ユリエ
やば!もうこんな時間!?
ユリエ
早く朝ご飯の支度しなきゃ!
ユリエの母親
ちょっとあんた、今起きてきたところなの?
ユリエの母親
朝ご飯の準備はまだなの?
ユリエ
ご、ごめんなさい、昨日の夜遅くまで勉強してたから起きられなくて…
ユリエの父親
言い訳してんじゃねぇよ!
怒鳴った瞬間、父親はユリエの頬を殴っていた
ユリエ
痛っ…!
ユリエの父親
さっさと朝飯作れ!
ユリエ
は、はい!
ユリエ
(今日は朝から災難だったなぁ)
ユリエ
(まさか寝坊するとは思わなかったんだもん…)
ドンッ!
ユリエ
キャア!
ケイスケ
どけろ、邪魔だ
ユリエ
ご、ごめんなさい…!
ユリエ
(自分がぶつかってきたのに!)
ユリエ
(でもなにも言えないよ…)
ユリエ
(ケイスケはボクシングをしてるだけあって、威圧感がすごいもん…)
タダヒロ
よぉユリエ!
ユリエ
(うわっ、タダヒロだ…)
ユリエ
(タダヒロはクラストップのケイスケと一緒になって、クラスを支配してる)
ユリエ
(できれば関わり合いたくない相手だ)
ユリエ
お、おはようタダヒロ…
タダヒロ
なぁ、お前そろそろ俺と付き合えよ
タダヒロ
そうすればシズネからのイジメを止めてやるぞ?
ユリエ
(シズネもクラストップの1人で、私にいつも嫌味を言ってくる)
ユリエ
(でも、タダヒロのねっとりとした視線の方が、もっとずっと気持ち悪い!)
タダヒロ
それとも、これから先もずっとイジメられていいのか?
ユリエ
シズネからイジメられてるのは、私だけじゃないし…!
タダヒロ
ミユのことか?
タダヒロ
それならミユも一緒に俺の女になれよ
タダヒロ
俺なら、お前ら2人を同時に救うことができるんだぞ?
タダヒロはそう言うとユリエの太ももを撫でた
ユリエ
やめてよ!!
ユリエ
(シズネからのイジメは確かに嫌)
ユリエ
(だけど、タダヒロの彼女になったら、きっともっとひどい目に遭う!)
ユリエ
私のことなんて好きでもないくせに!
タダヒロ
当たり前だろ?
タダヒロ
お前、自分が誰かに好かれるキャラだと思ってんのかよ
タダヒロ
可哀想なお前に手を差し伸べてやってんのに、なんだよその態度は!
タダヒロ
今ここで無理矢理襲ってやろうか!?
ユリエ
い、嫌!!
シズネ
あれれ~、タダヒロなに楽しいことしちゃってんの~?
シズネ
アタシも混ぜてよ~!
タダヒロ
おぉ…。ちょうどストレス発散しようと思ってたところなんだ
シズネ
あははっ、そうなんだ~?
シズネ
てっきり、クラス最下位のユリエを自分の彼女にしようとしてるのかと思った~
タダヒロ
そ、そんなワケねぇだろ!
シズネ
どうかなぁ?タダヒロは女なら誰でもいいんでしょ~?
タダヒロ
俺だって女くらい選ぶ!
タダヒロ
ユリエやミユなんて論外だ
シズネ
へぇ~え?
シズネ
じゃあ、今ここでユリエの顔面殴りつけてよ
ユリエ
!!
シズネ
この女の顔がどれだけグチャグチャになっても
シズネ
タダヒロには関係ないもんねぇ~?
タダヒロ
…あぁ、もちろんだ
ユリエ
嫌!やめて…!!
保健室
ミユ
ユリエ、いるの?
ユリエ
ミユ…?
ミユ
うん。クラスの子に聞いたよ。ひどく殴られたんだって?
ユリエ
うん…
ミユ
カーテン開けるよ?
ミユ
…うわ、ひどい。目元が真っ青じゃない!
ユリエ
ミユだって、頬に青あざができてるじゃん!
ユリエ
タダヒロにやられたの!?
ミユ
うん…。ユリエのことを聞いたら、いきなり殴られた
ミユ
タダヒロは普段は暴力なんて振るわないのにね
ユリエ
そうだよね
ユリエ
シズネが一緒にいるときだけだよ
ユリエ
きっと、タダヒロは自分の威厳の為に、シズネの前では暴力を振るうんだよ
ミユ
ユリエは、家では大丈夫なの?
ミユ
前に、両親から愛されてないって言ってたけど
ユリエ
家でも同じような感じだよ
ユリエ
今朝も、寝坊して朝ご飯を作る時間が遅くなったからって、殴られた
ミユ
ひどいね…
ユリエ
家でも学校でも居場所がなくて、もうどうすればいいか…
ミユ
でも、私はユリエの味方だからね!?
ミユ
私なんかじゃ頼りないかもしれないけど
ミユ
話を聞くくらいならできるんだから!
ユリエ
ミユ…
ミユ
…なんて、同じイジメられっ子の私にこんなこと言われても、嬉しくないよね
ユリエ
そんなことない!
ユリエ
私、どんなことでもミユに相談する!
ユリエ
だからミユも、なにかあったら私に相談してね!
ユリエ
やっと勉強が終って眠れる
ユリエ
毎日学校から帰ったら全部の家事をしてるから、どうしても寝る時間が遅くなるんだよね…
ユリエ
だけど明日はちゃんと起きなきゃ
ユリエ
もう、朝から殴られるなんて嫌だもん!
夢の中
男
ユリエ、こっちへおいで
ユリエ
ん?誰の声だろう?
男
こっちこっち
男
毎日頑張ってて、ユリエは偉いね
ユリエ
とっても優しい声。ずっと聞いていたくなる…
男
ほら、ここだよ
ユリエ
え?あなたは誰?
男
僕は君を助けに来たんだ
ユリエ
助けに?
男
そうだよ
男
家ではいつも両親の命令に従って、学校ではイジメられて
男
そんなユリエが少しでも生きやすくなるように
男
これをあげようと思ってね
ユリエ
なにこれ?なにかの機械?
男
これは欲望チェッカーという名前の機械だよ
男
この機械の先端に、欲望をのぞき見したい相手の体毛か体液を置くんだ
男
そうすると、この機械が相手の欲望を読み取って、音声案内してくれるようになってる
ユリエ
欲望チェッカー…
男
そうだよ
男
欲望を読み取った後に、この赤いボタンを押せば音声が再生されるからね
ユリエ
これを使って、私はなにをすればいいの?
男
相手の欲望を先読みするんだよ
男
相手のして欲しいことが先に分かれば、もう殴られることはなくなるだろう?
ユリエ
そっか!
ユリエ
命令ばかりしてくる両親には効果があるかも!
男
そうだろう?
男
もう1つ、これには面白い機能がついてるんだよ
ユリエ
面白い機能?
男
あぁ。音声案内する時には、欲望を抱いている本人の声が、その機械から出るようになってるんだ
ユリエ
本当に!?それってすごく不思議!
男
だろう?
男
そういう機能も、きっと使い方次第で楽しくなるよ
ユリエ
そうなんだ!これ、私がもらっていいの?
男
もちろんだよ!そのために来たんだからね
ユリエ
ありがとう!
男
どういたしまして!
男
さぁ、もう目を覚ます時間だよ──
ピピピピッピピピピッピピピピッ
ユリエ
んん…目覚ましが鳴ってる
ユリエ
早く起きて朝ご飯を作らなきゃ
ユリエ
でも、なんだか変な夢だったなぁ
ユリエ
知らない男の人が出てきて、変な道具を渡されたんだっけ
ユリエ
確か、欲望チェッカーとか言ってたような…
ベッドから起きた瞬間
テーブルの上に夢で見た欲望チェッカーが置かれていることに気が付いた
ユリエ
え!?
ユリエ
これって夢で見たのと同じ機械!?
ユリエ
…まさか、そんなことあるわけないよね
相手のして欲しいことが先に分かれば、もう殴られることはなくなるだろう?
ユリエ
夢の中で男が言っていたことが本当なら
ユリエ
この機械を使えば私はもう殴られることがないんだ…!
ユリエ
(夢の出来事を全部信用したわけじゃないけど)
ユリエ
(少し使ってみるくらい、いいよね…?)
ユリエはキッチンに落ちていた髪の毛を拾った
ユリエ
(これはお母さんの髪の毛)
ユリエ
(これをチェッカーの上に置いて、赤いボタンを押せば…)
欲望チェッカー
あ~あ!一歩も動かずに部屋中が綺麗になればいいのに!
ユリエ
(え!?今、この機械からお母さんの声がした!)
ユリエ
まさか、本物だなんてことないよね…?
ユリエ
(でも、先に掃除しておいたら怒られなくて済むかもしれない!)
1時間後
ユリエの父親
今日はちゃんと朝飯作って待ってたんだな
ユリエの父親
やればできるじゃないか
ユリエ
う、うん
ユリエの母親
おはよう~、あら?
ユリエの母親
リビングが綺麗になってる!
ユリエ
き、今日はちょっと早く起きたから
ユリエ
ついでに掃除しといたよ
ユリエの母親
本当に!?あんたもようやく気が付くようになったのね
ユリエの母親
このままず~っと役立たずだったらどうしようかと思ってたのよ!
ユリエの父親
本当だよなぁ
ユリエの父親
さ、朝ご飯にしようか
ユリエ
(やった…今日は殴られなかった!)
ユリエ
(欲望チェッカーって、きっと本物だったんだ!)