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瑞月のマンションに着いた。空いていた来客用の駐車場に車を停めて、俺は助手席に目をやった。瑞月は目を覚ましそうにない。それどころか気持ちよさそうに眠っている。
起こすのはかわいそうだなーー。
俺は仕方がないと諦めた。手伝ってくれる人がいない今、なんとか瑞月を車から降ろし、腕に抱きかかえた。荷物は後回しだ。
瑞月は小柄だが、酔い潰れて寝てしまっているから、思った以上に抱えにくくて重たい。やっぱりうちのマンションに決めて正解だったと思いながら、エレベーターに乗り込んだ。
部屋に入り、もうひと息と自らを励ましながら、瑞月を寝室まで運んだ。ようやくベッドにたどり着き、自分にでき得る限りの優しさで、その上にそっと彼女を横たえた。やれやれと思いながら、彼女の体に毛布を掛ける。彼女が目覚めた時、ここはどこかと驚かないように、部屋の電気を落とす前にベッドサイドの小さな灯りをつけた。
「まったく困ったやつだ」
ジャケットを脱ぎながら、ぼそりとぼやいた時だ。
「ん……」
瑞月が寝返りを打った。
ようやく目を覚ますのだろうかと、俺は彼女の様子をうかがった。
「起きそうにないな」
俺は瑞月の寝顔に向かってつぶやく。
「お前がこんな状態になったのは、例の彼氏のせいなのか」
俺はベッドの端に腰かけて、瑞月の頬に指先でそっと触れた。
その時、突然瑞月の目がぱちりと開いた。
慌てた俺は手を引いて、彼女の顔を覗き込む。
「大丈夫か」
しかし、瑞月は答えなかった。むくりと体を起こしたかと思うと、いきなり俺の首に腕を絡めた。そのまま体重をかけて、俺をぐいっと引き倒した。
「おいっ、瑞月っ」
彼女の体の上に倒れ込んでしまい、俺は焦った。胸の下に感じる柔らかさにどきどきする。早く彼女から離れなければと、俺は腕を突っ張って起き上がろうとした。
しかし瑞月の力は思いのほか強く、彼女は俺にしがみつきながら言った。
「キスして」
「っ……」
瑞月は絶対に勘違いしている。
「俺はお前の彼氏じゃないぞ」
しかし瑞月に俺の言葉が聞こえている様子はなかった。彼女はその細い腕にますます力を込めて俺の首を自分の方へと引き寄せ、そしてキスをした。
もちろん俺は抵抗した。瑞月は相当酔っている。そんな彼女から、しかもこんな状況で、キスを受けるわけにはいかないと理性を保とうとした。けれど彼女のキスは濃厚だった。そのせいで体の芯が熱くなり、あっという間に俺の理性は吹き飛んでしまった。
こんなキス、いつの間に覚えたんだ――。
自分がこんなにも意志の弱い男だったなんてと呆れながらも、俺は服を脱ぐ手を休めなかった。ためらうことなく瑞月の服にも手をかける。
さすがに抵抗するだろうと思っていた。しかし瑞月は自ら服を脱ぎ捨てて、その裸身を俺の前に曝け出した。
あの瑞月がこんなことをするようになるなんてと、動揺した。しかし、ずっと好きだった幼馴染の女の部分を目の当たりにして、自分の想いをぶつけたい衝動に俺は支配されてしまった。美しい肢体、可愛らしい息遣い、俺の体に絡みつく様、すべてが愛しすぎて、自分が暴走していることが分かっていながら、それを止められなかった。
その一方で、彼女にこういうことを最初に教えたのが別の男だと思ったら、歯ぎしりしたくなるほど悔しかった。
だから。
とことん優しく愛したいと思いながらも、彼女の体に俺の愛し方を刻み込んでやりたいと思った。凛が言うように、もしも本当に恋人と破局したのだとしたら、その男の痕跡などすべて消えてなくなるくらいに激しく滅茶苦茶に抱きたいという、狂暴な思いを抱く。
酔いから醒めた瑞月が正気に戻った時、このまま俺を受け入れてくれるだろうか。それとも、俺を嫌悪し拒絶するようになってしまうだろうか。彼女を抱くことは、俺にとって極めて危険な、一種の賭けのようなものだった。
叶うのであれば、この気持ちを受け入れてほしいと強く願いながら、俺は瑞月を愛した。柔らかな肌を撫で、口づけるたびに、彼女は可愛らしい声で素直な反応を見せる。俺の頭の中は、彼女と繋がりたいという願望でいっぱいだった。
サイドテーブルに手を伸ばし、俺は引き出しの中を探る。そこから小さな包みを取り出した。どういう状況下だったか細かくは覚えていないが、だいぶ前に、お守りだと言って凛が俺にくれた物だ。
「瑞月、ごめん。だけど俺はもう、お前がほしくて仕方がないんだ」
瑞月の体を愛おしみながら、まだ夢うつつの中にいる彼女に俺は小声で謝った。もう、限界だった。彼女と自分の体を深く繋いだ瞬間、喘ぎ声と共に瑞月の唇からこぼれたのは、俺の知らない男の名前だった。
「将司さん……」
俺を俺だと認識していないだろうということは、分かっていた。けれど、そのひと言に俺の嫉妬心は煽られた。瑞月の心も体もすべて、俺という存在でいっぱいにしたいとの強い想いが、ほとばしるように沸き起こる。昂り、荒々しい気持ちに勝てないまま、俺は貪るように瑞月の舌を吸い、彼女をますます激しく、そして深く衝き上げた。