「……自分がそこに、いないかもしれないから?」
蓮司「そう。“自分も異物になりうる”って、怖いんだろうな。
だから、オレたちを笑っておく。否定しておく。“あいつらは違う”って」
遥「……だったら、違うまんまでいてやるよ。
“普通”が正義だなんて、オレ、一回も思ったことねえし」
日下部「……遥は、違っていい。
違ってるのを、ちゃんと自分で知ってるから」
蓮司「うん。知ってて、それでも口に出せるのは、わりと強いよ。
ただ――」
遥「“それで誰かに刺さる”って言いたいんだろ」
蓮司(小さく笑って)「……バレてたか」