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#イケメン
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夏樹さんに案内されたお店は、立川駅のすぐ近くにあるイタリアンレストラン。
仄暗い明かりに包まれた店内に入ると、バーカウンターが現れ、その両端は通路になっていて個室が数部屋ずつ並んでいる。
店員が案内してくれたのは、右側の通路にある一番奥の個室だった。
洞窟を思わせる入り口には、真紅のベルベット素材のカーテンで覆われ、中に入ると想像以上に広かった。
「ここのイタリアンレストラン、雰囲気がいいだろ?」
「落ち着いた感じで素敵なお店ですね……」
個室内を見回すと、クリーム色の壁には洗練されたイラストが数枚飾られ、二人掛けの広いテーブルの上には、キャンドルが灯されている。
暖色系の柔らかな光を見やりながら、夏樹さんと私は、フカフカのソファーを思わせる椅子に腰を下ろした。
「嫌いな食べ物はないか?」
「ええ。この店、初めてなので橋本さんにお任せします」
「なら、セットメニューにしようか」
夏樹さんは、このレストランによく来店しているのか、メニューを見ながら慣れた様子で注文している。
メニューを持つ彼の手が、私の視界の端に映った。
筋張った左手の薬指に嵌められている、控えめに輝くシルバーのマリッジリングに、無表情を装いながら凝視する。
──夏樹さん、結婚してたんだ。
彼の手元を凝視しながらも胸の奥がキュッと摘まれ、喉の奥が苦しくなる。
夏樹さんに気付かれないように、私は結婚指輪から、そっと視線を外した。
「では、乾杯」
「乾杯」
色々とりどりの料理が運ばれた後、二人でグラスを合わせると、私は気持ちを沈めるように、ウーロン茶を一口含む。
彼はお酒を飲むかと思っていたけど、アイスコーヒーで喉を潤していた。
「橋本さん、お酒じゃないんですね」
「ああ。今日は酒って気分ではないな」
それ以降、会話が閉ざされ、二人で黙々と食事をする。
けれど、緊張と動揺のせいなのか、味もよく分からなかった。
それに、彼の左手に鈍く光る既婚者の証が、気になって仕方がない。
「…………橋本さん」
「どうした?」
沈黙を破って徐に口を開いた私は、深呼吸して息を整える。
「橋本さん…………ご結婚……されてたんですね……」
私の言葉に、橋本さんの鋭い目元が揺れたように見えた。
コメント
1件
第3話、拝読しました。仄暗い照明やベルベットのカーテン、キャンドル…レストランの落ち着いた雰囲気がとても丁寧に描かれていて、その空間に一緒に座っているような気持ちになりました。指輪に気づいてからの、喉の奥が苦しくなる表現が本当に切なくて。見つめていたいのに、そっと視線を外すその仕草に、彼女の胸の内がじんわり伝わってきました。最後の「鋭い目元が揺れた」という一文で、この後の展開がぐっと気になります…!