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「ゆびきりげんまん。」
あの時、彼とした約束。
守れそうに、ない。
ドッ、ドッ、、ド、
脈がなくなっていくのが わかる。
辛い、苦しい。
生きたい
生きたい、生きたい、
生きたい、
行きたい、
…逝きたい。
シンとした中、 1人で死んだ夏の病室。
目の前は真っ暗で、 何も見えないし感覚もない。
苦しかったのがだんだんと 消えていって、
病室のツンとした匂いも わからなくなって、
冷や汗が顔を伝う感覚も、 だんだんと失われていって、
「あ、やばい、死ぬ。」 なんとなくわかった。
とりあえず今の私にわかることは、
自分が幽霊だということだけだ。
気がつけば目の前で 顔色の悪く、硬直した 女が寝ていた。
直感的に、それが自分だと わかった。
この姿になってから、 前まであったはずの記憶にモヤが かかってしまった。
自分の名前も忘れてしまった。
生きていた頃の記憶も うっすらとしかなくなってしまった。
「本当に私は 生きていたのだろうか。」
そう思わせてしまうほどだった。
唯一確信できる記憶は 2つだけ。
私は若い美空で、 病気で亡くなってしまったこと。
それと、
"とある男"の記憶。
正直その男が 青年なのか、おじさんなのか、
家族なのか、友達なのか。
見た目だって覚えていない。
とても、優しい聲だった。
聞いているだけで 心が明るく、軽くなるような 優しい聲。
その男は、 まるで私たちの建前にではなく、 心に向かって話している ような話し方だった。
目を開けるのも辛かった 自分はその聲に助かって いたのだろう。
もし仮に自分がさっきまで本当に 生きていたとしても 死んでしまえば成仏するはずだ。
なぜ私は今起き上がっている?
幽霊なんてもの、本当に この世に存在するのか。
この状況的に、 幽霊はいるんだと 信じざるを得なかった。
扉へ向かう。
自分の足音はしなかった。
目の前に、こっちに向かって 汗か涙かもわからない、 顔をぐしゃぐしゃにした 青年が走ってくる。
青年
ひゅん、
すれ違った時だった。
青年
青年は振り向く。
青年
青年
その青年はどこかへ 走り去ってしまった。
どうせ話しかけても聞こえない から意味はないだろうと、私は 諦めその場を後にした。
外に出たのは久しぶりな 気がした。 なんか、新鮮だ。
そこはとても人で混み合っていた。
その時だった。
男性
こっちに歩いてくる 歩きスマホをした男性がいた。
別のことに夢中で 気がつけなかった。
歩きスマホをしている男性と ぶつかったと思った 自分の体はすり抜けた。
なぜか少し悲しくなった。
大切な人が死んだ。
呼吸が荒くなっていく。
抑えきれない涙で 彼女の顔は濁って歪んだ。
苦しそうな顔だ。
でも、どこか嬉しそうな 顔だった。
ところどころ 声が裏返る。
今の僕には ただただ泣くことしか できなかった。
体は軽く、だるくない。 少し外の世界を楽しみすぎた。
正直戻る必要はなかったが、 好奇心でもどってみる ことにした。
患者が ご飯を食べるスペースに、 1人の男性が座っていた。
誰もいない、薄暗く夕日の刺した 場所に1人ぽつんと。
青年
それはあの青年だった。
あたりはシンと静まり返っている。
青年
青年は顔をあげ キョロキョロとする。
私の声が…聞こえてる?
青年
~ッ!~~
耳鳴りにしては 音と音に間が空きすぎだ。
僕に向かって話しかけて いるようにも思えてしまう。
まさか彼女が……なんて、 そんなことあるわけない。
あり得ない。
青年
彼には雑音にしか 聞こえていないようだった。
「絶対気づいてもらお。」
青年
正直この青年に 執着する必要はない。
でも、この人が唯一の 希望なんだ。
私の聲に気がつける、 唯一の希望。
次の日。
青年
そのまた次の日。
青年
そのまたまた次の日。
この3日はずっと 叫んでいた気がする。
聲が枯れそうだ… 枯れないけど。
これでダメなら諦める。
ちょっと…いや、だいぶ 悔しいけど、そうするしかなかった。
これ以上は時間の無駄だから。
青年
私は大きく息を吸い込む。
~ッ!!
ッ、ッ~ッ!!!!
四六時中この 耳鳴りのようなものが聞こえている。
今日は前より音が大きく感じた。
僕はうつむいていた顔をあげた。
誰もいなかったはずの 一本道。
そこには1人の女の子がいた。