テラーノベル
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白の大型SUV車は、みなとみらい周辺を走り、光に彩られた景色に私は目を細める。
夏樹さんが、夜景を一望できるパーキングに車を停車させると、平日のせいなのか、周辺に駐車してある車も疎らだった。
互いにシートベルトを外すと、どことなく気まずいムードが漂い、私は頭の中で話題を探す。
「車……変えたんですね……」
ステアリングの中央に施されている、Cを模ったチヨダ自動車のエンブレムに視線を伝わせながら、独りごちるように呟いた私。
前に会った時の夏樹さんの愛車は、やはりチヨダの車で、黒のセダンだった記憶がある。
「ああ。年に二回、職場にチヨダ自動車の営業が来るんだよ。黒のセダンも好きだったが、そろそろ買い替え時かと思って、流行りに乗って昨年買ったんだけどな」
またも会話が途切れ、運転席の夏樹さんと助手席の私の間を、見えない壁に阻まれる。
「それよりも……」
ひとしきり続いていた静けさを、夏樹さんの声音に破られた。
「……俺と再会した事…………後悔してるだろ」
遠くにぼんやりと浮かび上がるベイブリッジを見やっていた夏樹さんが、徐に口を開きながら、私に眼差しを突いてくる。
「後悔というよりも……奥様に申し訳ないっていうか……」
ほんの少しの罪悪感を、言葉の隅に滲ませる。
「…………なるほどな」
夏樹さんが、フロントガラス越しに映る夜景に視線を配ると、フゥッとため息を漏らす。
「俺は、由恵を見掛けた時…………嬉しかったんだけどな。だから……」
彼が私に眼差しを移し、唇に少しの笑みを乗せる。
「……声を掛けた」
夏樹さんの余裕綽々な口調に、私の中で沸々と苛立ちが込み上げてくる。
八年前、夏樹さんと一度だけ男女の関係になって以降、連絡が途絶えたのに、何を今さら『嬉しかった』なんて言うのか分からない。
「…………」
私は、夏樹さんから顔を背けると、うまく言葉にできず、沈黙を通した。
「…………何が……『嬉しかった』よ……」
「…………え?」
怒りにも似た感情を抑えながら、声を掠れさせながら吐き捨てるのに対し、夏樹さんが唇を薄らと開き、私の表情を伺ってきた。
「…………ただ、ヤリたかったくせに。『君を見掛けた時、嬉しかったんだけどな』なんて言っちゃって……意味が分からない! 八年前の私は、恋人がいたけど…………」
俯きながら息を長く吐き出すと、顔を上げ、彼を睨んだ。
「それでも私は…………あなたに惹かれてたんだからっ!!」
コメント
1件
第9話読み終わった! うわ、この車内の空気感……めっちゃリアルで胸が苦しくなったわ。 夏樹さんの「後悔してるだろ」って切り出し方、ずるいよな。 でも由恵さんの「ただヤリたかったくせに」からの「それでも私はあなたに惹かれてたんだから」の流れ、ガチで刺さった。 八年前の想いを封印してたのに、再会して溢れ出しちゃった感じ、すごくわかる。 続きが気になる……!
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