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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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【 星と月はいつでも一緒。

星がなければ、月は輝けなくて

月がなければ、星は輝けない。

つまり、永遠に輝き続けるには、

星と月がペアでなければならない。 】









「失礼しま〜す!」

放課後、新聞部の活動をしていると突如顔を出した少女が居た。

「えっ。誰?だっけ…」

その少女の顔に見覚えがあった。

確か…同じクラスの葉月 翠(はづき すい)だったような。

「同じクラスなんだけどなぁ?どんだけ人に興味がないの〜?私は君のこと、覚えてるんだけどなぁ。

君は白之 一澄(しらの いずみ)くんだよね!」


「興味がないとは失礼だな。まぁ同じく興味なんてないんだけど。あ、名前は合ってる。」

投げやりにそう答えてやると、葉月は天真爛漫な笑顔を見せ、喋りだした。


「やっぱり興味ないか〜。だよねぇ。見ててわかる!」

「見ててわかるって…」

「ね、単刀直入に言うんだけど。私のこと、新聞に書いてくれない?」

と、少し真剣に聞いてきたのがわかった。

だけど俺は考える暇もなく、即答した。


「却下」

「ちょ、ちょっと!即答すぎでしょ!もうちょっと考えようよ!?」

「面倒くさいことには関わりたくない主義なんでね。ごめんけど、引き下がってくれる?」

「いやぁだぁ!嫌!嫌だよ!?」

子供のように駄々をこねだした。

まるで親にお菓子を買ってもらえなかった子供のようだ。

すると、葉月は急に顔色を変えた。

さっきまで子供のように駄々をこねていたのが嘘のようだ。


「ならさ、もし私が、〃重い病気だ〃って言ったら新聞に出してくれる?」

一気に教室の雰囲気が変わった。

どんと重い空気が流れ、まるでここの教室だけ天気が曇りのようだ。

どういう想いで〃重い病気だ〃と言ったのか、

どういう意味で〃新聞に出してくれる?〃と聞いてきたのか。僕にはいまいち理解ができなかった。


「な〜んてね!今のは全部嘘!気にしないで!」

「………」

「あれれ?どーした?もしかして信じちゃった?それならごめんね!」

「はぁ…。そんなんで誰が信じるかよ。君さ、演技下手なんだね」

「へ、下手!?けど!初めてにしては結構上手かったんじゃない?!」

へにゃりと笑みを浮かべながら大きく飛び跳ねる。それと同時に、僕は声を出した。

「一瞬…信じたけど…。どんな病気だろうって…」


それを声にした瞬間、なぜか突然恥ずかしく感じた。〃どんな病気だろう〃って。よくよく考えてみれば、それって相手のことを気にかけてるってことじゃないか。

気にかけられてるとか思われたらたまったもんじゃない。

相手が勘違いをしないうちに話を変えようと思い、葉月が喋り出す前に先に声を出した。


「用事はそれで終わり?終わりなら、早く出てってくれる?」

部室に関係のない人が居る時点でおかしい。

部員仲間ならまだしも、こいつは部員じゃなく、ただの女だ。

早く出て行かせなければ、変な噂が広まってしまう。


「新聞に書いてくれるって言ってくれるまで帰らない!」

迷惑な奴だ。

「あのな、そもそも人を新聞に出すことはできないんだよ。人を出す時は先生の許可がいるんだ。著作権や人権のこともあるしね。」

「じゃあ私が先生に許可をとる!新聞部の顧問に聞けばいいんでしょ?新聞部の顧問は誰?」

「新聞部に顧問はいないね。」

「えっ!?いないの!!じゃあ誰に聞けばいいの?」


なぜ聞く前提なのか、理解ができない。

そして、なぜここまで新聞に出してほしいのか。こいつは俺に何を企んでいるんだ?

「なんで聞く前提なのさ。とにかく、新聞に出すことはできない。これで納得してくれたかな?」

「はぁ…」

明らかに聞こえるような音でため息をついた。

「じゃあ、わかった。けど、まだ諦めてないからね」

「わかったよ。で、用事がないなら早く出て行ってくれる?」


作業をしながら、そう葉月に伝えると、葉月はウィンクをした状態で胸の前で手を合わせ〃お願いポーズ〃をしている。

「お願い!もう少し、ここに居させてほしいな!」

〃お願いポーズ〃の葉月は、まるで空を飛んでいる妖精のようだった。


「まぁ、少しだけ…なら。迷惑はかけないでくれよ……あれ…」

作業をしていると、いつも新聞を作る為に使うツールがなかった。

いつもここに置いてあるのに、なぜかなくなっている。

すると、不思議そうに葉月が聞いてきた。

「どうしたの?何かあった?」

「新聞を作る時に使うツールがないんだ。あれがなかったら新聞が作れないのに…」

「ツール…?そう、なんだ…」

葉月の反応がおかしく感じた。


「まさか、盗った?」

人を疑うのはよくないだろうけど…反応がおかしかったんだ。それは聞きたくもなる。


「と、盗ったって…へ!?盗る訳ないじゃん!」

「だよね。ごめん。」

しばらくの間、沈黙が流れた。

葉月はこの部室に始めて来たんだ。

よくよく考えてみれば、盗る時間なんてないよな。人を疑うなんて…自分は最低だ…。

そう思い込んでいると、葉月が口を開いた。

「じゃあ!ツール、出してあげる!待ってて、すぐ出すから!」

くるっと華麗にバレリーナのように回転をし、後ろを向いた。

後ろを向いてる葉月が何をしたのかはわからなかったが、一瞬ですぐにこちらを向いた。


「はい!ツールだよ!これで新聞、作れるね!」

葉月の手には僕がいつも使うツールが握ってあった。

「あ、ありがとう…けど…どうやって出して…」

「…えっとね、なんか、願ったら出てきた!」

満面の笑みで子供のように笑う、そんな葉月は本当の幼児のように思えた。

「願ったら出てきたって、そんな訳ないだろ。願って出てくるなら誰もが願ってるわ。」

「いや!私は特別な人だったのかも!」

「頭、大丈夫?病院に行かなくて良い?」

真顔で答えてやると、葉月はじたばた足踏みをして、怒り出した。

怒った顔も、子供っぽくて可愛かった。

「そんな顔で言わないでよ…!酷いなぁ…」

「本当は盗って、魔法みたいにしたかったんでしょ?」

「盗ってないって!さっきも言ったじゃん!」


本人がここまで言っているのだから本当のことなのだろう。

でも、じゃあどうやって?

ツールが新しい物なのかと疑ったが、ツールには『新聞部専用』と書いてある。

それに、ツールを隠せるような鞄も何もない。

なら、本当に願ったら出てきたのか?

そんなアニメみたいなことが存在するのか?

有り得ない話だ…。


そう考えていると、葉月が言葉を発した。

「私、そろそろ時間だから帰るね。また明日!」

無邪気な笑顔の裏に、寂しい顔が隠れている気がした。


「うん、また明日。」


同じクラスになって喋ったことは今回が初めてだと言うのに、明るく偽りのないような子だと感じた。


永遠に輝く方法を僕たちだけが知っている

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雰囲気Daisuke……………… 語彙力えげつねぇ……!!! backnumberの「オールドファッション」がすっごい似合いそうね!!好き!!!大好き!!! 実は私も今新連載作っておるのだよフハハハハハ なんか負けてらんないなって思った!!作ってくる!!! 続きを全裸待機(っ ॑꒳ ॑c)

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