テラーノベル
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放課後。
同じ教室。
同じ配置。
でも、もう説明はいらない空気になっている。
「最後な」
軽い声。
終わりみたいに言う。
でも、それが終わらないことは分かっている。
「これ運べ」
机を指される。
それだけ。
簡単な指示。
頷く。
持ち上げる。
少し重い。
でも、できないわけじゃない。
運ぶ。
数歩。
「遅え」
すぐ来る。
足が止まる。
「……え」
反射で出る。
「聞こえてる?」
低い声。
「早くやれよ」
急ぐ。
少し速度を上げる。
置く。
「雑」
即座に来る。
笑い。
「ちゃんとやれって言ってんだろ」
机を指される。
「今のなし」
一言。
「最初から」
やり直し。
戻る。
持つ。
さっきより慎重に。
ゆっくり。
安定させて運ぶ。
「遅えよ」
また来る。
「なにやってんの?」
笑い。
止まる。
どうすればいいか分からない。
「早くしろって」
急かされる。
速度を上げる。
「ほら雑」
すぐ来る。
「適当にやんな」
また否定。
机を置く。
手が離れる。
その瞬間。
「はい、なし」
軽く言われる。
頭が一瞬止まる。
「……なんで」
口に出る。
その瞬間、空気が変わる。
「なんで?」
低く繰り返される。
距離が詰まる。
「聞いてんの?」
逃げ場がない。
「違う、そうじゃなくて」
言い直す。
遅い。
「言い訳すんな」
腹に一発。
息が抜ける。
体が折れる。
「最初からって言ってんだろ」
短く。
命令。
戻る。
持つ。
手が少し震える。
分かっている。
どうやっても、終わらない。
でも、やるしかない。
「じゃあさ」
別の声。
軽い調子。
「選ばせてやるよ」
笑い。
「ゆっくり丁寧にやるか、一瞬で完璧にやるか」
間。
「どっち?」
選択。
逃げられない。
考える。
でも、さっきまでの流れが残っている。
どっちも違う。
分かっている。
「……丁寧に」
口に出る。
その瞬間。
「遅え」
即答。
笑い。
「え?」
思わず出る。
「じゃあ速くやれよ」
被せられる。
やる。
今度は速く。
持ち上げて、運ぶ。
置く。
「雑」
即座に来る。
笑い。
「何それ」
誰かが言う。
「選んだ意味なくね?」
周りが笑う。
頭の中で、何かが崩れる。
選んでも意味がない。
やっても意味がない。
「……じゃあどうすればいいの」
言ってしまう。
その瞬間。
完全に空気が止まる。
「は?」
低い声。
近い。
「それ、まだ聞く?」
逃げ場がない。
「だって」
言いかける。
「だって何」
遮られる。
「自分で考えろって言ってんだろ」
でも、考えても意味がない。
さっきから、全部違う。
「……分からない」
出る。
それしかない。
その瞬間。
腹に、連続で入る。
一発。
間を置かず、もう一発。
さらにもう一発。
息が完全に止まる。
声が出ない。
視界が揺れる。
膝が落ちそうになる。
でも、
「倒れんなよ」
低い声。
腕を掴まれる。
無理やり立たされる。
「逃げんな」
短く。
言われる。
逃げていない。
でも、そういうことにされる。
「ほら」
誰かが言う。
「なんでできないの?」
同じ問い。
でも、もう違う。
答えが存在しないことを、体が分かっている。
何を言っても違う。
何をやっても違う。
選んでも意味がない。
やり直しても意味がない。
「……」
黙る。
言葉が出ない。
出そうとしても、止まる。
「また黙った」
すぐ来る。
「ほんと使えねえな」
笑い。
軽い。
でも、全部を決める一言。
遥は立っている。
机の前で。
何も終わっていないまま。
何もできないまま。
頭の中で、はっきりする。
ここでは、選ぶ意味がない。
考える意味もない。
正しいことも存在しない。
ただ、“間違いであること”だけが先に決まっている。
その中で、動かされるだけ。
くつしたのあな
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コメント
1件
読了しました……これは本当に、胸が苦しくなりました。 何をやっても「違う」って否定される。選ばせておいて、どっちを選んでもまた否定される。正解が最初から存在しない空間に閉じ込められた遥の感覚が、地の文の短いリズムと相まってすごく生々しくて。逃げ場のなさがじわじわ迫ってくる感じ、めちゃくちゃリアルでした。 「答えが存在しないことを、体が分かっている」——この一文、すごく重かったです。作者さん、この閉塞感をこんなに丁寧に描けるの、本当にすごい……。続きが気になります、遥はどうなってしまうんだろう。