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これは
まだ夜桜桃香と出会う前
まだ、ただ純粋な
岩永家当主とその次男としての
物語である
沙樹
……兄様？
未門
捨てておけ
沙樹
まだ何も言ってませんし、捨てませんよ？
未門
どうせいつものやつだろ？
沙樹
えぇ、そうですよ
沙樹
相変わらず無頓着にも程がありますね
沙樹
それほど嫌ですか？
沙樹
ご結婚は
未門
…………嫌、では無い
未門
それは岩永家当主としての責務だと思う
沙樹
なら何故こんなになっているんですか
未門
……なんとなく、嫌な感じがする
沙樹
……嫌な感じ、ですか？
沙樹
全員素敵なで役に立ちそうなご令嬢だと思いますが…
未門
……多分、人の問題では無い
未門
多分、結婚という概念そのもの……だと思う
沙樹
それなのに、結婚は使命だと思っていると？
沙樹
とんでもない矛盾人間ですね兄様は
未門
お前の言葉は相変わらず鋭いな沙樹
沙樹
お褒めに預かり光栄です
未門
というか、そんなんだから婚約者の1人も出来ないんだろ
沙樹
いや？そんな訳無いでしょう
沙樹
岩永家当主が婚約者も居ないのに
沙樹
次男の方を狙う人間が居ないだけですよ
沙樹
当主の方が色々と美味しいですから
未門
お前……本当に鋭いな
沙樹
今更ですか？
未門
……本当に今更だな
未門
とりあえず、それも捨てといてくれ
未門
今はそれよりも夜桜の行方の…
お話、聞かせていただきましたわ！！
未門
えっ誰…
沙樹
兄様、あなたが捨てようとした婚約者候補の方です
未門
言い方…
お初にお目にかかります
私…
未門
……何故、勝手に家に？
…え？
未門
ここは、岩永家当主の部屋だが
未門
客室なら向こうです
未門
ご退室いただけますか？
え、私…
婚約を…
未門
いつ誰が受理したと？
未門
将来結婚する気はありません
未門
もちろん、心を奪われる御相手が居れば話は別ですが
未門
貴女はそうじゃないようだ
え、だって私…
岩永家に嫁ぐって…
未門
誰がそんなことを？
未門
貴女の家族ですか？
未門
なら家族にお伝えを
未門
婚約の話は無かったことに
未門
勝手に部屋に入ってきて
未門
婚約の話をされるなど
未門
あなた方の娘のおかげで
未門
とても不愉快な思いをした、と
未門
お伝えください
未門
お引取りを
……いや
未門
え？
嫌よ！私は名高い貴族の…
未門
岩永より上がいると？
あっ…
そ、それは…
未門
そうやって、権力に全て任せてきたのだろうな
思わず刀を抜いて、酷く冷たい目で見下ろす
未門
……1番、嫌いなタイプだ
沙樹
兄様、刀はダメです
沙樹
こっちが訴えられます
未門
……はぁ
未門
沙樹、追い出せ
沙樹
はい、かしこまりました
ちょ、なにするのよ！
沙樹
家までお送りしますよ
沙樹
あと、この話は無かったことに
沙樹
当の本人のやる気を削いだのは、そちらですから
未門
……はぁ
未門
本当に、心底ありえない
未門
…………結婚なんて、するものか
未門
それこそ、本当に心を奪われる相手じゃない限り
未門
……はぁ、そんな人間、居ないだろうな…
オマケ
～数年後～
夜桜家接触後、沙樹の記憶が戻った後
沙樹
……
沙樹
(そういえば、未門は本当に結婚しなかったな)
沙樹
(あの後も沢山お見合い来たのに全部断って)
沙樹
(全く、断る人の気持ちにもなって欲しいよ本当に)
沙樹
(……でも、結婚しなくて良かったな)
沙樹
(こんなこと思うのもだけど)
沙樹
未門が桃香以外と結婚する所を見なくて良かった…
沙樹
桃香がこれ以上苦しくならなくて…良かった
沙樹
きっと桃香なら、未門の幸せの為に自分の気持ちなんて殺せるから
沙樹
……本当に、良かった
沙樹
……なんて、最後に思うんだ
沙樹
…………ごめんね、桃香
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