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教室・3限目。
静かなチャイムのあと。
遥
日下部
日下部
遥
遥の机は、教室の片端。
黒板のすぐ下でもなく、“全員の死角になる場所”に押しやられている。
教師
ページをめくる音が一斉に響く。
けれど、遥の机には教科書がない。
遥
自分の引き出しを開けるが、
教科書もノートも“また”なくなっている。
日下部
遥
日下部
遥
周囲の視線が刺す。
遥が“何も持っていない”のを確認するような目――いや、“そういう位置にいること”が当たり前のような冷たい目。
教師
遥
教師
そこで一拍
誰も目を合わせない。
誰も“隣”に教科書を寄せるそぶりをしない。
教師
日下部
遥
黒板の文字を写そうとして、
ようやく気づく。
遥
筆箱もない。
(知ってた。知ってたけど……。何度目でも、胃の奥が冷たくなる)
“置かれた指示”のために机を荒らされたまま戻ってきている。
周囲は授業に集中しているフリをしながら、ときどき遥のほうに視線をさす。
“あいつは今日もそれ”
“当然そこにいるもの”
そんな空気だけが流れている。
教師
遥
教科書がない。ページもわからない。
遥
教室の空気が、一度だけざわつく。
教師
しかし、誰も言わない
――“言わないことが正解”のように。
遥
日下部
遥
遥は黒板だけを見て、何も書けないまま授業がゆっくりと進む。
(50分ってこんなに長かったっけ……息する音まで、誰かに見られてる気がする)
チャイム。
教師
全員が動き出す中、遥の机の周りだけ不自然な“空白”ができている。
日下部
遥
日下部
遥
日下部
遥
遥は立ち上がるが、椅子の脚がわずかに揺れて“誰かに触られた”形跡がある。
遥
日下部
遥
遥は歩き出す。
その背中は静かで、“諦めに近い冷たさ”がにじんでいる。