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陽一

なぁ、12日って空いてる?

空いてると思うけど…何?

陽一

肝試し行かね?

颯太

マジ!?行く行く!

は?肝試し…?

陽一

そ、肝試し

陽一

俺、その日から親の実家に帰らないといけないんだけどさ

陽一

実はその場所、やべぇ言い伝えがあんのよ…

颯太

『やべぇ言い伝え』って?

陽一

それは、着いてからのお楽しみな

陽一

ってことで、俺と一緒に帰省する人ー!

一緒にって…

颯太

はーい!俺も陽一の親の実家に帰省しまーす!

決めるの早っ!

つーか非常識だろ、それ!

陽一

気にすんなって

陽一

俺のばあちゃん優しいし!

そういう問題じゃねぇよ

颯太

まあまあ、そこはお言葉に甘えようぜ?

颯太

だって蒼、どうせ暇なんだろ?

ま、まぁ…うん

俺たちは今、夏休み真っ只中だ。

高校2年生の夏休みなんて、人生で最も楽しい時期では無かろうか。

しかし、俺──葉風 蒼は、とある事情により夏休みの予定を全て失ってしまったのだ。

無論、暇を持て余す訳で。 そんな中舞い込んだ陽一の話は、渇いた俺の心を擽るには十分すぎた。

陽一

あ、でも待てよ

陽一

折角だし泊まって行ってほしいから

陽一

12日が空いてるだけじゃ駄目だ

陽一

その日以降も空いてないと…

颯太

あー、マジか

颯太

俺、お盆に親戚の集まりがあるんだよな

陽一

分かった

陽一

じゃあ、颯太は14日までな

陽一

蒼は?

俺は何も無い

ずーーーーっと暇

陽一

じゃあ、良いだろ?

…いいよ

陽一

よっしゃあ!

颯太

やったー!

陽一

じゃあ、12日の朝に俺の家に集合な!

何時?

陽一

6時!

颯太

早いな!了解!

了解〜

そうして俺たち3人は、陽一の祖母の家にお邪魔することになった。

しかし、男3人が突然泊まりに来るなんて、お祖母さんにとっては何かと不都合も多いだろう。 実際、迷惑極まりない。

だから、お祖母さんが少しでも嫌そうな素振りを見せたら、スッパリ諦めようということになった。

なったのだが…

颯太

いやぁ〜お祖母さん最高だな!

陽一

だろ?自慢のばあちゃんなんだ

おおらかなんだな…

陽一のお祖母さんなだけあって、かなり軽く了承してくれた。

でも、本当に良いのか?酔ったノリでOKしたとかじゃないよな?

陽一

おう、ばあちゃんは酒飲まないから大丈夫だ

颯太

へーそうなんだ!俺の家は全員酒豪だわ

陽一

あー何となく分かる…

それで、電車は何時だっけ?

陽一

…あ

陽一

6時半からだ…!

えっ!?

颯太

いや、大丈夫だろ
次のやつに乗れば良くね?

陽一

それが、駄目なんだよ…

陽一

ばあちゃんの村まで行くやつ、それしか無いから…

颯太

えぇ!?マジで!?めちゃくちゃ田舎じゃん!

と、とにかく急ぐぞ!

そんなこんなで、俺たちは駅まで全力疾走する羽目になった。

颯太

つ…疲れた…

陽一

ごめん…俺のせいで…

いや、俺も確認してなかったし…ごめんな

颯太

俺もごめん…

陽一

でもまあ、とりあえず間に合って良かったな

そうだな

颯太

…あ!電車来た!

えっと、これに乗るんだよな?

陽一

おう

陽一

時間無いし、切符は向こうで買おうぜ

颯太

分かった!

ああ

その電車は一両編成で、乗客も俺たちだけだった。乗り込む時になんとなく緊張した。

駅員さんが物珍しそうに俺たちを見てから、「青田村?」と訊いてきた。きっと、お祖母さんの村のことだろう。 俺は「そうです」と答えた。

陽一と颯太が、手を差し出してくる。荷物を寄越せという意味だろう。俺は礼を言いながら、トランクケースを渡し焦茶色の長椅子に座った。

何となく窓を開けると、早朝の澄んだ風がブワッと吹き込んで来た。

少し頭を出して外を見る。一瞬、自分の家が見えたが、すぐマンションの陰に隠れた。それを見ると、何故だか無性に泣きたくなってしまい、慌てて座り直した。

鬱憤が溜まって情緒が変になっているのだろうか。高2にもなって、みっともない。

まだ青い街並みが、規則的な揺れと共に遠のいて行った。

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