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ぬいぬい
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慰麗梳(イリス)
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読了しました……このエピソード、すごく胸が詰まりました。特に「理由が逆転する」って一文、ぐさりと来ました。できなくて責められるんじゃなくて、そう扱われるからできなくなる——この循環の描き方が、もう日常の空気そのもので。ノートのページも、靴も、グループの書類も、どれも小さなことなのに全部繋がって逃げ場をなくしていく感じ、息が苦しくなりました。遥の「……うん」「……ごめん」が、何も言えなくなる様子が痛いほど伝わってきます。ruruhaさん、この居心地の悪さを日常の温度で書けるの、本当にすごいです。続き、遥がどうなっていくのか気になります……
放課後。
教室は半分くらい人が残っている。
いつもと同じ。
でも、同じじゃない。
机に座る。
ノートを開く。
ページが一枚、足りない。
昨日やったところだけ、綺麗に抜けている。
手が止まる。
「どうしたの?」
横から声。
軽い。
「……ページ、なくて」
言う。
「また?」
すぐ返る。
笑いが混じる。
「ちゃんと管理しろよ」
別の声。
「困るんだけど」
言われる。
“困る”
その言葉が、少しだけ引っかかる。
でも、何も言えない。
言えば、また何かになる。
「ほら」
ノートを指される。
「ここ」
ページの流れが途切れている。
「これじゃ分かんないじゃん」
当然みたいに言われる。
自分が悪い、みたいに。
「……ごめん」
口に出る。
すぐに。
それが一番早い。
笑いが軽く広がる。
それで終わる。
一つは。
移動。
体育館。
グループで動く。
自分の担当の紙を出す。
内容が違う。
昨日書いたものじゃない。
明らかに。
「え?」
思わず声が出る。
「何それ」
周りが見る。
「それ、お前のやつ?」
聞かれる。
「違う、こんなんじゃなくて」
言う。
でも、
「いや出したのそれじゃん」
即座に返る。
「昨日見たし」
誰かが言う。
笑い。
「適当すぎ」
軽く言われる。
「やる気ないならやめろよ」
その一言で、流れが決まる。
否定しようとする。
でも、止まる。
止まった瞬間、
「ほら」
指をさされる。
「言い訳考えてる」
笑い。
何も言っていないのに。
もう、そういう扱いになる。
「……違う」
小さく言う。
「何が?」
すぐ返る。
詰まる。
何を言っても、同じになる。
分かっている。
「……ごめん」
また出る。
それが一番、早い。
教室に戻る。
靴がない。
探す。
見つからない。
「どうしたの?」
また同じ声。
軽い。
「……靴、なくて」
言う。
「また?」
笑い。
「どんだけ無くすの?」
軽く言われる。
周りも笑う。
“また”
繋がる。
全部。
最初からそうだったみたいに。
「ちゃんとしろよ」
当然みたいに言われる。
否定できない。
否定しても、同じになる。
分かっている。
「……うん」
短く返す。
「なあ」
呼ばれる。
囲まれる。
距離が近い。
「最近さ」
軽い声。
「ちょっとやばくね?」
何が、とは言わない。
でも、全部含まれている。
「大丈夫?」
続く。
“心配”の形。
でも、逃げ場はない。
「……大丈夫」
答える。
「ほんと?」
すぐ返る。
「なんかさ」
少し間。
「周りに迷惑かけてるよ?」
言われる。
静かに。
でも、強い。
「ノートもそうだし」
「グループのやつもそうだし」
「靴もそうだし」
並べられる。
全部、自分の“ミス”として。
繋がる。
一つの線になる。
「ちゃんとしよ?」
優しい声。
でも、断れない。
「……どうすればいいの」
聞いてしまう。
その瞬間、少しだけ笑いが漏れる。
「それだよ」
言われる。
「自分で考えろって」
でも、考えても意味がない。
さっきまでで分かっている。
何を選んでも、同じになる。
「ほら」
誰かが言う。
「また空気重くなった」
周りが反応する。
「あーあ」
ため息。
成立する。
原因になる。
何もしていないのに。
そのあとも、続く。
何かが無くなる。
何かが変わる。
何かが“自分のせい”になる。
一つ一つは小さい。
でも、全部繋がる。
逃げ場がない。
気づく。
遅れて。
これは、誰か一人じゃない。
全体で回っている。
誰がやっているかは、もう意味がない。
止める場所もない。
教師は見る。
でも、見ない。
周りは笑う。
でも、普通に戻る。
全部が、日常の中にある。
「なあ」
最後に声。
軽い。
「なんでそんなことになるの?」
同じ問い。
でも、もう違う。
答えは出ない。
出せない。
「……分からない」
口に出る。
それしかない。
少しの沈黙。
そのあと、
「だよな」
軽く返る。
笑い。
「だからだよ」
その一言で、全部が終わる。
理由が、逆転する。
“できないからこうなる”んじゃない。
“こう扱われるから、できなくなる”
でも、それは言葉にならない。
言ったところで、意味がない。
遥は座る。
何も変わっていない教室で。
いつも通りの空気の中で。
ただ一つだけ、はっきりしている。
ここでは、何をしても同じになる。
何もしなくても、同じになる。
理由は後でいい。
順番も関係ない。
最初から、“そういうもの”として扱われている。
それだけが、ずっと続いている。