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#一次創作
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#短編
放課後。
教室にはオレンジ色の光が差し込んでいる。
相談者は机に肘をつきながら、シャーペンを指で回していた。
「俺、好きだったんです」
遥は顔を上げる。
「何が」
「ゲームとか、絵とか、音楽とか」
少し間。
「前は時間忘れるくらいだったんですけど」
視線が落ちる。
「最近、全然楽しくない」
教室が静まる。
「やめたいわけじゃないんです。嫌いになったわけでもない。だから一応やるんですけど」
苦笑する。
「何も感じない」
沈黙。
「つまらない?」
遥が聞く。
相談者は少し考える。
「つまらないっていうか」
一拍。
「前ほどじゃない。昔はもっと夢中になれた気がする」
窓の外から運動部の声が聞こえる。
「それで」
相談者は続ける。
「好きなことまで楽しめなくなったら、俺って何なんだろうって」
教室が静まる。
「他にやりたいこともないし、好きなものも減っていくし。何か」
少し笑う。
「空っぽになってく感じがする」
遥はしばらく黙っていた。
それから聞く。
「最近、楽しんでることは」
相談者は首を横に振る。
「思いつかないです。何してても微妙。楽しくないわけじゃないけど」
一拍。
「心から楽しい感じがしない」
沈黙。
遥は机に指を置く。
「好きなことが消えたんじゃなくて」
少し間。
「楽しむ余裕が減ってるのかもしれない」
相談者は顔を上げる。
「余裕」
「好きなことって」
遥は窓の外を見る。
「元気な時と疲れてる時で違う」
教室が静まる。
「疲れてると面白いものも面白く感じにくい。好きなものも入ってこない」
一拍。
「そういうことはある」
相談者は黙る。
「でも」
小さく言う。
「結構長いです。何か月も、もしかしたら一年くらい」
教室が静まる。
遥は少し考える。
「昔の楽しさを探してないか」
相談者は止まる。
「え」
「前は楽しかった。前は夢中だった」
一拍。
「その頃と比べ続けると」
少し間。
「今は大体負ける」
沈黙。
相談者は何も言えない。
思い当たることがあった。
遥は続ける。
「同じゲームでも、同じ音楽でも、同じ趣味でも」
一拍。
「自分は同じじゃない」
教室が静まる。
「高校になったら変わるし、悩みも増えるし、考えることも増える」
少し間。
「感じ方も変わる」
相談者は机を見る。
「じゃあ、戻れないんですか」
遥は少し考える。
「戻る必要あるか」
短く。
相談者は黙る。
遥は続ける。
「前と同じ楽しさじゃなくてもいい。前より小さくてもいい」
一拍。
「今の自分なりの楽しみ方もある」
教室が静かになる。
相談者は長く息を吐いた。
「俺」
少し笑う。
「昔の自分に負けてる気分だったのかも」
遥は鞄を持つ。
「昔の自分は敵じゃない」
窓の外は少しずつ暗くなっていた。
好きなことが楽しめなくなると、自分まで失ったような気持ちになる。
でも、好きだったものが消えたとは限らない。
疲れや環境や時間の流れの中で、少し見えなくなっているだけなのかもしれない。
コメント
1件
読み終えました、第14話。 「好きなことまで楽しめなくなったら、俺って何なんだろう」——この感覚、すごく分かります。自分もたまに、好きな作品を読んでるはずなのに心が動かなくなって、焦ることがあって。 遥の「戻る必要あるか」「昔の自分は敵じゃない」って言葉、すごく優しくて、でもちゃんと核心をついてて泣きそうになりました。ruruhaさんの描くこの静かな諦めと再生の温度感、好きです。次も読みます🌙