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叩かれた頬が熱を帯びる。
時間差で、こめかみにも痛みが襲ってきた
青木
青木
目を細めて彼は微笑む。
悪びれてる様子は全くない。
信じられない気持ちで、私は彼を呆然と見つめた。
今まで人を殴ったこともなければ、殴られた経験なんてない。
ましてや相手は男の人で、かつて私が好きだった人。
そんな人から殴られるなんて思ってもみなくて、目の前の現実が受け入れられない。
驚きと恐怖で声すら出なかった。
遥
こめかみが痛い。 どこもかしこも鈍痛が響く。
手足も思うように動かせず、その場に崩れ落ちている私の視界に、気怠そうに腕を伸ばしてくる青木さんの姿が映った。
遥
思わず身を固くする。
痛みを伴う衝撃は、けれどいつまで経っても訪れなかった。
でも、状況はより悪くなった。
青木さんが私に馬乗りになったからだ。
遥
慌てて身を起こそうとしたけど遅かった。
彼は私の首元に指を巻き付け、ゆっくりと力を込めてくる。
喉仏をぐっと押され、ひ、と声がひきつった。
嘔吐感に襲われ、必死に体を捩っても退けてくれる気配はない。両手で胸を突っ張ってみても微動だにしない。
所詮、女の力が男に敵うわけがなかった。 彼に首を絞められている状況は一向に変わらず、額に脂汗が滲み出る。
まともな抵抗もできないまま、やがて来るかもしれない死の瞬間に怯えることしかできなくて涙が滲んだ
でも、彼の力は酷く弱いもの。
私を殺そうという意思は感じられない。
それでも息苦しいことに変わりはなくて、苦痛に歪む私の顔を、青木さんは悠然とした態度で見下ろしている。
その表情はやっぱり穏やかなまま。
彼の心理状態がわからなくて困惑する。
青木
青木
青木
遥
青木
青木
青木
青木
青木
青木
おかえりも、いってらっしゃいの一言もない。労いの言葉すら掛けてくれない―――― 彼の日頃の不満が次々と暴かれる。
青木
捲し立てるように不満を漏らしていた青木さんは、ここで「ふふっ」と無邪気に笑った。
本当に嬉しそうに笑うから、一瞬だけ恐怖を忘れてしまった。
青木
青木
青木
青木
青木
青木
青木
くすくすと、楽しげに笑い声を零す。 声を挟む隙すらない。
青木
青木
青木
青木
青木
遥
青木
青木
青木
青木
優しい口調で諭されても、私の意志は揺らがない。
むしろ嘘をついていたのはこの人だし、貴方が私に謝れと言いたくなる。
どうにかして、この状態から抜け出さないと。
彼が退けてくれないなら、自分でどうにかするしかない。
でも、どうすればいい。 この絶望的な状況を覆す"何か"があれば――――
遥
何気なく片手を動かした時、指先に固い感触がぶつかった。
視線だけを動かして確認する。
それは私のスマホだった。 倒れた拍子に、コートのポケットから滑り落ちたらしい。
床に落下した際にスリープ機能が解除されたようで、画面にはLINEのトーク画面が表示されている。
――――瞬間、真っ先に頭に浮かんだ。
何かあったら連絡しろ、 そう言ってくれたあの人の顔を。
遥
遥
震える指先が通話アイコンに触れる。 爪先でタップして、脱力した手を画面から離した。
咄嗟に早坂へ電話してしまったことを、青木さんに悟られちゃいけない。
会話なんてできなくてもいい。 この状況を電話越しに聞いてくれたら、早坂ならすぐに事態を察して助けに来てくれる。 そういう奴だから。
遥
遥
祈るように願いながら、早坂に繋がる瞬間を待つ。
青木
遥
……だけど、やっぱり青木さんは見逃してくれない。
遥
スマホを拾われて、絶望的な心境に陥る。
青木さんの指が画面を軽くタッチして、通話を切られたことを悟った。 早坂に繋がる前に、助けを求められなかった。
そればかりか、最悪な展開になった。
青木
青木
遥
青木
遥
青木
逆上した青木さんが、再び片手を振り上げる。
胸ぐらを掴まれて、パンッと右頬に音が弾けた。
口内に鉄の味が広がっていく。 唇の端が切れたんだろう。
殴られたのは頬なのに、身体中が痛みで悲鳴を上げていた。
青木
遥
青木
青木
青木
青木
青木
青木
遥
遥
さっきから言ってる事がチグハグだ。 案外面白いなこの人。
青木
青木
青木
青木
遥
……今、ここで素直に謝れば。 きっと、この人は大人しくなるんだろう。
歯向かえば、また殴られる。
そんなことは容易く予想できた。
遥
直後、彼の目の色が変わる。
再び拳を振り上げた青木さんに殴られて、蹴られて。意識が徐々に遠退いていく。 彼の怒声も全く耳に入ってこない。
こんなに散々な状況なのに、頭は酷く冷静だった。
明日の出勤の事を、呑気に考えられるくらいには心が落ち着いている。
ほっぺ腫れたらどうしよう、とか。
男から殴られて、顔が腫れたので仕事休みます。なんて傷病休暇は、会社に通用するのかな……とか。
菅原エリアに言ったら、 「じゃあマスク着用して出勤してね!」なんて、爽やかな笑顔で言われそうだけど。
あの人なら絶対に言う。 鬼かよ。
……あと、 心配してくれた早坂とかなえちゃんに、土下座して謝らなきゃな……なんて考えが浮かんで。
そこで、ぷつんと意識が途絶えた。
コメント
2件

モラハラ夫すぎて死ぬ
もう待って待って待って😭💦💦 青木さん、完全に本性出しちゃったね…。普段の優しい仮面が一気に剥がれて、モラハラ加害者の生の声がグロテスクすぎて鳥肌立ったよ…。好きだった人の豹変ってこんなにも怖いんだって実感させられた…。倒れた拍子にスマホ見つけて早坂さんに助け求める流れ、そこからの「通話切られた」絶望感がエグい…。早坂さん、頼むから気づいて助けに来てくれ〜!!😭🙏✨ 続き早く読みたいけど心臓が持たないかも…!