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くつしたのあな
317
昼休み。
机が動かされる。
中央に空間。
「来い」
短い声。
立たされる。
囲まれる。
距離が近い。
逃げ場がない。
「今日さ」
誰かが言う。
「ちゃんと使えよ」
笑い。
意味は分かる。
分かるから、動けない。
その一瞬で、腹に衝撃。
強い。
息が抜ける。
「止まんなって」
低く言われる。
「反応遅えよ」
もう一発。
今度は横。
体が揺れる。
でも倒れない。
倒れたら増える。
分かっている。
「ほら」
カバンを投げられる。
受け損ねる。
床に落ちる。
その瞬間、
「使えねえ」
笑い。
「ちゃんと持てよ」
命令。
拾う。
差し出す。
「違う」
すぐ来る。
「持っとけって言ってんだろ」
言い方が変わる。
でも、意味は同じじゃない。
“差し出す”のが違う。
“持ち続ける”のが正解。
でも、その前に否定される。
「最初からやれよ」
蹴られる。
膝が揺れる。
持ち直す。
腕に重さが乗る。
そのまま固定。
「なあ」
別の声。
「そこ」
足元を指される。
反応が遅れる。
その瞬間、肩を掴まれる。
無理やり引かれる。
床に押される。
手をつく。
四つん這い。
「そのまま」
短く言われる。
背中に重み。
乗られる。
体が沈む。
手に圧がかかる。
痛みが走る。
「動くなよ」
低い声。
「揺れんだけど」
足が背中に押し付けられる。
重い。
息が浅くなる。
でも止まれない。
止まったら落とされる。
そのあとが来る。
分かっている。
「ほら、進め」
言われる。
前に。
手を動かす。
一歩。
痛み。
床が硬い。
手のひらが擦れる。
「遅え」
すぐ来る。
背中に圧。
無理やり進まされる。
「ちゃんとやれよ」
笑い。
「なあ」
上から声。
「これも」
何かが乗る。
追加で。
重さが増える。
腕が震える。
崩れそうになる。
その瞬間、
「落とすなよ」
低く来る。
「落としたら分かってるよな?」
脅し。
はっきり。
言葉にされる。
息が詰まる。
でも、止められない。
一瞬、手が滑る。
バランスが崩れる。
背中の重みがずれる。
その瞬間、頭を押さえつけられる。
床にぶつかる。
鈍い音。
視界が揺れる。
「何してんの?」
低い声。
「今の何?」
詰められる。
答えが出ない。
出す前に、腹に衝撃。
横から。
息が完全に抜ける。
声が出ない。
「ちゃんとやれって言ってんだろ」
繰り返される。
「……無理」
思わず出る。
小さく。
でも、確かに。
その瞬間、完全に空気が変わる。
「は?」
低い声。
背中の重みが消える。
代わりに、首元を掴まれる。
引き上げられる。
無理やり立たされる。
「今、何て言った?」
目の前。
距離が近い。
逃げ場がない。
「……無理って」
言い直す。
止められない。
その瞬間、首に圧。
締まる。
一瞬で。
息が止まる。
視界が狭くなる。
「無理?」
低く繰り返される。
「決めんの誰?」
さらに力が入る。
呼吸ができない。
手が動く。
外そうとする。
でも、
「触んな」
叩かれる。
手が落ちる。
何もできない。
数秒。
長い。
音が遠くなる。
意識が揺れる。
その直前で、手が離れる。
空気が一気に入る。
咳が出る。
でも、止められる。
「うるせえ」
押さえられる。
「ほら」
誰かが言う。
「まだいけるだろ」
笑い。
軽い。
でも、逃げ場はない。
「続き」
短く命令。
また床。
また四つん這い。
また重み。
同じことが繰り返される。
終わらない。
途中で、足を蹴られる。
バランスが崩れる。
「遅えって」
言われる。
速度を上げる。
「雑」
即座に来る。
全部同時。
全部違反。
頭の中で、何かが崩れる。
どうすればいいか、じゃない。
どうやっても無理。
でも、
「やれよ」
声が来る。
止まれない。
「なあ」
最後に声。
近い。
「なんでできねえの?」
同じ問い。
でも、もう違う。
答えがないことが分かっている。
「……」
声が出ない。
出せない。
その沈黙で、腹に一発。
深く入る。
息が潰れる。
「ほんと使えねえな」
笑い。
軽く。
でも、全部を決める。
遥は崩れない。
崩れたら増える。
分かっている。
だから、立つ。
息が戻らないまま。
体が震えたまま。
それでも、立つ。
ここでは、止まることも、拒否することも、選ぶこともできない。
ただ、命令が来て、体がそれに使われて、 できなければ壊される。
それだけが、繰り返される。
コメント
1件
うわ……読んでて息が苦しくなった。この「どうやっても無理」って分かってるのに、止まれない、選べない、ただ命令に従うしかないっていう描写がすごくリアルで……。特に「“差し出す”のが違う、“持ち続ける”のが正解」って、暴力の裏にあるルールみたいなものを感じさせられて、ぞっとしました。遥が崩れずに立ち続ける姿に胸が締め付けられます。ruruhaさんの描く“逃げ場のなさ”の空気感、本当に巧いです。