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アイビーとガラスのピアノ

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アイビーとガラスのピアノ

2 - アイビーとガラスのピアノ 2話

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2022年11月05日

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マヌエル

久しぶり。元気だった?

2、3ヶ月ぶりに“彼“はわが家にやってきた

萌映

マヌエルだぁ

妹は“彼“に抱きつく

萌映

萌映

なんで来なかったの?

マヌエル

ゴメンね

マヌエル

最近仕事が忙しくて──

萌映

マヌエルが来なくてつまんなかった

冴夏

冴夏

お仕事ならしょうがないでしょ

萌映

むー

マヌエル

仕事が落ち着いたら相手してあげるからね

萌映

約束だよ

美紀

美紀

いらっしゃい

マヌエル

お邪魔します

美紀

あの人は今自分の部屋にいるわ

マヌエル

ちゃんと準備が終わってるといいけど──

明後日から父のピアノリサイタルの全国ツアーが始まる

美紀

いつもギリギリなのよね

母は苦笑する

マヌエル

とうに慣れました

そして父の部屋へと向かった

当日。バタつきながら父と“彼“は出発した

数ヶ月後、無事に全国ツアーを終え

父と“彼“への労いのため、ささやかな打ち上げをした

冴夏

お父さんのピアノ、どうだった?

マヌエル

よかったよ。会場のお客さんも感動してたし

マヌエル

ね?

清士郎

──ああ

冴夏

(顔が赤い)

確実に寝落ちそう

マヌエル

ツアー先でもけっこう飲んでたもんね

美紀

やっぱりね

美紀

この人お酒好きだから

マヌエル

飲みすぎて千鳥足になってたよな

マヌエル

なんでピアノ演奏以外になると、ぽんこつになるんだか

この場にいる父以外の全員が同意した

月日は少し流れ、わたしは4月から中学生になった

そんなある日、父の部屋のドアの前にキーホルダーがついた鍵が落ちていた

冴夏

…………?

チンアナゴのキーホルダー

冴夏

(このキーホルダー、どこかで見たような……?)

冴夏

冴夏

そういえば

“彼“がチンアナゴのキーホルダーをつけていたのを思い出す

仕事の打ち合わせでよくわが家に来るのでなんの不思議もない

カチャ

そのときドアが開き、父が顔を出す

清士郎

清士郎

その鍵…………

ほんの一瞬、目を丸くしたような気がした

その後鍵はやっぱり“彼“のものだと判明する

清士郎

俺が届けに行く

父は“彼“に連絡し家を出た

冴夏

(変装しなくて大丈夫なの?)

冴夏

仮にも有名人なんだから──

何事もありませんように、とだけ祈っておく

秋分の日

親戚からリンゴが送られてきた

おすそ分けのためリンゴを届けに行く

“彼“にとってひさびさのオフだ

冴夏

ん?

家の前でひとりのおばあさんがたたずんでいる

なんとなく気品があった

冴夏

(何してるんだろう?)

思いきって声をかけた

冴夏

あの──すみません

おばあさんはハッとしたように振り返る

老女

あら、ごめんなさいね

老女

老女

あなた、このお家の子かしら?

冴夏

いえ、わたしは──

首を横に振り、知り合いの家だと告げた

冴夏

親戚からリンゴが届いたので、おすそ分けに……

冴夏

ところで家の前で何を?

老女

老女

ピアノの音に耳をすませてたの

冴夏

ピアノの音?

老女

たまたま通りかかったとき、微かに聞こえてね

老女

とっても素敵な音色で、思わず立ち止まって聞き入ってしまったの

おばあさんはふふっと照れ隠しに笑った

一瞬ピアノを弾いているのは“彼“かと思ったが、違うと思いなおす

冴夏

(──前に“ピアノからっきり“だって言ってたし)

ピンポーン

呼び鈴を押すと、しばらくしてドアが開いた

マヌエル

はーい

冴夏

こんにちは

マヌエル

あ、いらっしゃい

冴夏

親戚からリンゴが届いたから、おすそ分け

リンゴの入ったビニール袋を手渡す

マヌエル

ありがとう

玄関に黒い革靴が視界に入った

わたしの視線に気付いたのか、“彼“は申し訳なさそうな顔をする

マヌエル

お茶でもどうっていいたいところだけど

マヌエル

──お客さんが来ててね

冴夏

ううん、大丈夫。気を使わないでよ

冴夏

おすそ分けに来ただけだから

二言三言話すとわたしは“彼“の家を出た

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