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「テングニシ」の🐚を真子ちゃんにプレゼントしてお互いに👂にあてて海の音を聞くなんてロマンチック〜💓 それに翌日には2人の付き合いが広まってるなんて早すぎ‼️でも美紅は別れたのにまだ未練たらたらなんだろうなー、何か文句があるなら拓くんに伝えてよね‼️
「じゃあ今日から俺達は恋人同士だ。いいね?」
拓は優しい笑みを浮かべて言った。
その爽やかな笑顔に、真子はついうっとりと見とれてしまう。
拓が女性徒達から人気がある理由が、今わかったような気がした。
そして真子は頷いてから言った。
「はい。よろしくお願いします」
「よしっ、本日の目標達成!」
拓はそう呟くと、真子と手を繋いで波打ち際をぶらぶらと歩き始める。
まばゆいほどの眩しい午後の日差しの中、
二人は他愛のないお喋りをしながら砂浜をそぞろ歩く。
途中、波打ち際で薄ベージュ色の大きな貝殻が波に揺れていた。
拓はその貝を拾うと言った。
「デカいな」
「うん。でも綺麗な形。なんていう貝だろう?」
拓はすぐにスマホで調べ始める。
「『テングニシ』っていう貝らしい」
「てんぐにし?」
「そう」
「完璧な形で残っていてすごいね。その貝私もらってもいい?」
「もちろん。では、カレシからカノジョへの初プレゼントの贈呈です」
拓はそう言うと、仰々しく貝を真子に渡した。
「ありがとうございますー」
真子も両手を差し出して受け取った。
そしてすぐに貝殻を耳に当てた。
「あっ、聞こえる……」
「海の音?」
「そう……聞いてみて」
真子はそう言って拓の耳に貝殻を当てた。
「うん、聞こえるな…」
「でしょう?」
真子は嬉しそうに笑うと、もう一度自分の耳に貝殻を当てる。
その優しい音色は、真子の心を穏やかに癒してくれるような気がした。
(私、とうとう彼氏が出来たんだ)
まさか自分が校内一の人気者の彼女になるとは思ってもいなかった。
ふと見上げると、青い空にぽっかりと白い月が浮かんでいる。
その月を眺めていると、なんだか全てが自由になったような気がする。
繰り返し押し寄せる波は、まるで二人を祝福するかのように一定のリズムを刻む。
そして頬を撫でる風はとても優しかった。
その時すぐ傍の海面を、海鳥がかすめて行った。
(私はこの景色を一生忘れない……)
青空に浮かぶ白い月を見上げた。
拓と真子が付き合い始めた事は、次の日にはもう学校中に広がっていた。
昨日拓と真子が自転車で二人乗りをしているのを目撃した生徒がいたようだ。
二人が付き合っているという噂は、またたく間に校内に広がっていた。
真子は学校へ着くとすぐに友里に質問攻めにあう。
「長谷川君と付き合う事になったって本当なの?」
「うん、そうだよ」
「ひゃーっ! びっくり! まさか三年の受験で忙しい時期に二人が結ばれるなんてねぇ…きっと長谷川ファンも油断してたん
じゃない?」
「そうなの?」
「そうよ! 受験が終わったら告白するって言っている女子は結構いるもん」
「そうなんだ。知らなかった」
「でも私としては嬉しいよ。真子は今は彼氏は作らないって意固地になっていたからさぁ…なんか感無量っていうか」
「あはは、友里ってば、なんかお母さんみたい」
「フフッ、母心も少しはあるよ! だって真子とは小学校時代からの付き合いだからね」
「はいはい、いつも心配してもらって感謝してるよー」
真子は友里にニッコリと笑った。
「それにしてもまさか長谷川君とねぇ…」
まだ友里は信じられないといった様子だった。
そこで今度は真子が言う。
「友里こそ、森田君とはどうなのよ?」
森田とは森田敦也の事で、拓の親友だ。
敦也もかなりのイケメンだった。
拓と敦也はいつも一緒にいるので我が校のイケメン二人組として有名だった。
友里は過去に彼氏がいたが、今はフリーだ。
そして今は森田敦也に恋心を抱いている。
元々好きな相手に素直になれない友里は、
つい敦也に対して冷たい態度を取り続けている。
しかし真子から見ると、それが返って良い効果をもたらしているようにも見えた。
拓と同じくらいモテる敦也は、友里の冷たい態度が気になって仕方がないようだ。
そんな友里の態度が功を奏して、最近では敦也から友里にちょっかいを出す事が増えていた。
そこで友里が真子の質問に答えた。
「それがさぁ、最近やたらと向こうから話しかけてくるんだよね」
「えーっ、それっていい傾向じゃん。きっと友里の事が気になっているんだよ」
「そうかなぁ? 自分になびかない女を振り向かせようとしているだけかもしれないよ?」
「またまたぁ、そこは素直に受け取ろうよ。せっかくのチャンスを逃がしちゃうよ」
「うん、それはそうなんだけれどさー」
その時、
「よっ、お二人さんおはようっ!」
拓が二人の傍に近づき挨拶をした。
その後ろから敦也も続く。
「おはよーう!」
敦也も二人に声をかける。
真子と友里も挨拶を返した。
その時拓が腰を屈めて真子の耳元でヒソヒソと言った。
「昨日、大丈夫だったか? 疲れなかった?」
拓の思いやりに、思わず真子の胸がキュンする。
(長谷川君、優しい…)
それから真子は拓に答えた。
「大丈夫だよ。逆に海に行って元気になった」
「そっか、それなら良かった。今日は絵の予備校ないんだろう? だったら帰りにカフェに行こうよ!」
「うん行く」
そこで真子は閃いた。
「ねぇ、友里と敦也君も誘おうよ」
「えっ? まあ別にいいけど…」
若干気乗りしない様子で拓は返事をしたが、
それに全く気付いていない真子は、傍の二人に声をかける。
「二人も一緒に行こうよ」
真子の誘いに敦也はノリノリで答えた。
「行きまーす。行かせて下さいっ!」
「友里は?」
「うん…行くよ」
「よっしゃ!」
友里が行くと答えたので、敦也が嬉しそうな声を上げる。
そんな敦也を見て、三人は同時に声を出して笑った。
そんな楽しそうな四人の姿を、教室の隅からじっと睨んでいる女生徒がいた。
彼女の名前は小早川美紅。
美紅は拓の元カノだった。
真子はすぐに美紅の視線に気付いた。
去年のクリスマス前、二人が別れたという噂が広がった。
美紅は華やかな顔立ちのグラマラスな美人で、当時はバスケ部のマネージャーをしていた。
バスケ部のエースである拓とマネージャーの美紅の美男美女のカップルは、
当時、生徒達からお似合いだと言われていた。
そんな二人が別れてから、真子は二人が口をきいているのを見た事がなかった。
拓は歴代の元カノ達と、別れた後も友人として良い関係を続けている。
しかし美紅と別れた後、二人の間に交流は全くなかった。
真子にはそれが不思議だった。