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どう絡む 初登場の 名取美沙 どんな奴 人事部所属の 名取美沙 「なとりみさ」 一発変換 名取美沙。 すごっ。ほんまに一発で出た。
オープンで合理的で風通し良い会社って働きやすそうでいいな🥰 エレベーターに乗るタイミングを図ってアプローチ?🥹 省吾さんを狙ってる女子は多いのね😮💨
合理主義の省吾さんが無駄な事しちゃいましたね。 エレベーター、そこは「閉」一択でしょ! 危険察知で閉まらなかったら手動ででも閉めるべき!! 思いっ切り挟んじゃえ( `ω´ ) 省吾さんと二人っきりの箱の中。。 私なら息できない! 酸欠で倒れたらお姫様抱っこしてくれるかなぁぁぁ♡
次の週、省吾は品川区大崎にある本社にいた。
省吾の会社は駅前の高層ビルの中に本社を構えている。
CyberSpace.incは、去年この新しいビルに移転して来たばかりだ。
最先端のオフィスビルは、設備やセキュリティが整っていて快適に過ごせる。
このビルは、今最も勢いのあるIT企業にとってぴったりの環境だった。
オフィス内のパーソナルスペースは、腰の高さよりも少し高いパーテーションで仕切られプライバシーが確保されている。
社員達はそのパーソナルスペースを思い思いにアレンジし、個性豊かに使っていた。
家族写真を置く者、趣味のフィギアを並べる者、可愛い小物で飾る者、ミニマリスト風に何も置かずにスッキリ使う者など様々だ。
それはまるでアメリカ映画に出てくるようなオフィスで居心地が良さそうだ。
プログラマーやエンジニアは基本的にチームで動く事が多いので、ミーティングスペースも充実している。
共有スペースの脇にはカフェコーナーがあり、いつでも無料の飲み物や食べ物を手に入れる事が出来た。
カフェコーナーには時々出張土産等も置かれている。土産は誰かが配るのではなく、自分で持って行く形式だ。
この会社では、日本の古い会社にありがちな昔ながらの悪しき風習は存在しない。
CEOの深山省吾は徹底した合理主義者なので、無駄な作業はなるべく省き、社員一人一人の時間を尊重するようにしていた。
この日省吾は40階にある経営戦略本部にいた。
普段の省吾の居場所は41階にある役員室だったが、今日は新しいプロジェクトの件でこの階に来ていた。
省吾は最もフットワークの軽いCEOとしても有名で、何かあればすぐにこうして現場に出向いてくれる。
これもまさに省吾の合理主義の一環である。
省吾は右腕でもある川田公平(かわだこうへい)のデスクの前に立ち、誰かと電話をしていた。
そして電話を終えると言った。
「俺、四時から相川システムマネジメントの社長と会って来るよ」
「了解! じゃあ午後の経営企画会議はお前なしでやるよ」
「ん、頼んだ。で、夜は会食だっけ?」
「そう、六本木に七時な。俺も同行するから」
「わかった。じゃあ今のうちに昼メシ行ってくるわ」
「おっ? 今日はカロリーライトじゃないのか?」
「あんなもんばっか食ってたら、ウサギになっちまうよ」
「ばっかだなぁ、ウサギがあんなもん食うかよ」
「普通に食うだろ? じゃあな」
省吾は軽く手を上げるとフロアを出て行った。
「あいつは愛妻弁当があるからいいよなぁ……」
省吾はボソッと呟きながらエレベーターへ向かう。
そしてエレベーターの前に立っていると、社員達が気さくに声をかけてきた。
「深山さん、今日はお昼遅いですねぇ」
「電話でつかまって遅くなっちゃったのよ」
「一階のカフェ混んでましたよー」
「そっかぁ……この時間でもまだ混んでるのかぁ」
この会社で省吾の事をCEOと呼ぶ者は誰もいない。
それは省吾の希望でもあった。
省吾は社員達に『深山さん』か『省吾さん』と呼べと言っている。
それは新入社員に対しても同じだ。
仕事をする上で省吾が最も大事にしている事は、社員同士のコミュニケーションだ。
互いの感情を伝え合って意思疎通をはかりながら信頼関係を築いていく。
『良い環境、良い人間関係がある所でしか、良いものは生み出せない』を常にモットーとしている省吾は、自分からも積極的に社員に話しかけるようにしていた。
そうやって普段からコミュニケーションをはかる事によって、常に間口をオープンにしているのだ。
そんな省吾には、今専任の秘書がいなかった。
良い人材がいればすぐにでも採用したいのだが、なかなかお眼鏡に叶う人間が見つからない。
採用の募集をかければ、応募者は山のように殺到する。
しかしそのほとんどが、イケメンでやり手の『深山省吾』がお目当ての女性ばかりだったのだ。
女性達はなんとか採用してもらおうと、女らしさを最大限にアピールしながら面接に挑んでくる。
しかし常に合理主義を追い求めている健吾にとって、秘書に女らしさ等必要はなかった。
だからいつまでたっても採用にはいたらない。
今はスケジュール管理から資料作成、出張手配、来客対応、更にはマスコミ対応までも一人でこなしていた。
公平と一緒の時は公平が秘書代わりを務めてくれる事もあるが、彼にも仕事があるのでさすがに毎日とはいかない。
テレビや経済雑誌への露出が増えた省吾は、ここ最近目に見えて忙しくなっている。
秘書なしで忙しい毎日を過ごしていると、ダブルブッキングや日程の勘違い等、かなり冷や冷やする場面も多くなっている。
だから省吾はさすがにそろそろ有能な秘書が欲しいと思うようになっていた。
省吾は誰もいないエレベーターに乗り込むと、ボタンに指をかざして降りる階を指定する。
今は直接触れなくてもボタンが反応するの便利だ。
(あの感染症騒ぎの中でもこんな新しい発想が生まれるんだから、まさにピンチはチャンスだな)
省吾がそんな事を考えていると、扉が閉まるギリギリに一人の女性が飛び込んで来た。
省吾は慌てて『開』のボタンに指をかざす。
「ありがとうございます」
息を切らしながら入って来た女性は、ニッコリ微笑んで省吾に礼を言った。
その女性は、人事部所属の名取美沙(なとりみさ)だった。