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思春期真っ只中の栞ちゃんの印象はストレートに当たってると思う。 でも直也先生はしっかりと患者である栞ちゃんを見てるよ。 今はまだ栞ちゃんの不安、心配なことも先生に相談できる信頼関係を築いてほしいな
お墓参りに行ってたので、コメントチェック遅れました~💦💦💦(今から見るよ!)(≧▽≦)
見た目がチャラい精神科医な直也先生_φ(・ω・。)メモメモ 真面目過ぎるより人あたりよくて親しみ安そう。 高3という非常にデリケートな時期に抱える悩みはどんな事だろう?家庭の事なのかな。 続きが気になる〜♡´・ᴗ・`♡
どのくらいの時間が経ったのだろうか?
栞が目を覚ました時、窓の外はすでに薄暗くなっていた。
彼女が横たわっているのは、クリニックの処置室のようだ。室内には点滴スタンドや薬剤が並んだ棚がある。
廊下を挟んだ向かい側の部屋からは、スタッフの笑い声が聞こえてくる。
診察はすでに終わり、スタッフたちはリラックスした雰囲気の中、残務処理を進めているようだった。
栞はゆっくりと身体を起こした。
先ほどまでの症状は、すっかり消えていた。
ベッド脇に揃えられた靴を履き、カバンを手にして廊下へ出ると、隣の部屋から看護師が姿を現した。
「具合はいかがですか?」
「もう大丈夫です」
「それは良かったわ。では、先生と少しお話ししましょうか?」
20代後半と見られる看護師は、『第二診察室』と書かれた部屋のドアをノックし、栞を中へ促した。
「失礼します」
栞はか細い声で挨拶し、診察室へ入った。
診察室には、先ほど栞を助けてくれた医師がいた。
医師は白衣を身にまとい、机のパソコンに向かって何かを入力していた。
栞が部屋に入ると、医師はキーボードを打つ手を止め、椅子をクルッと90度回して彼女へ視線を向けた。
その時、栞は初めて医師の顔を見た。
歳は30代前半だろうか?
彫りの深い顔立ちに、長いウェーブのかかった髪を後ろでお団子のようにまとめている。
『マンバン』というヘアスタイルだ。
口の周りにはうっすらと髭があり、とてもワイルドだ。
真っ黒に日焼けした肌は、真っ白な白衣とは対照的で、さらに目を引く。
驚いたことに、彼の足元はビーチサンダルだった。
高校生の栞から見ても、今目の前にいる医師の風貌は、大人の男の色気に満ちていた。
(お医者様なのに、こんなにチャラくていいの?)
栞はそう思いながら、ぺこりとお辞儀をした。
すると、医師はにこやかに微笑んで言った。
「どうぞ座って下さい」
「失礼します」
「僕は精神科医の貝塚直也(かいづかなおや)です。よろしくね!」
直也が軽く会釈したので、栞ももう一度頭を下げた。
「で、気分はどうかな?」
直也は穏やかな口調で尋ねた。
「起きたらすっかり治ってました」
「それは良かった。じゃあ、これから軽く診察をさせてもらうね」
直也はそう告げると、再びパソコンへ向かい、マウスを操作し始めた。
おそらく栞用の新しい電子カルテを開いているのだろう。
彼はキーボードに手を置いたまま栞を見て、質問を始めた。
「今日みたいな発作は初めて?」
「いえ…….3回目です」
直也は栞の言葉を聞きながら、パソコンに記録を取り始めた。
「おっと、そうだ! その前に、保険証って今持ってる?」
「あります」
栞は鞄から保険証を取り出し、直也へ渡した。
「鈴木栞ちゃんだね。えーっと、今は高校…3年生かな?」
「そうです」
直也は、栞の名前と生年月日を入力したあと、こう言った。
「保険証は受付で使うから、ちょっと借りてもいい?」
「はい」
直也は、脇に控えていた看護師へ保険証を渡した。
「で、発作は3度目なんだね。前の2回も今日と同じ感じだった?」
「いえ、2回とももっと軽いものでした。深呼吸をしたら治る程度の…….」
「なるほど。つまり、今回が初めてひどくなったわけだ」
「はい」
「今、何かストレスを抱えてたりする?」
「………….」
「高校3年ってことは、そろそろ受験だよね?」
直也は栞の制服を見ながら尋ねた。
彼女が着ている制服がどこの高校のものか、直也はすぐに分かった。
チェックのプリーツスカートに紺色のブレザー。そして、スカートとお揃いのチェック柄のリボン。それは、この沿線にある進学校として名高い都立高校の制服だった。
「はい」
「受験のストレスはある?」
「いえ…….」
栞は目を伏し目がちに答えた。
直也は、栞が受験に関する悩みを抱えているのかもしれないと感じたが、深く追求することはせず、穏やかに話を続けた。
「じゃあ、受験以外の心配事や悩みはある?」
「…………」
「言いたくないなら無理にとは言わないよ。ただね、この発作の原因を調べるには、どんな小さな情報でもあると助かるんだ。だから、言える範囲でいいから教えてくれないかな?」
「…………」
栞が黙り込んでしまったので、直也はこれ以上追求するのは逆効果だと判断した。
栞のように真面目で控えめな若者ほど、自分の内面をさらけ出すことに強い抵抗を持つ。
それを無理に聞き出してはならない。
直也は治療にあたる際、常にそのことを念頭においていた。