テラーノベル
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蓮司(椅子を後ろに傾けて)
「……静かになったなー。人の消えた教室って、ちょっとだけ落ち着く」
日下部(ノートを閉じる)
「雑音ないと、集中できる。……けど、教室に残るの、あんま好きじゃないな」
遥(机に突っ伏したまま)
「……わかる。帰れないくせに、帰っていい場所もないのって、ダサいなって」
蓮司(ちらっと遥を見て)
「その発言だけで、今日のMVPな」
遥
「賞品は?」
蓮司
「永遠の孤独(エターナルロンリネス)」
日下部(ツッコミの代わりに、微妙な顔)
(ガラッ、と勢いよくドアが開く)
クラスメイト(女子)
「あっ、ヤバ、体操着忘れた……! あ、え、あんたら、まだいたの……?」
(3人、同時にビクッとする。沈黙)
遥(即座に机の下に隠れるように座り直す)
「……見てないから、気にしないで」
蓮司(表情はそのまま、ゆっくりと目線をそらす)
「いや〜忘れ物ね、あるよね〜。俺もこの前、心とか全部置いて帰ったわ」
女子(若干引いた顔で)
「……そ、そう……じゃ、邪魔したね……」
(女子は素早く体操服を取って出て行く。静寂が戻る)
日下部(ため息)
「……別に悪いことしてたわけじゃないのに、あの空気」
遥(机から顔を出して)
「“いるはずのない人がいた”って空気、慣れてるけど、なんか、あれな」
蓮司(微笑しながら)
「お前、“いると気まずいインテリア”みたいな立ち位置、板についてきたな」
遥(少しだけ笑う)
「椅子と間違えられたことあるけど?」
日下部
「それは、嘘だろ……」
遥
「いや、マジで。後ろから座られて、動けなかっただけだけど」
蓮司(笑って)
「座られたまま耐えるなよ」
遥(ボソッと)
「……慣れてるから」
(少しの沈黙)
日下部(机を軽く叩く)
「お前は椅子じゃねえよ。動け、たまには」
蓮司
「でも“人に座られる人生”ってコピー、どっかで使えそう」
遥
「……あんま売れなさそう」
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