茜さすあの丘で【大正浪漫】~幼き日の憧れは、時を経て真の慈しみへと変わる~
【埼玉県西部。森と水に囲まれた自然豊かな町にある、夕日の美しい棚田の丘で、二人は出逢った】
村上国雄(34歳)は、巨大なセメント工場を有する村上セメント(株)の御曹司。アメリカに留学経験を持つ国雄は、持って生まれたセンスと大胆な戦略で、若くして実業家としての頭角を現し、地元だけでは飽き足らず東京へも進出してさまざまな事業を手掛けていた。
一方、大瀬崎柴野(20歳)は、町で一番大きい製糸工場を営む大瀬崎蚕糸(株)の一人娘だった。しかし、彼女は14歳の時に両親を事故で失ってしまう。その後、柴野は伯父夫婦の元で暮らすが、辛い日々を過ごしていた。
悲しいことがあると、柴野は棚田の丘へと足を運び、幼き日に出逢った憧れの人に想いを馳せるのだった。