健也
(うわ、雨降ってるし…)
健也
(…そういえば、初めて会った時もこんな天気だったっけ)
彼女がうちの高校に来たのは、ちょうど一年前の今日だった――
美月
藤川美月です。よろしくお願いします
美月
えっと、健也くんだよね?これからよろしくね!
健也
う、うん。よろしく…
健也
(すげぇ肌が白い…目もぱっちりしてるし…)
健也
(まるで芸能人みたいだ…)
美月
ん?あたし、何か変なこと言った?
健也
え!?あ、いや、その…
健也
(ヤバッ!な、何か話さなきゃ…?)
健也
(そうだ!前の学校のこととか聞いてみよう!)
健也
あ、あの、美月さんって…
クラスメイト
ねえねえ!美月ちゃんって福井から来たんだよね?
クラスメイト
前の学校では部活とかやってたの?
美月
ちょ、ちょっと待って。健也くんが…
健也
いや、何でもない!気にしないで!
美月
そうなの…?
健也
(席も隣なんだし、また話す機会もあるよな…)
だけど俺は、それから彼女に話しかけることができなかった
彼女はすぐにクラスでも人気者となり、俺なんかが話しかけちゃいけない気がしたからだ
隣の席にいながら俺は、ただ彼女を眺めていることしかできなかった――
健也
(うわ…何もない駅だな…無人駅ってやつか?)
健也
(ひとまず、西山公園はあっちだよな…)
健也
(……この道も、美月さんは歩いてたのかな)
彼女がこの辺りに住んでいたことを知ったのも、これまた偶然だった
「二度あることは三度ある」と言うけれど
俺と彼女の偶然は、その二度目が最後となってしまった――
健也
(休日だってのに図書館ガラガラだな…)
健也
(まー俺も家のクーラーが壊れてなければ来なかったもんな)
健也
(あっ!落としちまったよ…ん?旅行の本か?)
健也
(…福井県。美月さんの出身地か)
健也
(へえ…けっこう景色いいんだな…)
健也
(こんな所、美月さんと一緒に歩けたら楽しいだろうな…)
美月
あれ?健也くん?
健也
うわっ!
美月
ご、ごめんね!驚かせちゃったね…
健也
み、美月さん!?どうしてここに!?
美月
え?学校の宿題をしようと思って…
美月
健也くんは?
健也
お、俺もそんな感じかな…
健也
(宿題なんて何一つ持ってきてないけど…)
美月
あ、その本!懐かしいなあ…西山公園だ…!
健也
西山公園?
美月
ほら、そのページに出てる公園!
美月
つつじがたくさん咲いててね、すごく綺麗なんだよ!
健也
そうなんだ…写真だけでも相当な迫力だけど、
健也
実際に見ると、もっと凄いんだろうな…
美月
それはもう!きっとビックリすると思うよ!
美月
つつじの旬は5月だから、もう過ぎちゃったんだけどね…
健也
それは残念だね…
美月
で、でも!まだまだいいところはあるよ!
美月
健也くん、もしかして夏休みに福井に行くの?
健也
えっ!?う、うん
健也
(そんな予定ないけど…)
美月
家族で行くの?
健也
ひ、一人で行こうかなーって…
美月
すごいね!健也くんって一人旅するんだ!知らなかったよ
健也
(なんか話がどんどん変な方向に…)
美月
いいなあ…ねえねえ、行く日が決まったら教えてね!
健也
(…ん?それってどういう意味だ?)
健也
(…行く日を教えたら…一緒に来てくれるとか?)
健也
(…言え。言うんだ。俺)
健也
(「よかったら一緒に行ってみない?」って!)
健也
あ、あの、美月さん…
美月
ん?なに?
健也
(言え!)
健也
その…連絡先、聞いてもいい?
美月
えっ?
健也
(な、何を言ってるんだよ、俺!)
健也
い、行く日が決まったら連絡しようと思って!
健也
ほら、夏休み始まったら、学校で会えないし!
健也
(うう…我ながら苦しい言い訳…)
美月
…うん。いいよ
健也
ほ、本当に?
美月
だって健也くん、クラスメイトだし!
健也
(そ、そっか。そうだよな…)
健也
それじゃ、QRコード出すね
美月
ありがと!今メッセージ送るね!