放課後。
教室に残る三人。
蓮司
なあ遥
遥
……なに……
蓮司
いじめ見てる側がさ
“つらかった”って言ってたら、
正直どう思う?
“つらかった”って言ってたら、
正直どう思う?
遥は即答しない。
少しだけ視線を逸らす。
遥
……正直……
分からない……
分からない……
日下部
怒る?
遥
……怒る……っていうか……
言葉を探す。
遥
……同じ場所に
立ってない……って
思う……
立ってない……って
思う……
蓮司
距離がある?
遥
……うん……
見てる人は……
帰れる……
見てる人は……
帰れる……
日下部
遥は?
遥
……帰れない……
蓮司
それ聞くと、
“つらかった”って言われるの
しんどいな
“つらかった”って言われるの
しんどいな
遥
……ちょっと……
日下部
“ちょっと”か
遥
……つらいのは……
分かる……
でも……
分かる……
でも……
蓮司
でも?
遥
……それ……
俺に言う?……って……
俺に言う?……って……
日下部
加害者でも被害者でもない人間が、
被害者に気持ちを預けに来る感じ
被害者に気持ちを預けに来る感じ
遥は小さく頷く。
遥
……助けてほしかった……
見てたなら……
止めてほしかった……
見てたなら……
止めてほしかった……
蓮司
見てた側が苦しむのは、
それ聞いたあとだよな
それ聞いたあとだよな
遥
……うん……
日下部
じゃあさ
遥
……?
日下部
見てる側が苦しんでること自体は、
どう思う?
どう思う?
遥は少し迷ってから答える。
遥
……悪いとは……
思わない……
思わない……
蓮司
お
遥
……何も感じないより……
まだ……まし……
まだ……まし……
日下部
でも?
遥
……それを……
被害者に……
向けないで……
被害者に……
向けないで……
蓮司
重いけど、正しいな
遥
……俺が欲しかったのは……
共感じゃなくて……
行動……
共感じゃなくて……
行動……
日下部
救いの言葉じゃなくて、
立つ位置
立つ位置
遥
……うん……
蓮司
遥から見て、
見てる側って何者なんだ?
見てる側って何者なんだ?
遥は少し考えて、静かに言う。
遥
……味方に……
なれた人……
なれた人……
日下部
なれた、か
遥
……ならなかった……
だけ……
だけ……
蓮司
責めてる?
遥
……責めてない……
でも……
忘れない……
でも……
忘れない……
日下部
それが一番リアルだな
遥
……だから……
“つらかった”って言われると……
困る……
“つらかった”って言われると……
困る……
蓮司
遥の席、ずっと空いてたのにな
遥
……うん……
日下部
遥がそう思うなら、
それが正解だ
それが正解だ
遥
……正解とか……
分からない……
分からない……
蓮司
でも本音だろ
遥は小さく頷いた。
遥
……本音……
日下部
今日はそこまででいい
遥
……うん……
この会話は、遥が誰かを許す話じゃない。
“被害者の位置から見える現実”を、そのまま置いただけ。






