「なんで崇矢が?仕事は?」
天馬は驚きを隠せなない。
「んな事どうでもいいだろ?今は目の前のこいつに集中しろ!」
崇矢は倒れている美琴を指差しながら、真剣な眼差しで天馬に語りかける。
「またあんた!邪魔しないでよ!これじゃ命令を実行できないじゃない!」
美琴は包丁の刃先を崇矢に向けながらものすごい剣幕で怒鳴り散らす。
「命令?あんた、何の話をしてる?」
崇矢は美琴の発した言葉の意味を問いただす。
「うるさい!うるさい!ここまで来たらもう後には引けないのよ!邪魔ないで!」
美琴は天馬の方へ向き直り、両手で構えた包丁を向けながら走ってくる。
そんな天馬の前に立ち塞がり、崇矢は迫り来る刃から天馬を守る。
美琴が向けた包丁の刃は、崇矢の脇腹を掠めた。
「うぐっ・・・・」崇矢は脇腹を抑えながらその場に蹲る。
抑えた手の指の間からは、赤々とした鮮血が滴り落ちている。
「崇矢!大丈夫?」
天馬はあまりの出来事に卒倒してしまいそうになる意識を無理やり呼び起こし、崇矢に駆け寄る。
「あ・・あぁ・・・」
美琴はあまりの出来事に放心状態になっている。
美琴自身、包丁は単なる脅しの道具。
六車からの天馬に恐怖を与えろという命令を遂行する為の必要な道具。
そう思っていたし、当然、刺すつもりなど毛頭なかった。
「美琴さん!自分が何をしたか自分でわかってるんですか?」
「違う・・・私はそんなつもりは・・・
こいつが悪いのよ・・・私の邪魔をするから・・・
私は悪くない!私は悪くない!
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
美琴はあまりの事態に錯乱し、包丁をその場に投げ捨て、部屋から立ち去ってしまう。
「待ってください!美琴さん!」
美琴の後を追おうとする天馬を崇矢が必死に止める。
「駄目だ!行くな天馬!深追いするな!危ない!」
「崇矢!大丈夫?」
「あぁ・・・少し脇腹を掠めただけだ。致命傷じゃねぇよ!大丈夫だ!大した事ねぇ」
「す、すぐに病院行こう!ね?崇矢!」
「あぁ・・・」
崇矢の傷は思いのほか浅く、3針縫う程度の処置で済む程度の傷だった。
また、警察に通報するべきだという天馬の提案を崇矢は拒否した。
美琴は逆上して人を包丁で刺すような人間だ。
警察に通報などしたら、報復に何をされる分かったものでないと判断したのだろう。
崇矢の言い分には納得できない様子の天馬だったか、自分の意見を押し殺し、グッと堪えた。
崇矢が無事だったのならそれだけで構わなかったからだ。
寝室のベットで横になる崇矢に天馬は
「今日は寝てなよ?傷が浅いって言われたからって油断しちゃだめだぞ?」と
心配した様子で布団をかける。
「悪いな・・・天馬・・」
「ったく、何であんな無茶な事したんだよ!美琴さんは包丁持ってたんだぞ?
俺・・・崇矢が死んだりしないかって、ずけぇ不安だったんだから!」
天馬はうっすらと涙を流しながら、天馬の頭をコツンと叩く。
すると崇矢は、ベットからムクッと起き上がり、天馬を抱き寄せ、優しく口づけをした。
「んっ///」
天馬はあまりの予想外の事態に頬を赤らめ、茹で蛸のように真っ赤になっていた。
「ど、どうしたんだよ急に・・・」
「俺さ・・・ずっと昔から、天馬の事が好きだったんだよ・・・
ずっと愛してたんだ・・・」
「え?」
「悪い・・・気持ち悪いよな・・・
男同士なのにさ・・・そんな天馬に危険が迫ってるって考えたら
体が勝手に動いてたんだよ。」
天馬は崇矢の話を黙って聞いていた。
「好きなやつに、危ない状況だったら助けてやりたいって思うのは当然のことだろ?」
天馬は目から涙を流しながら、崇矢に抱きつく。
「崇矢・・・嬉しいよ・・・」
「気持ち悪くないのか?男が好きな俺が・・・」
「ううん。気持ち悪くなんかないよ!すごい嬉しい!」
天馬は崇矢の顔を自らの顔に近づけ、口づけをした。
「俺も好きだよ・・・崇矢」
天馬の答えに崇矢は「まじで?」とテンションが上がる。
それと同時に先ほど縫ったばかりの傷がスギっと痛んだ。
「いててて・・・」
「バカ!まだ安静にしてなって!」
「でも本当にいいのか?俺で・・・」
「うん・・・崇矢の事好きだからだ・・・」
崇矢は「天馬・・我慢できねぇ・・」と小さくつぶやくと
天馬をベットに寝かせ、覆いかぶさる。
「崇矢・・・」
「嫌か?やっぱり」
「ううん、そうじゃない。崇矢どできるのは嬉しいけど、その、傷は大丈夫?
まだ抜糸も終わってないのに・・」
天馬は崇矢の傷口を、手のひらで優しく撫でながら言った。
「心配してくれてんのか?優しいな天馬」
「バカ!優しいのは崇矢だろ?
こんな傷を負ってまで俺を守ってくれた・・・」
「天馬・・・好きだよ・・・」
薄暗い寝室で、天馬と崇矢は身につけていた衣類を全て抜き捨て抱き合っている。
「硬くなってるな・・天馬!興奮してくれてんのか?」
崇矢は天馬の硬直した股間を優しくさする。
「う、うん・・・すごく・・・興奮・・してる」
崇矢は天馬の肥大化したソレを優しく口に含む。
「ああっ、い、んん…っ」
天馬は腕で目を覆い隠しながら、甲高い声を漏らす。
「すげー可愛いよ・・・天馬
愛してる・・・」
崇矢は天馬の肛門を中指で刺激しながら、優しい言葉を投げかける。
「バカ・・・そんな事いうなよ・・・
もっと興奮しちゃうだろ」
その天馬の言葉でさらに気持ちが昂った崇矢は、口腔性交をのスピードを早め、両手の親指で、天馬の乳首を責める。
「あう゛ それ だめっん゛ぇぇッ!!
あっ…ふああ…あっあっあっあっあっ…////」
崇矢は不慣れた手つきで、自分の男根に避妊具を装着する。
「うまく入るかな?」
「優しくやってよ?こんな事、初めてなんだから」
「わかってる・・・優しくするよ・・・」
崇矢は自分の男根を、天馬の肛門へ優しく入れていき、すっぽりと根元まで入れる。
「天馬・・・動いていいか?」
「うん・・・優しくね・・・」
崇矢が腰を動かすと、天馬はそれに呼応するかのように甲高い声を漏らしながら喘ぐ。
「あふぅうんッ」
「ふあっ…あん…あはぁんっ////」
「はぁ・・はぁ・・て、天馬の中・・
す、すげー気持ち・・・」
「お、俺も・・気持ちいいよ・・崇矢」
この瞬間、二人の関係は友情関係の一線を飛び越え、恋人関係となった。
一通りの行為を終えた天馬と崇矢。
「天馬・・・気持ちよかったかな?
俺初めてだっから、あんまし上手くできなかったけど」
「ううん。ずげー気持ちよかったよ!崇矢が優しくしてくれたから、初めてでも気持ちよかった。」
天馬は崇矢の体に抱きつきながら笑顔で応える。
「そっか・・・よかったよ・・・」
「でも、崇矢・・・」
「どいうした?天馬」
「俺たち・・・その・・恋人同士になったって事でいいんだよな?」と
天馬は笑顔で尋ねる。
「あ、あぁ・・・そうだな・・・」
「俺嬉しいよ・・・これからもよろしくね崇矢」
天馬は崇矢に抱きつき口づけをする。
天馬は健やかな表情でスヤスヤと眠っていた。
そんな天馬を崇矢は真剣な眼差しで見つめていた。
「天馬・・・ちょっと出かけてくるな!すぐ戻ってくるからよ!」
崇矢は天馬のオデコに口づけをすると、クローゼットから、1つのバッグを取り出し、家を飛び出してどこかへ向かう。
一方その頃、美琴は自分がしでかした事を責めて、自己嫌悪に陥っていた。
もしかしたら、鳥丸は自分が刺したせいで死んでやしないだろうか?と不安に苛まれていた。
「私・・・とんでもない事を・・・」
美琴は自分の目から流れる涙を拭う。
その時、美琴のスマホから着信音が鳴り響く。画面には非通知と表示されていた。
「六車だ・・・」美琴は瞬時にその電話が六車からの着信だと確信した。
恐る恐る電話にでる美琴。
「も、もしもし・・・」
美琴の声は恐怖で震えている。
「よくやった!上出来だ!」美琴は六車の第一声に驚きを隠せなかった。
「え?でも私・・・実は鳥丸を・・・」
美琴が全てを言い切る前に六車は
「奴は死んでない!」と言葉を被せる。
「え?死んでない?」美琴は驚いていた。
鳥丸が生きているという事実に驚いたと同時に安心していた。
自分が包丁で刺したことが原因で鳥丸は死んでしまったのではないか?と内心穏やかではなかったからだ。
それに、六車がなぜその事を知っているのかも疑問に思う美琴であったが
妙な詮索はするなと以前忠告されていたため、聞くのを躊躇っていた。
「傷が思いのほか浅かったらしくてな、数針縫うレベルで済んだそうだ!
殺人犯にならなくてよかったな!ふははは!」
安心している美琴だったが、同時に不安もあった。
六車から連絡があったという事は、また新たな指示を言い渡される可能性があるからだ。
「また、新たな指示なんですか?」
美琴が恐る恐る尋ねると、六車から帰ってきた言葉は意外な物だった。
「いや、もうおしまいだ」
「え?それってもう、やらなくていいって事ですか?」
美琴の質問に六車は「ああ!そうだ!」と答えた。
その言葉を聞いて安心したのか、その場で崩れる美琴。
「俺とお前の関係もこの電話をもって終了だ!
全て終わったよ!これで晴れてお前は自由の身という訳だ!よかったなぁ」
「あ、ありがとうございます」
六車は「じゃあな」この言葉を最後に電話を切ろうとするが、美琴はまだ六車に聴かなければならないことがあった。
「待ってください!」
「なんだ?まだ何か用があんのか?」
「その・・あの事は・・親父狩りの件は、黙っててもらえるんですよね?」
これだ。美琴は親父狩りの一件を秘密にしてもらう事を条件に協力していたのだから
一番重要な話だった。
「心配するな!秘密にしといてやるよ!お前は俺との約束を果たしたんだ!
口外はしない!安心しろ!」
美琴はその言葉を聞いて安心し、涙を流しながら「ありがとうございます」と震える声で言った。
電話を終えた美琴は数十分間その場に立ち尽くしていた。
「これで自由の身・・・よかった・・・
天馬くんには悪い事したけど
これでやっと安心できる」
美琴は夜空を見上げながら、泣いていた。
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