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コメント
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ああ、もう……この回、胸がぎゅっとなりました。かなえちゃんの「私ひとりでいいってなんですか」って言葉、重たく響きましたね。遥は自分を犠牲にするのが正しいと思ってたけど、そうじゃないんだって、かなえちゃんの涙が教えてくれた。好きな人が傷つく姿を見たくないって気持ち、痛いほど伝わってきました。桃下さんの描く人間関係の機微、本当に繊細で美しいです。遥がかなえちゃんの頭を撫でるところ、じんわりしました。
かなえ
閉店間際の事務所内。
これは例の封筒を見たかなえちゃんの一言。
もちろんこの場には、早坂の姿もある。
私と違って、2人とも一切動揺していない。
遥
かなえ
かなえ
早坂
早坂
呆れ返った様子で、早坂は封筒を投げ捨てた。
カッターの刃は危険だから、前もって私が処分したけど。
先に確認しておいて正解だった。
遥
遥
無抵抗の女に手を上げる暴力性と、カッターの刃を封筒に仕込む残虐さを目の当りにした今、いつまでもあの人から逃げ続けるわけにはいかなくなった。
早く私からアクションを起こさないと、痺れを切らした彼が何をしでかすかわからない。
いくら私と別れたくないからといって、こんな脅しが許されていいはずがない。
遥
遥
かなえ
かなえ
遥
こんな危険なものを、わざわざ名指しで渡しに来るような人だ。
今度はどんな行動に出るかわからない。
かなえ
遥
かなえ
遥
遥
そう主張しても、かなえちゃんは納得できない様子で早坂を見つめ返す。
でも早坂は何も言わなかった。
壁に寄りかかったまま、私達の会話に耳を傾けるだけ。何も語ろうとはしない。
変化のないその表情から、彼の心の内を読み解くことは叶わない。
かなえ
遥
かなえ
かなえ
かなえ
遥
かなえちゃんの言い分もわかる。
確かに、単なる脅しかもしれない。
でも、こんな事態にまで発展させてしまったのは私だ。
あの人から逃げ続けて、話し合う機会を放棄した私にだって責任はある。
……全部、自分が招いた種だ。
かなえ
遥
かなえ
遥
……あの日の事を思うと胸が痛い。
青木さんに対する恐怖と同じくらい、かなえちゃんに対しての罪悪感も残ってる。
あんなに惨い場面を彼女に見せてしまった、その罪悪感が消えることはない。
遥
遥
遥
咄嗟に嘘をついた。
恐らく2人きりで会うことになるだろうとは思ってる。
誰に聞かれるかわからない場所での話し合いを、青木さんが承諾してくれるとは思えなかったから。
それが危険なことだって、今度はちゃんとわかってる。
わかってるけど、私にはもう、どうすることもできない。
逆らったら、また痛い目に遭わせると―――― 周りの人間すら傷つけるつもりだと、この封筒は私達に、そう思わせるためのもの。
私にそう思わせた時点で、青木さんの思惑に嵌まってる。 もう彼に逆らうことは許されないのだと。
でも、それをかなえちゃんに伝えるわけにはいかない。
だから嘘をついた。
かなえ
遥
かなえ
遥
かなえ
顔を歪ませるかなえちゃんの表情は、あの日、私を助けられなかった後悔の念を滲ませている。
でも、かなえちゃんがそこまで悔やむ理由はないんだ。
彼の暴力だって、元はと言えば、2人の忠告を聞かずに青木さんに歯向かった私が招いた事故なんだから。
自業自得なんだ。
遥
遥
かなえ
恐怖を押し殺し、明るく振る舞う。
これ以上、この話を長引かせたくなくて。
遥
遥
遥
瞬間、かなえちゃんの表情が凍りつく。
私はハッとして言葉を止めた。
今のは完全に失言だ。 純粋に私を心配してる彼女に、「また暴力を受けるのは私だけでいい」なんて、無神経な言葉を放ってしまった。
謝らなきゃ、咄嗟にそう思ったけれど。
――――パシンッ。
左頬に走った痛みに、思考が停止した。
遥
一瞬何が起こったのかわからなくて、唖然としながら、かなえちゃんを見つめ返す。
瞳に涙をいっぱい溜めて、彼女は私を睨みつけていた。
振りかざした手のひらは、怒りで小さく震えていて。
かなえ
狭い空間に、彼女の呟きが虚しく響いた。
かなえ
遥
かなえ
かなえ
かなえ
かなえ
一筋の涙が、かなえちゃんの頬を濡らす。
怒り、哀しみ、失望。様々な感情を含んだ叫びが、私の胸を締めつける。
かなえ
遥
かなえ
そう言ってしゃくり上げる。
子供のように泣きじゃくり、大粒の涙が床にこぼれ落ちていく。
そんなかなえちゃんの涙を見て、自分の愚かさを痛感した。
遥
……青木さんから殴られたのは、私ひとり。
でも被害を被ったのは私だけじゃない。
かなえちゃんと早坂の心にも、決して消えない傷ができた。
その事実を、私は忘れちゃいけなかったのに。
遥
遥
自分の事しか見えてなくて、2人の気持ちに寄り添わなかった。
だからこそ、かなえちゃんの想いが痛いほどに伝わってくる。
どれほど私の身を案じてくれていたのかも。
遥
しゃがみこんで、そっと頭を撫でる。
顔を上げたかなえちゃんの、大きな目も鼻も頬も、すっかり真っ赤に染まっている。
いつも笑顔で天真爛漫な彼女が、こんなにも顔をくしゃくしゃにしながら泣く姿が愛しくて、胸の中に温かな感情が広がっていく。
遥
かなえ
遥
しゃくりあげる小さな背中に手を這わす。
よしよしとあやすように無でれば、少しずつ落ち着きを取り戻してくれた。
……この子が泣く姿を見るのは初めてだ。
誰かの為に、こんなに感情的になって怒ったり、泣いたりして。
よっぽど堪えていたんだろう。
本当にごめんね。ありがとう。
彼女を宥めながら、何度も心の中で呟いた。