テラーノベル
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笑い声が遠ざかることはなかった。むしろ、縛られたまま廊下の端に置かれた俺は、通りかかる生徒の格好の「ネタ」になった。
「おー、まだ生きてる?」
「もうちょっとでミイラだな」
蹴られたり、背中にマジックで落書きされたりする。
最初は意味のわからない線や文字だったが、そのうちに「ゴミ」「標的」といった言葉が増えていく。
何人かはスマホを向け、撮影して笑って去っていった。
時間が経つごとに、縄跳びの結び目が食い込み、手首や足首が痺れて感覚を失っていく。
汗と水で制服は重くなり、冷たさが皮膚の奥まで染み込む。
誰も助けない。教師が通っても、見て見ぬふりをする。
ここでは、俺がこうされているのが“当たり前”になっているのだ。
最後に現れた数人の上級生が、靴の先で俺の顎を持ち上げ、わざとらしくため息をついた。
「……おまえ、ほんと何のためにいるんだろうな」
そのまま縄を切るでもなく、壁際から突き倒して去っていく。
残された俺は、冷え切った身体で床に倒れたまま、廊下の蛍光灯の明かりをぼんやり見上げるしかなかった。
誰も、何も、変わらないまま。
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