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ℝ𝕒𝕟
269
こぬぬー(響)
120
「で?」
続く。
「どうすんの?」
視線が外れない。
逃げ場はない。
遥は息を整えようとする。うまく入らないまま、それでも口を開く。
「……余計なこと、するからだと思う」
途切れずに出す。
一瞬だけ間ができる。
「余計なこと?」
すぐに拾われる。
「例えば?」
詰められる。
喉が引っかかる。それでも止めない。
「聞かれてないのに動いたり、勝手に触ったり……順番、乱したり」
言いながら、視線が下に落ちる。
「あと」
続ける。
「言われた通りにやってるつもりでも、遅れてたり、ズレてたりして」
言葉が重くなる。
「そのせいで、止まるから」
そこまで出す。
空気が少しだけ止まる。
「へえ」
誰かが言う。
「じゃあさ」
すぐに重なる。
「今のも“ズレてる”って自覚あんの?」
顔を上げさせられる。
「今、誰もそこ聞いてないよな」
距離が詰まる。
「勝手に話広げてるの、お前だよな」
言葉が刺さる。
「それが余計なんだよ」
頬に衝撃が来る。横から叩かれる。さっきより短く、速い。
体が揺れる。
「なあ」
胸ぐらを掴まれる。
「“余計なことすんな”って意味、分かってる?」
顔を近づけられる。
「今のがそれだろ」
逃げ場がない。
「……うん」
出す。
「軽い」
即座に返る。
腹に蹴りが入る。鈍い音が体の中で響く。息が潰れる。
「返事で済ませんなって言ってんの」
肩を掴まれて引き起こされる。
「直せんのかって聞いてんだよ」
視線が刺さる。
遥は一瞬だけ言葉を探す。逃げ道はない。
「……指示、出るまで動かない」
出す。
「呼ばれるまで触らない」
続ける。
「順番も、確認してからやる」
息が浅いまま、繋げる。
「そうすれば、止まらないから」
言い切る。
間ができる。
その一瞬で、周りの顔が少しだけ歪む。
「は?」
低く落ちる。
「それで済むと思ってんの?」
腹にもう一発入る。さっきより深い。体が折れる。
「今までそれやってきて、この状態だろ」
背中を押される。机にぶつかる。
「意味ねえじゃん」
笑いが混じる。
「じゃあ何すればいいんだよ」
誰かが言う。
答えは求められていない形で。
「お前が決めろよ」
また戻される。
顔を上げさせられる。
「どうすれば邪魔にならねえの?」
詰められる。
遥は息を吸う。喉が痛む。
「……目立たないようにする」
出す。
「必要なときだけ動く」
続ける。
「それ以外は、関わらない」
言葉が揃う。
空気が少しだけ止まる。
そのあと、笑いが漏れる。
「もうそれやってるだろ」
誰かが言う。
「なのにこれだろ」
重なる。
「足りてねえんだよ」
背中を蹴られる。前に崩れる。床に手をつく。
さっき踏まれた場所にまた力がかかる。
「なあ」
上から声が落ちる。
「どこが足りてねえか、自分で言えよ」
逃げ道がない。
考える時間は与えられているようで、実際には詰められている。
「……反応」
出る。
「遅いし、薄い」
続ける。
「言われたときに、ちゃんと返してない」
息が乱れる。
「それで、余計にイラつかせてる」
言い切る。
間。
そのあと、少しだけ空気が緩む。
「やっと出たな」
誰かが言う。
「最初からそれ言えよ」
笑いが戻る。
だが、止まらない。
「で?」
また続く。
「今からどうすんの?」
答えは終わらない形で求められる。
「……全部、すぐ返す」
出す。
「呼ばれたらすぐ行く」
続ける。
「反応、遅らせない」
言葉を繋げる。
「余計なことはしない」
最後に置く。
一瞬、静かになる。
そのあと、肩を押される。
「じゃあ今やれよ」
低く言われる。
「試すから」
笑いが混じる。
条件がその場で作られる。
「呼ぶから」
「一回でも遅れたら分かってるよな」
周りが囲む。
距離が詰まる。
逃げ場はない。
「ほら」
誰かが指を鳴らす。
「来いよ」
即座に動く。体がまだ重い。それでも止まらないように動く。
「遅い」
すぐに落ちる。
肩を掴まれる。引き寄せられる。
「今のが遅いって言ってんの」
腹に軽く入る。だがさっきより痛みが通る。
「もう一回」
離される。
「来い」
呼ばれる。
動く。
「まだ遅い」
また言われる。
修正する間もなく繰り返される。
基準が固定されないまま、回数だけが増える。
「なあ」
誰かが言う。
「結局さ」
笑い混じりに。
「何やってもダメなんじゃね?」
空気が少しだけ軽くなる。
だが、その軽さがそのまま締めになる。
「そういうとこだろ」
背中を押される。
遥はよろけて、また体勢を崩す。
誰も支えない。
そのまま、次の話に移る。
声の向きが変わる。
終わったことにされる。
だが終わっていない。
体に残った痛みと、さっき決めさせられた条件だけが、そのまま残る。
答えは出した瞬間に使われて、すぐに否定される。
合っているかどうかは関係なく、続けるための材料にされて、外れる場所は最初から用意されている。
逃げる形はなく、どこに置いても同じ位置に戻される。
コメント
1件
もう読んじゃったよ……。逃げ場のない閉塞感と、どんな言葉も材料にされる虚しさが胸に刺さった。遥くんの必死な声が途切れ途切れなのに、ちゃんと届くから読んでてこっちまで苦しい。でも、少しずつ自分の言葉で答えようとする姿に応援したくなる。早く続きが読みたい!!次が待ちきれないよ😭💦