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アイビーとガラスのピアノ

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アイビーとガラスのピアノ

1 - アイビーとガラスのピアノ 1話

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2022年11月05日

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父が交通事故に遭い亡くなった

そして同乗者していた“彼“も……

初めて“彼“と出会ったのはわたしが9歳で、妹の萌映(もえ)が5歳か6歳のときだった

マヌエル

初めまして、凉杜(すずもり)マヌエルです

人懐っこそうな笑みと清潔感のある身だしなみ

冴夏

(──きれいな人)

年齢不詳のハーフ。髪を腰まで伸ばしていたから最初は女の人だと思ってたけれど、父から男だと言われびっくりしたことを覚えている

マヌエル

冴夏(さえか)ちゃんと萌映ちゃん、よろしくね

“彼“は当時、父──ピアニスト伊苅清士朗(いかりせいしろう)──のマネージャーになったばかりだった

1年後

冴夏

お仕事たいへん?

マヌエル

大変だけどもう慣れたよ

“彼“とは家族ぐるみでなかよくなった

仕事上の関係で“彼“と父はいつも一緒にいる

マネージャー業は大変な仕事だと聞いて、ちゃんと休めているのかちょっと心配になる

マヌエル

合間に仮眠をしてるから大丈夫

休日でも父との仕事の打ち合わせなどで家にやってくる

母の信頼も厚く、時間さえあればわたしと萌映の遊び相手になってくれた

冴夏

家でのんびりしたいとか思わないの?

マヌエル

たまに思うことがあるよ

マヌエル

でもアイツがさぼらないように見張らないとね

マヌエル

仕事をしているのかなと思ったら、いつの間にか動画配信を見ていたなんてざらにあったし

冴夏

じゃあ、わたしも一緒にお父さんを見張る

マヌエル

マヌエル

ありがとう、気持ちだけ受けとっておくね

それから半年後──

冴夏

え……、ウソ…………

玄関前で鍵を取り出そうとポケットをまさぐる

が、そこにあるはずの鍵がなかった

冴夏

(もしかして落とした?)

冴夏

(どうしよう、お母さんいないし……)

通学路へと戻り、鍵が落ちてないが必死に探す

冴夏

(どこで落としたんだろう?)

どうしたの?

顔をあげると、“彼“がたたずんでいた

冴夏

えーと、鍵を落としちゃって……

事情を説明する

マヌエル

お母さんはお家にいないの?

冴夏

妹と一緒に出かけちゃってていない

マヌエル

そうか

マヌエル

どこで鍵を落としたか、心当たりある?

冴夏

わかんない……

冴夏

たぶん、通学路かな

マヌエル

とにかく探してみようか

マヌエル

一緒に探すのを手伝うよ

にこ

しばらく通学路を中心に鍵を探したが、見つからなかった

マヌエル

あった?

冴夏

…………

首を横に振る

マヌエル

もうすぐ日が暮れるな

日没が近づいていく

暗くなれば鍵を探すどころじゃなくなる

マヌエル

しかたない

マヌエル

いったん鍵探しは中断して

マヌエル

マヌエル

僕ん家(ち)へ行こうか

マヌエル

んで、美紀さん──きみのお母さんに連絡して迎えに来てもらおう

マヌエル

それでいい?

わたしはこくりと頷いた

“彼“はショルダーバックからスマホを取り出し、事情を伝えるため母に連絡した

二言三言交わすと通話を切る

マヌエル

迎えに来るって

冴夏

よかった

なんだかホッとした

マヌエル

それじゃあ行こうか

歩いて数分後、“彼“の家に着いた

二階建ての一軒家

玄関のドアを少し開けて、“彼“はぴたっと固まった

冴夏

…………?

マヌエル

マヌエル

えーと、ちょっと待ってて

マヌエル

すぐ片付けるから……

勢いよくドアを閉めた

5分後

ドアが開く

マヌエル

……さあ、入って……

息を切らしていた

冴夏

お邪魔します

冴夏

(そういえば中に入ったの初めてかも)

テーブルの上に水挿しが置いてある

マヌエル

アイビーっていうんだよ

冴夏

アイビー……?

マヌエル

和名だとセイヨウキヅタって呼ばれてるかな

冴夏

ふーん

マヌエル

なにか飲み物持ってくるね

きょろきょろと見回すと奥の部屋のピアノに目が引く

冴夏

あっ、ピアノだ

マヌエル

マヌエル

うちの母親のだよ

マヌエル

一緒に住んでたときはよく母親が弾いてたっけね

冴夏

今は?

マヌエル

両親は海外へ引っ越ししたから、弾く人がいないんだ

マヌエル

僕、ピアノからっきりだし

お盆の上にマグカップが3つ並んでいる

冴夏

(3つ?)

首を傾げる

今この部屋にいるのは自分と“彼“だけだ

あと1つは……?

マヌエル

もうひとつのは二階の寝室で仮眠してるお客さんの分

冴夏

お客さんいるの?

マヌエル

そろそろ起きる頃合いだから、持っていこうと思ってね

冴夏

……あいさつした方がいいかな?

マヌエル

大丈夫。気にしなくていいよ

そう言って“彼“は二階へ上がっていった

しばらく経って母が迎えに来てくれた

わたしたちは“彼“にお礼を言い、あとにした

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