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くつしたのあな
317
放課後。
空き教室。
カーテンは半分閉まっている。
光が弱い。
机の上に、金属の棒。
見た瞬間に分かる。
触れてはいけない温度。
でも、置かれている。
理由みたいに。
「来い」
呼ばれる。
近づく。
止まれない。
止まった瞬間に、腹に衝撃。
「止まんな」
短く。
それで十分。
「ゲームな」
軽い声。
いつもと同じ。
「簡単」
続く。
「言った通りやれ」
それだけ。
それだけで終わらないのは、分かっている。
「手出せ」
言われる。
一瞬、止まる。
その一瞬で、横から蹴られる。
バランスが崩れる。
「早く」
低い声。
出す。
震える。
でも、出す。
「触れ」
短い命令。
机の上。
金属。
分かっている。
触れたらどうなるか。
頭が拒否する。
体が止まる。
その瞬間、腹に一発。
深い。
息が抜ける。
「聞こえてる?」
低く。
逃げ場がない。
「……無理」
出る。
小さく。
でも、確かに。
その瞬間、空気が変わる。
「は?」
低い声。
距離が詰まる。
「無理って何」
目の前。
逃げられない。
首元を掴まれる。
押し込まれる。
机に。
顔が近づく。
熱が伝わる。
近い。
逃げられない。
「やれよ」
低く。
命令。
手を動かされる。
自分じゃない動き。
押される。
無理やり。
触れる。
一瞬。
でも、十分。
焼ける。
遅れて、痛み。
鋭い。
引こうとする。
でも、押さえられる。
「離すな」
低い声。
さらに押し付けられる。
熱が食い込む。
声が出る。
抑えきれない。
「うるせえ」
すぐ来る。
押さえつけられる。
数秒。
長い。
限界を超える。
その直前で、手が離れる。
反射で引く。
息が荒くなる。
手のひらがじんじんする。
感覚がまとまらない。
「ほら」
誰かが言う。
「できるじゃん」
笑い。
軽い。
でも、逃げ場はない。
「次」
すぐ来る。
間がない。
「もう一回」
同じ命令。
同じ場所。
さっきより、怖い。
体が拒否する。
でも、
「やれよ」
低く来る。
「……できない」
出る。
息が乱れたまま。
その瞬間、腹に連続で入る。
一発。
間を置かず、もう一発。
さらにもう一発。
息が完全に止まる。
膝が落ちる。
でも、
「立て」
無理やり引かれる。
逃がされない。
「選べよ」
別の声。
軽い。
「自分で触るか、押されるか」
選択。
でも、意味がない。
どっちも同じ。
分かっている。
「……自分で」
口に出る。
その方が短い気がする。
手を出す。
震える。
でも、止まらない。
止まれない。
触れる。
また焼ける。
痛みが重なる。
さっきより強い。
でも、離さない。
離したら、また来る。
分かっている。
「はい、離すな」
すぐ来る。
追加される。
条件が増える。
逃げ場が消える。
限界。
でも、
「ほら」
笑い。
「遅え」
また来る。
正解がない。
手が勝手に離れる。
反射。
体が拒否する。
その瞬間、首を掴まれる。
締まる。
一気に。
息が止まる。
「離すなって言ったよな?」
低い声。
力が強くなる。
視界が揺れる。
音が遠くなる。
限界の直前で、手が離れる。
空気が入る。
咳が出る。
止められる。
「ほんと使えねえな」
笑い。
軽く。
でも、全部を決める。
机の上。
まだ熱が残っている。
手のひらも、まだ熱い。
感覚がまとまらない。
でも、
「もう一回な」
声が来る。
終わらない。
遥は立っている。
逃げられない場所で。
選んでも意味がなくて、
やっても終わらなくて、
できなければ壊される中で。
ただ、次の命令を待たされる。
コメント
1件
ああ……。読んでる間、ずっと息が詰まるようだった。金属の熱さ、命令の短さ、逃げ場のなさ——描写が最小限だからこそ、痛みと恐怖が直接伝わってきた。特に「正解がない」って一文が重かった。何を選んでも、どうやっても終わらない。遥が立たされている場所の残酷さがひしひしと伝わる回だった。