「近所でお祭りをやるらしい」
そんな噂を聞き付け、会場に足を運んだ
人混みは苦手だが、花火は好きである
そして、家から見えないから仕方なくここまで来たのだ
……本当なら、来たくなかった
なぜなら、そこには思い出があったから
……いや、思い出があったからこそ
今日、ここに来たのかもしれない
……忘れられない、君との思い出を
塗り替えるために
見渡す限り、人、人、人
嫌になりそうだ
やっぱり来なければ良かった
そう思いつつ、ふと
人が少ない場所を見つけた
ラッキー、と思いつつ近づいて
空気が変わった瞬間、人がいない理由が分かった
中毒性のある、燃えてる匂いがした
まぁ、私はどちらかと言うと好きな方の人間だから
隣におじゃまさせてもらおうかな
そう思って、顔を上げて
……息を、殺した
何年振りだろう
中毒性のある、燃える匂い
その発生源に居たのは
私のお祭りの思い出である、彼だった
そして、その彼に
枯れたアネモネが、咲いた感覚がした
赤いアネモネが、囁き続ける
君との思い出を無くすために
ここまで、来たのに
私はまた、赤いアネモネの恋をした
……それは、初恋の人だった
コメント
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人混みの中、君との思い出を塗り替えるために訪れたお祭りなのに彼…君に会ってしまって思い出を塗り替えるどころかまた恋をしてしまうなんて、「私」は君のことが心の底から好きだったんだな、って思った💭 赤いアネモネの花言葉を調べてみたら基本恋愛系が多いけど、『アフロディーテの涙とアドニスの血から咲いた花とされ、「はかない恋」といった悲しい花言葉がある』って書いてあって、「私」の美しくも儚い恋に