テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
えっと……まず、遥ちゃんが結婚の話を切り出したシーン、めっちゃドキドキしたよ…!「結婚って必要?」って忍さんに言われた時の遥ちゃんのショック、こっちまで胸が痛くなった😭 4年も付き合ってて、将来の話が通じ合わないの、本当に辛いね…。でも早織さんとの会話で政治の話をしつつ、なんか日常の温かさも感じられて、そのギャップがまた切なかったな。最後の車内での早坂くんの「泣くなよ」って言葉、意味深でゾクッとしたよ…!次が気になる〜!
遥
青木
遥
彼との交際も4年が過ぎた頃。
私はもうすぐ26歳を迎える。
そろそろ結婚という決断に踏み切ってもいいんじゃないかな、そう思って、勇気を出して尋ねてみた。
母親からも、「今の彼氏と結婚しないの?」なんて探りを入れられている。
年齢的にもいい頃合いだと思ってる。
それに、好きな人と結婚して、旦那となる人と共に子供を育てていく未来は、私の長年の夢でもあった。
幼い頃から密かに憧れていた、一生を添い遂げると誓った人と家族を作る―― その相手がこの人であってほしい。
当時はそう思っていた。
……それが、破綻の道を辿ることになるとも知らずに。
青木
彼は慎重に訊き返してきた。
どこか落胆めいた響き。
期待で膨らんでいた気持ちが、風船が萎んでいくように縮んでいく。
遥
しどろもどろになりながら答えると、青木さんは意外そうな顔で私を見返してきた。
どうしてそんな顔をするのかわからなくて、その時になって初めて、自分の中で焦りが生まれた。
青木さんは忙しい人だ。 営業社員として、トップに上り詰めたいという野望も抱いている。
だから、今すぐの結婚は難しいかもしれない。
そんなことは百も承知の上で、でもいつかは……と将来の約束を願っていた。
いつか彼と結婚できるのだと、そう確信できる言葉が欲しかった。安心したかった。
青木さんなら、きっと考えてくれている。
だって彼は誠実な人だから。
そう思っていたのに。
青木
青木さんは何も答えてくれない。
私が望む言葉をくれなかった。
遥
遥
遥
青木
遥
青木
遥
遥
遥
遥
青木
切々と理想を語る私の言葉を、青木さんは突然の謝罪で遮った。
青木
その一言に、頭の中が真っ白になる。
笑えない冗談だと思ったし、そう思いたかった。
胸につき上げてくる焦燥の感覚に抗うように、私は深く息を吐く。
遥
遥
青木
遥
私が訊きたかった言葉は、またもや彼によって遮断される。
青木
青木
青木
遥
彼の主張には、確かに私への想いが刻まれている。
でも――それは、私が望む未来じゃない。
好きな人と結婚して家族を作る。 そんな、ごく普通で当たり前の夢を拒絶されるなんて思わなくて。
重く黒ずんだ不安が胸の中を渦巻いて、その日以来、この淀んだ苦しさが消えることはなかった。
……この人は、私との将来を望んでいない。
でも、恋人としてずっと傍にいたいと言う。
そんな人と、この先もずっと一緒にいるのは、果たして正解なんだろうか。
初めて彼に対して芽生えた、疑心の念。
それが青木さんへの不信に繋がり、数日後、彼のスマホを覗き見してしまったことで、彼の裏切りを知ることになる――。
・ ・ ・
アナウンサー
アナウンサー
休憩室の引き戸を開けると、アナウンサーの抑揚のない声が耳に届いた。
狭い和室で、テレビだけが孤独に稼働している。
遥
時刻は14時。
平日だと、午後から客足が落ち着いてくる。
私は今から30分だけの休憩を取る予定。
暖房の電源をつけ、冷蔵庫から缶コーヒーをひとつ取り出して腰を下ろした。
――休憩室といっても、コーヒーサーバーや書籍が置いてあるわけじゃない。
古びたテレビとレトロなテーブル、そして給湯ポットと冷蔵庫が置いてあるだけの、質素な空間。
どうして休憩室だけ和室なんだろう。 働き始めた当初は不思議に思っていたけれど、そんな疑問も数年経てば、思考は薄れてしまうもの。
今では、特に何とも思わなくなった。
むしろ畳の上だから両足を伸ばせるし、昔ながらの日本風な造りでリラックスできるから良いとする。
そんな室内に、新たな音が混じる。
カラ……と控えめに開かれた引き戸に顔を上げれば、早織さんの姿があった。
早織
早織
遥
軽く手を振れば、綺麗な笑みを見せてくれる。
彼女の手には、可愛らしい和風柄の紙袋。
中身はお弁当かな、と悟る。
遥
早織
早織
遥
隣のスペースに早織さんも腰を下ろした。
綺麗に正座する姿は、古風な大和撫子感を匂わせる。
対して私の崩れた体勢のだらしなさよ。
でもこっちの方が楽チンだから正さない。
アナウンサー
アナウンサー
早織
遥
遥
遥
早織
早織
早織さんも興味がなさそうな口振りだった。
テレビには目もくれず、弁当箱の蓋を開ける。
中身は定番の卵焼きやタコさんウインナー、ミートボールなどが詰められている。
子供が好きそうなおかず達が勢ぞろいだ。
遥
早織
早織
早織
温厚な早織さんにしては珍しく、皮肉めいた発言だと思った。
不正行為を働いた政治家に対する呆れなのか、怒りなのか、はたまたその両方か。
その不正というのも、現金を供与した選挙運動員を公職選挙法違反で逮捕したというもの。
この手のスキャンダルは総選挙の後、よく耳にするようになった。
遥
早織
遥
遥
早織
もし世界のどこかで大地震が発生したら、すぐに話題はそっちに奪われて、日本政治の不正ニュースなんて、あっという間に掻き消されてしまう。
簡単に忘れ去られる程度の影響力しかない。
もはや、政治家の不正が当たり前になっている認識。
私達はこの異常さに慣れてしまっている。
早織
遥
遥
早織
遥
遥
早織
早織
遥
遥
遥
早織
早織
頷きながら、早織さんはミートボールを箸でつまんで口に入れた。美味しそう。
遥
遥
遥
彼らの言い分も理解はできる。
投票を勧めるも、勧めないのも、本人の自由だ。
ただ、強制されるものじゃない。
遥
遥
遥
あえて投票しない、という権利もある。
投票に行かない人を口汚く攻撃するのは違う。
正義感を人に押し付けている時点で、それはもう正義じゃないことに、大半の人は気づいていない。
遥
早織
遥
早織
遥
早織
遥
早織
首を傾げる早織さんに、私は曖昧に笑い返す。
なんせ今日は、青木さんと話し合う日だ。
早坂も一緒に来てくれるから、幾分か安心はできるものの、どうしても気分は落ちてしまう。
早織
遥
遥
個人的な事情を伝えるわけにもいかず、話題を方向転換させることで誤魔化した。
・ ・ ・
遥
キリキリと痛む胃を抑え込む。
私はただ今、車内で吐き気と格闘中。
隣の運転席には早坂の姿がある。
私達は今しがた、本日の勤務を終えたばかりだ。
――車窓から見えるのは、ログハウス風の一軒家カフェ。
青木さんと交際している時に、何度か一緒に訪れたことがある場所だ。
今日は彼と、最後の話し合いをする日。
彼と決別する為の場を、私はこの喫茶店に設けた。
……そう。
今日で最後。
最後にしなきゃいけない。
私も、彼も、過去に固執せずに、前へ進む為に。
早坂
早坂
遥
早坂
早坂
早坂
遥
着いて早々、来た道を戻ろうとする早坂の愚行を、私は慌てて止めに入る。
遥
早坂
早坂
遥
遥
遥
早坂
舌打ちがっつり聞こえてるんですけど。 はしたない。
遥
早坂
遥
以前から早坂がずっと懸念していた"2人きりの状況"は回避した。
青木さんも、喫茶店で私と落ち合うことを承諾してくれた。
ただ、早坂が同行することは伝えていない。
多分、相当怒られるだろう。
でも、もう背に腹は代えられないから。
遥
早坂
渋々な感じで納得してくれたけど、早坂の表情は私以上に固い。
背もたれに深く体重を預け、彼は重苦しいため息を吐き出した。
早坂
遥
早坂
遥
早坂
早坂
遥
私は目をぱちくりさせる。
突然、何の予言なのか。
困惑する私に、早坂は真剣な眼差しを投げかけてきた。
早坂
遥
遥
早坂
遥
早坂が何を伝えたいのかわからない。
でも、本人はこれ以上説明する気がないようだ。
早坂
遥
早坂
遥
早坂
ふう、と一呼吸つく。
まだ身体が強張ってる。緊張が解けない。
こんな調子じゃ駄目だ、と心を奮い立たせる。
遥
遥
早坂
遥
遥
遥
おずおずと尋ねれば、神妙な面持ちだった早坂の表情が、ふっと和らいだ。
早坂
早坂
遥
彼が既婚者だと知った時、一方的に別れを告げて逃げたのは私。
その日以降も、彼とは何度も話し合ってきた。
それでも状況は平行線のままだ。
……多分、今日もそうなる。
今更別れを受け入れてくれるとは思えない。
だから早坂に来てもらったわけだけど、私はまだ青木さんに、僅かな希望を抱いていた。
たとえ裏切られていたとしても、それでも彼と過ごした4年間は、私にとっては何事にも代えがたい、大切な4年間であることに変わりはないんだ。
だからこそ、初めての恋人が青木さんで良かった、と。 そう思えたら、彼の別れで負った心の傷も、いつかは綺麗に昇華できるような気がしたんだ。
だから、どうしても自分で終わらせたい――
そんな思いがあった。
#狂愛
柏木さくら
3,505
#ハッピーエンド
瑠璃マリコ
2,364
桃下結衣
726