短編

やらないといけないことを終わらせ

ぐ〜っと伸びをする

ここ最近、ずっと忙しかった

八大陸で桃香達の結末を見届け

調停者の提案で国に戻ってきていた

そしたら、ボクにしか出来ない仕事が溜まっていて早々に逃げたくなったのは昔の思い出だ

まぁ仮にもこの国の国王だし仕方がないか…

なんて自分に言い訳をして仕事に勤しんでいた

ちなみに、代理で国王をしていたアベリアも自分の仕事に戻った

…ちょっとだけ、スノードロップに怒られたけど……

まぁ、約束だし仕方がない

アベリアは律儀な天使なのだ

それにしても、最近頑張ったな…

日付なんて確認してないし、今日何日……

……あれ、今日……

……いやいや、そんな訳ない

そうだ、ウピルがカレンダーをめくり忘れたのだ

後で聞いておかなければ

7月7日ですよ

……聞きたく、無かった

そういい、ベランダからダイナミックに飛んだ

吸血鬼は、翼がなくても飛べるやつは飛べるぞ

そんなことを、何故か考えつつ

〜一方部屋の中は〜

そう言われ、目の前に書類が積まれる

ウピルの有無を言わせない雰囲気にそのまま流され

ため息混じりに、書類に目を通し始めるのであった

アベリアの所に着く頃には

もう既に夕方になっていた

なんて愚痴を零しつつ、窓からダイナミックに入場した

とにかく、疲れていた

ここ数日は働きっぱなしで

久しぶりに、非常に疲れていた

それに、仕方ないといえば仕方ないが

……誕生日くらい、ゆっくりさせてくれ

そんな思考が、脳を埋め尽くす

この思考が出来るのは、世界からの愛を受け取った

｢陰りの段位｣だけ

それ以外は

世界からの影響で誕生日を認識しない

全く、困った世の中だ

誰が来てくれないかなぁ…

そんなことを考えていたら

かちゃ、と窓の開く音が聞こえて

思わず殺意をむき出しにして睨みつけて

……後悔した

そんなことを言いながらこっちに来るシュガー

夢なら都合がよすぎるな

そんなことを考えた

さては、またなにか面白いことを考えてるな？

そう思って、わくわくしてたら

……お姫様抱っこされた

どういう状況？

それ僕がやるんじゃないの？

そう言って、僕を連れて飛ぶシュガー

……全く

恥ずかしいからって出た言い訳が、あれか

……もう少し、マシなのあっただろ

着く頃にはすっかり夜になっていて

少しの肌寒さに震えた

ウピルが用意したのは、随分と弱い酒だけだった

これからあいつも酔わないな…

そう思いつつ、グラスに注ぐ

そう言って早速1口飲むアベリア

酔い潰れなければもうなんでもいいや…

そんなことを思いつつ、ボクも1口飲む

自分でもらしくないと思う

……でも、眷属の誕生日はなるべく祝いたい

だから、無理やりつれてきた

……死んだって言ってやらないけど

人使い荒いんだよなあの人…

うーん、どうしよう

今あるのは弱い酒くらいだし…

……あ

ぐいっと手首を掴まれる

なにするつもりだこいつ…

……ははっ

いつの間にこんなからかう技を覚えたのか

逆に引っ張って、アベリアの手首を噛んでやる

アベリアの噛んだ手首を眺めて

一言、言ってやった

昔のボクなら、絶対に今みたいに返事した

目の前のアベリアは、びっくりして目を見開いていた