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アイビーとガラスのピアノ

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アイビーとガラスのピアノ

8 - アイビーとガラスのピアノ 8話

♥

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2022年12月12日

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《宿泊先でも僕は清士郎と……》

数ヶ月にも及ぶ全国ツアーを無事に終え、伊苅家でささやかな打ち上げが行われた

幸せそうな家族──

清士郎のことを思うなら身を引くべきなんだろう

清士郎

『…………』

顔が赤い

明らかに飲み過ぎだ

マヌエル

『まったく』

無事に寝室まで行けるのかどうかも怪しい

僕は見かねて肩を貸し寝室へ向かった

寝室

ベッドの上に清士郎を寝かせる

マヌエル

『そろそろ僕帰るよ』

マヌエル

『ゆっくり休んで』

寝室から出ようとした瞬間、腕を掴まれた

マヌエル

『離せ。酔っ払い』

清士郎

『…………』

もし彼女──美紀さんが入ってきたら気まずくなるだろ

清士郎

清士郎

『俺にはあんたしかいない』

マヌエル

『……寝言は寝て言え』

それだけ口にするのがせいいっぱいだった

《正直言って彼女が羨ましかった。 清士郎の伴侶になれて、清士郎の子供を産んで どうして僕は…………》

4月

冴夏ちゃんが中学生になり、妹の萌映ちゃんは小学4年生になった

マヌエル

『(子供の成長って早い)』

中学の入学祝いになんかプレゼントでもしようかな?

そんなことを思っていると

〜〜♪ 〜〜♪

携帯の着信音が鳴る

清士郎からだった

『どこにいる?』

家にいるよと答える

『今からそっちに向かう』と言って通話を切った

マヌエル

『…………?』

数十分後、清士郎がやってきた

清士郎

『あんた、鍵を落とさなかったか?』

マヌエル

『鍵?』

マヌエル

『ショルダーバッグのポケットに入ってたと思うけど』

一応、確認してみる

マヌエル

やっぱり入ってた

清士郎にそう伝えると──

清士郎

『そうか』

マヌエル

『なんかあったの?』

冴夏ちゃんがチンアナゴのキーホルダー付きの鍵を拾ってしまったのだという

清士郎

『ドアを開けた瞬間、肝を冷やした』

僕が前に清士郎にあげた“合鍵”──

清士郎

『娘はその“合鍵”をマヌエルが落としたと思い込んでいたから、そうさせてもらった』

マヌエル

『よくバレなかったね』

この2日間、清士郎の家には行っていない

まさか合鍵を落とすなんて

もし関係が明るみになれば

マヌエルと会えなくなる

そんなのは嫌だ

やっと再会したのに──

また別れるなんて二度と御免だ

清士郎の顔色が悪い

マヌエル

『清士郎、気分が悪いなら……』

ぎゅっ

マヌエル

清士郎

『ずっと、俺のそばにいてくれるだろう?』

マヌエル

『…………』

すぐには答えられなかった

──数ヶ月後

音楽番組、ラジオ、その他の打ち合わせなど清士郎のマネージャーとして忙しなく働いていた

今日は僕の家で仕事の打ち合わせをしている

マヌエル

『(ついこの間までは暑かったのに)』

暑さは鳴りを潜め、涼しくなった

マヌエル

『(……あっという間に秋だな)』

清士郎

『マヌエル』

ぎゅっと抱きよせる

清士郎

『聞きたい曲はあるか?』

マヌエル

『聞きたい曲?』

清士郎

『何が聞きたい?』

マヌエル

『うーん』

マヌエル

『ありすぎて決められない』

マヌエル

『清士郎が弾くピアノはどれも好きだから』

清士郎

『……あんたはずるいな』

マヌエル

『ずるいって何が?』

清士郎

『そういうところだぞ』

マヌエル

『…………?』

清士郎はショパンの“夜想曲(ノクターン)第2番”を弾いた

〜〜♪ 〜〜♪

心地よい音色が耳に入ってくる

付き合ってたあの頃に戻ったような感覚になった

引き終わってから数分後──

ピンポーン

呼び鈴が鳴る

清士郎

『…………』

僕は玄関先へ向かいドアを開けた

マヌエル

はーい

冴夏

こんにちは

マヌエル

マヌエル

あ、いらっしゃい

冴夏

親戚からリンゴが届いたから、おすそ分け

リンゴの入ったビニール袋を手渡される

マヌエル

ありがとう

マズい……

清士郎の黒い革靴がそのままにしてあったのを忘れてた

申し訳ないけど、このまま彼女を追い返そう

マヌエル

お茶でもどうっていいたいところだけど

マヌエル

──お客さんが来ててね

咄嗟にごまかす

冴夏

ううん、大丈夫。気を使わないでよ

冴夏

おすそ分けに来ただけだから

二言三言話すと冴夏ちゃんは帰っていった

マヌエル

罪悪感

あの子から父親を奪うつもりなのか?

清士郎が呼びに来るまで僕はその場に佇んでいた

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