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あおいです🌷 第14話、読ませていただきました。 朝の静かな空気感の中に、遥の複雑な気持ちが細かく描かれていて、胸がぎゅっとなりました。特に「気にしているのは私だけだと思い知らされる」という一文に、彼女の寂しさと自己嫌悪がよく出ていて…。早坂が「出ていってほしくない」って言った瞬間の心臓の鼓動、こちらにも伝わってきました。 そして後半のかなえちゃん登場で少し空気が和んだところも好きです。でも遥が「頼りたくない」と自分を責める場面では、また切なくなりました。 次が気になります!
早坂
早坂
遥
肩を揺すられて、夢の世界から引き戻される。
霞がかかった視界の端には、私を覗き込むように見下ろす早坂の姿が見えた。
遥
早坂
遥
遥
早坂
寝惚け眼をこすりながら上半身を起こした時、肋骨にふと違和感を感じた。
手で触れてみても腫れてはいない。 痛みも感じない。
けれど腕を上げようとしたら、動かなかった。
遥
早坂
遥
遥
早坂
遥
朝から億劫になる。
しばらくはこの痛みを我慢しながら生活するしかない。
早坂は既に朝支度を済ませたようで、出勤用のダウンジャケットを羽織っていた。
遥
ふと、部屋にほんのり漂うコーヒーの香りが気になった。
朝食も先に済ませてしまったらしい。
もう少し早く起きればよかった、と後悔した。
遥
なんて、呑気なことを考えた私に追い討ちをかけるように、お腹の虫が鳴る。
昨日はあんな事があったから、夜は何も口にしていない。食欲も全く湧かなかった。
一眠りしてやっと、猛烈な空腹感が襲ってくる。
コンビニで何か買ってこようかと思った時、早坂の指がおもむろに、テーブルの上を指した。
遥
そこにはラップに覆われた状態の器。
それが朝食のお裾分けだと気付き、私は瞳を輝かせた。
遥
遥
早坂
早坂
遥
早坂
早坂
早坂の口調はいつもと同じ。
普段と何も変わらない。
昨日の出来事なんて忘れたかのような気配を纏っていて、その事実が、私の心に影を落とす。
……そんな風に、無かったことのように扱われるのは正直寂しい。
気にしているのは私だけだと思い知らされる。
遥
早坂
遥
遥
早坂
早坂
遥
遥
朝になったら此処を出る、早坂にそう伝えたからには悠長に滞在していられない。
1人暮らしをしている人の部屋に居候する、それが相手にとって、どれだけの負担になるか。 多方面で迷惑を被るのは早坂だ。 それは私の本意じゃない。
諌めるような視線が気になったけど、無視してベッドから下りた。
体のあちこちがまだ痛む。
肋骨に負担をかけないよう慎重に歩みを進め、朝食が置かれたテーブルについた。
ラップを外せば、そこにはスクランブルエッグとウインナー。それとトースト。
早坂お手製の朝ご飯が、私の前に並んでいる。
遥
遥
早坂
遥
遥
いただきます、と手を合わせてから食べる。
ふわっふわの卵に絡む塩胡椒に、程よい甘みと濃厚なチーズ。
こんがり焼かれたウインナーから肉汁があふれ、噛みしめるとじゅわっと溢れる脂がたまらない。
遥
遥
遥
軽い口調で尋ねてみる。
複雑な心境は隠したまま。
早坂は無言のまま私を見つめていて、その様子に首を傾げた。
遥
早坂
遥
早坂
昨日の話を蒸し返されて言葉を詰まらせる。
しばしの沈黙のあと、私は静かに頷いた。
遥
遥
遥
思わせぶりな態度が人を傷つけることもある。
……事実、今の私にはそれが辛い。
早坂の気になる相手が誰であっても、今の私は素直に応援できないし、したくない。
異性として意識してしまった以上、背中を押してやれるほど優しくないから。
だから私は、私の主張を曲げなかった。
早坂の為でもあるんだ、この選択は。
そう信じて彼の返答を待つ。
本人も諦めがついたのか、観念したようにため息をついた。
早坂
早坂
遥
早坂
ドクンッと心臓が波打った。
思わせ振りな態度はダメだと忠告した直後に、まさか思わせ振りな言葉を放たれるとは思わなかった。
早坂の意図が読めなくて困惑する。
遥
早坂
遥
それなら昨日、聞いたはずだけど。
そう言いかけた私に待ったをかけて、早坂は首を振った。
早坂
遥
早坂
遥
ひどく神妙な顔つきだった。
表情を引き締めて、真剣な物言いをする早坂の様子に私は狼狽えるしかない。
早坂
こんな風に懇願されるのは初めてで、返答に迷ってしまった。
こんなに思い詰めた顔をしている早坂を見ると、頑なだった私の意思は揺らいでしまう。
一瞬の躊躇のあと、私は早坂に告げた。
遥
遥
そう答えることで、早坂の提案を受け入れた。
・ ・ ・
かなえ
病院から出た直後、涙混じりに聞こえてきた声に苦笑する。
駐車場には見覚えのある車が1台。 早坂の車だ。
運転席には本人の姿も見える。
その後部座席から、見知った姿がぴょんっ、と飛び出してきた。
今にも泣きそうなほど表情を歪ませて、小走りで私の元へ駆け寄ってくる。
遥
かなえ
かなえ
両手で握り拳を作りながら息巻くかなえちゃん。
彼女は確か、今日は休日のはず。
なのに出迎えに来てくれるなんて、嬉しくてお姉さん泣きそう。
早坂は休憩中に抜け出してきたんだろうな。
遥
遥
かなえ
遥
遥
遥
検査の結果、頭は特に問題なし。
骨折以外は酷い損傷もなかった。
痣はしばらく残るだろうけど、それらもじきに消える。
散々な目に遭ったけど、これだけの怪我で済んだのは幸運だったかもしれない。
遥
遥
遥
遥
かなえ
かなえ
遥
両手で顔を隠しながら、かなえちゃんは照れまくる。
褒められてとても嬉しそうな顔。
その眩しい笑顔を見ていると、不思議と元気が湧いてきた。
本当に私は同期にも後輩にも恵まれているのだと実感する。
そんなこんなで、2人で喋りながら車にたどり着いた。
運転席にいた当の本人は、栄養ドリンクを飲んで一息ついている。お疲れ様です。
遥
早坂
早坂
遥
ひらひらと手を振って応えれば、かなえちゃんが早坂の手元を覗き込んだ。
かなえ
かなえ
早坂
早坂
何気なく発した早坂の一言に動きを止める。
つい声を上げてしまいそうになって、かなえちゃんの存在を思い出して口を噤んだ。
遥
遥
昨晩ベッドを共にした身としては、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
早坂
遥
遥
遥
いつ帰ることが出来るのか。 それがわからない以上、長期不在の旨を大家さんに報告しないといけない。
不測の事態が起きた場合の為に、私の連絡先を伝えておいた方がいいだろうから。
かなえ
遥
かなえ
不意にかなえちゃんが尋ねてきて、直後、早坂が栄養ドリンクを噴き出した。
盛大に咳き込んで、誰が見ても不審な反応。
現にかなえちゃんも、眉をひそめながら早坂を見返している。 不審者を見るような鋭い目付きだった。
それはそうだろう。かなえちゃんは私に訊いてきたのに、直後に早坂が大袈裟な反応をしたら怪しまれるのは当然だ。
……仕方ないなあ、もう。
遥
早坂
遥
遥
遥
かなえ
この手の対応は、早坂より私の方が得意。
かなえちゃんが興味を持ちそうな話題を振れば、案の上食いついた。
彼女の提案はとてもありがいたいけど、かなえちゃんは実家暮らしだ。
娘の上司にあたる人が、人には言えない事情を抱えながら何泊も居候してるなんて、さすがにご両親を不安にさせてしまう。
……これは自分が招いた種。
私自身でどうにかしなきゃいけない問題だ。
遥
遥
かなえ
かなえ
ニコニコと、純粋無垢な笑顔を向けてくる。
かなえちゃんの素直な気持ちが嬉しくて、同時に良心が痛んだ。
遥
この子に頼るつもりは毛頭なかった。
本音を言えば早坂にも頼りたくない。
だってこんなの、情けないし恥ずかしい。
その恥ずかしい行為をしてしまった自分に嫌悪感すら抱く。
青木さんが既婚者だった事実を知らなかったとはいえ、不倫は公序良俗に反する共同不法行為であることに変わりはないんだ。
遥
遥
そもそも青木さんさえ協力的になってくれれば、私1人でも解決できる問題だと思っていたし、そうしなきゃいけないと思っていた。
私達の問題は、私達で解決すべき。 だから周りを巻き込んではいけない、と。
……そう勝手に結論付けて、一方的な正義感に浸って。 誰にも頼らず1人で突っ走っている私は、本当に愚かだと言わざるを得ない。
1人でできることなんて限界があるのに、その限界を見極めることもせず、結局私はこの時も、彼らの気遣いを無下にしてしまった。
管野アリオ
360
桃下結衣
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