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それから数日間。美琴のもとに毎日かかっていた六車からの電話連絡はパタリと止んでいた。
美琴は、まるでいままで悪い夢でも見ていたような、悪夢にうなされていたような、 そんな感覚だった。
「これでやっと安心して眠れるんだ・・・本当によかった・・・」
「えっと・・鍵・・鍵・・あった!」
美琴が自宅のドアを開けると同時に
いきなり背後から何者かに腕を掴まれ部屋に押し込まれた。
「きゃあ!だ、誰?」
「騒ぐな!騒ぐと殺す!」
背後から聞こえるそいつの声は男の声だった。
「殺すって・・・あなた誰ですか?」
「俺だよ!六車だよ!」六車。
その名前をようやく忘れようとしていた美琴に
辛い過去を再び思いださせた。
「六車?何であなたが?」
「何がどうなってるのか分からないって感じだな美琴ちゃん!」
「あ、当たり前よ!だってあなたとの関係はもう終わったはずでしょ?」
その通りだ。六車から「この電話をもって終了だ」と言われた瞬間から
六車との関係は終わっているのだ。
美琴はなぜそんな六車がわざわざやってきたのか理解できなかった。
「まあ、いいじゃねぇか!少し話をしょうぜ!
あと暗いのは話しづらいからよ、電気つけてくれ」
美琴は六車に言われるがままに部屋の明かりをつけた。
美琴は部屋の明かりをつけると同時に背後に向き直り、六車と初めて対面する。
「え?なに?あなたのその格好・・・」
「あぁ?これか?結構似合ってんだろ?」
六車は女装をしていた。ジャンパースカートを着ており
頭にはウイッグも着用しているようだった。
「何で、女装なんか・・・」
「どうだ?結構イケてんだろ?」
美琴は目の前の状況を飲み込めずにいた。
「まぁ、待て!もう女装する必要ねぇからさ!着替えるわ!」
六車は女装から普段着に着替えると
そこには見知った顔がいた。
「あなたは・・・・」
そこにいたのは鳥丸崇矢だった。
「もしかしてあなたが六車だったの?」
「そういう事だ!」
「なんで!だって・・・あなた天馬くんの友人だって・・・どういう事?」
美琴は頭が混乱していた。
天馬に恐怖を与えろと指示をしていた人物が
実は天馬の友人である崇矢だったからだ。
「まぁ、聞きたい事は山ほどあるだろうが、順を追って説明してやるよ」
崇矢は美琴に今までの事を事細かに説明する。
「まずお前が今まで電話で会話していた六車ってのは俺の事だ
六車が偽名ってのはバカなお前でも薄々気づいてたろ?」
「え、えぇ・・・」
「俺はある計画を実行するために
俺の言いなりになる都合のいい女を探していたんだ!」
「それが私って事?」
「ああ、そうだ!たまたま親父狩りの現場をたまたま目撃してなぁ!
その中の一人が美琴ちゃん!お前だったって訳だ!」
美琴は崇矢の話を黙って聞いている。
「まぁ、安心しろよ!お前らが親父狩りをしたサラリーマンには
俺が代わりに金を返しといてやったからよ!」
崇矢の発言に美琴は驚いたように目を見開く。
「なら、あのサラリーマンが私たちを警察に通報するなんてあり得なかったって事?」
そんな美琴の問いに崇矢は高笑いする。
「勘違いするなよ?俺が金をサラリーマンに立て替えたとしても
お前が親父狩りに加担したって事実は消えねぇんだぞ?」
「わかってるわ・・・そんな事・・・」
「どうだか・・・今のお前の口ぶりから察するに
警察に捕まる心配がないなら、こんな事に加担する必要なんか無かったじゃないのよ!
って言ってるように聞こえるけどな?」
崇矢の指摘に言い返すことのできない美琴。
実際に崇矢の指摘は的を射ていたからだ。
実際の話、美琴は警察に捕まる事を危惧するあまりに崇矢の言う通りに命令を遂行していた。
しかし、警察に通報される事などありえなかったと事前に知っていれば
崇矢の命令など、最初っから聞いていなかった。
「図星か?ふはははは」
言い返せない美琴を嘲笑の的にするかのように、崇矢は美琴を見下し高笑いする。
「まぁ、いい・・・」
「私にやらせた理由はわかった!けど、天馬くんを狙わせたのはどういった理由で?
あんな財布まで用意して、何が目的なの?」
美琴は思い切って一番の疑問をぶつけてみた。
そもそも崇矢は天馬の友人のはずだ。自らがそう言っていた。
そんな天馬に恐怖を与えろと指示を出したかと思えば
次は身を挺して天馬を庇ったりと、崇矢の行動に不可解な点が多かった。
「質問が多い奴だなぁ、順を追って説明してやるって言っただろ?ったく」
崇矢は首を回し、コキッコキッと骨を鳴らしながら、気だるそうに口を開く。
「まず、あの財布は、事前に天馬から拝借していた財布だ!
今回の計画成功のためには、財布は最も重要なアイテムだったからな」
「重要な?どういう意味?」
「落とした財布を届けに自宅へ向かう!
これが一番、天馬に疑われずにお前を引き合わせることができる
最善の方法だったからさ!」
「じゃ、じゃあ、なぜ私に天馬くんを?何のために天馬くんに恐怖を与えろと指示をしたの?」
美琴の問いに崇矢は一呼吸おいて
「俺が、天馬の事を愛しているからだ!狂おしいほどに愛しているからだ!」
「え・・・愛?どういう事?」
「俺は昔から天馬の事が好きだったんだ!愛していた!友達としてじゃなく、性の対象として天馬の事を見ていた!
そして、天馬とひとつになれる日をずっと待ち望んでいたんだ!今までずっとな・・・」崇
矢の発言に美琴はさらなる疑問が浮かび上がった。
「ならなんで私に天馬くんを襲わせるような真似をさせたの?好きなら何で?矛盾してるわよ!」
天馬の事を愛していると言っておきながら
恐怖を与えろと指示を出すという崇矢の矛盾を美琴は指摘した。
「それは俺が男だからだよ・・・」
「男だから?どういう意味?」
崇矢は真剣な眼差しで語った。
同棲恋愛は男女のようにうまくいかない。想いを伝えたところで、拒絶されてしまうかもしれない。
それどころか、ずっと大切にしてきた天馬との友情関係すら跡形もなく崩れ去るかもしれない。
天馬と一生会えなくなってしまうかもしれない。崇矢にとって、崇矢はそれが一番怖かったのだ。
そのことが脳裏にちらつき、告白したくても出来ずに苦しみ、同時に悩んでいた。
しかし、崇矢はどうしても天馬の事を諦めることが出来なかった。
何度も諦めようと思ったし、男が好きな自分は普通ではないのだろうか?と自分を殺したくなるほどに悩んでいた崇矢。
しかし、どうしても想いを伝えたい崇矢はあるひとつの方法を思いついた。
それは、迫り来るストーカーからの魔の手から颯爽と現れて助け出すヒーローを演じる事により、
吊り橋効果で天馬の意識の中に入り込み、それを利用して天馬に想いを告げる!という方法だった。
「その為に私を利用して、恐怖を与えさせたって事?」
「そういう事だ!」
更に崇矢は続ける。
「そしてわざとお前に刺され、天魔を身を挺して庇う事で、俺は命の恩人なんだと
大切な人間なんだと天馬の意識に刷り込ませる事に成功した」
「あれ・・わざとだったの?」
「難しかったよ。後遺症が残らねぇように浅い傷にするのは!
ぶっつけ本番でもやろうと思えば出来るもんだなぁ!ふはははは」
吊り橋効果とナイチンゲール効果を利用したかったのだ。
美琴はそんな崇矢の狡猾かつ綿密な計画驚愕した。
自分は怒りに任せて刃を振るってしまい、崇矢を刺しててしまったのだとばかり思っていたが
それも実は崇矢の計画の内、崇矢の掌の上で踊らされていただけだったのだと気付かされたからだ。
「そして天馬はそんな俺の想いを受け入れてくれたんだ!俺を好きだと!そう言ってくれた!」
「天馬くんが?」
「俺は天馬と繋がれたんだよ!交われたんだよ!」
「交われたってもしかして・・・」
「ああ、SEXしたよ!はぁ・・はぁ・・やっと!」
美琴は崇矢の異常さに吐き気を催すほどの気持ち悪さを感じていた。
崇矢は天馬とのSEXを思い出したからなのか、今のこの状況下で、股間が肥大化していたからだ。
「まるで天にも登るような感覚だった!俺がひと突きするたびに
天馬が可愛く喘ぐんだ!あぁ〜たまらない!可愛くてたまらない!愛おしくてたまらない!
俺はこの瞬間のために生まれてきたんだとさえ思ったよ!
思い出しただけでイってしまいそうになるよ・・」
(こいつ・・こんな状況なのに・・
勃ってる・・異常すぎる・・・)
美琴は戻そうとしてしまうほどの気持ち悪さを感じていた。
「俺は今・・・人生で最高の気分だよ!」