第8話:交わる影
配信の後
夜更け、配信が終わりスタジオの照明が落ちる。
残るのはモニターの光だけだった。
まひろは水色のパジャマに着替え、椅子にちょこんと座りながら大きな瞳をこすっていた。
「ねぇミウおねえちゃん……ぼく、ただ“ほんとかな”って思っただけなのに、みんなすぐ信じちゃうんだね」
ミウは淡いピンクのスウェットに身を包み、髪をゆるく結んでいる。マグカップを手に、ふんわり笑みを浮かべた。
「え〜♡ まひろの“ほんとかな”は、世界を動かす魔法みたいなんだよ」
侵入
突然、モニターにノイズが走った。
画面に映ったのは、フードにキャップを深くかぶった**Z(ゼイド)**の姿。
電子音混じりの声が響く。
「やぁ……“はごろもまごころ”。今日もよく稼いだな」
まひろは目を丸くする。
「……だれ?」
ミウはマグカップを机に置き、微笑を崩さずに問い返した。
「あなた、私たちの“映像”を使ってる人だよね?」
Zは唇を歪め、指先を動かした。モニターには配信の切り抜きと、広告再生の収益画面、そしてフェイクニュースの拡散グラフが次々に現れる。
「お前たちの“声”が火種。俺が“証拠”を作る。
そのおかげで、広告収入も右肩上がりだろ?」
利害の一致
まひろは首をかしげて無垢な声を出した。
「ぼくたち、お金のことなんて……」
ミウがまひろの肩を軽く抱き、笑顔で遮った。
「え〜♡ ね、Zさん。私たちのチャンネルが“きっかけ”で、あなたのフェイクが本物に見えるんだよね」
Zは頷き、声を低めた。
「そうだ。俺は秩序を壊す。お前たちは広告と再生数で潤う。
利害が一致してる。これ以上のパートナーはいない」
秘密の同盟
モニターに「はごろも党」のロゴと収益グラフが重なり合って浮かび上がる。
Zが指でなぞりながら言った。
「広告主も騙されてるさ。“健全な子ども番組”に金を払ってるつもりで、実際は世界をかき混ぜる燃料になってる」
ミウはふんわり笑い、まひろの髪を撫でた。
「え〜♡ だったら次は……世界そのものを考えてみよっか」
まひろは無邪気にうなずいた。
「うん! ぼく、“ほんとかな”って思うよ」
その瞳には、疑うことを知らない光が宿っていた。
> 無垢とふんわり、そして冷徹な影が利害で結びついたとき、“はごろもまごころ”はついに世界を揺るがす共犯者となった。
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