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日下部(プリントをめくりながら)
「……数学、提出明日って言ってたけど、もう今日回収するってさ」
蓮司(ペンを回しつつ)
「“前倒し”って言葉を、なぜ教師が使うとこうも腹立つのか。謎だな」
日下部
「さっき担任が来て、昼までに持ってこいって。お前、やってる?」
蓮司
「もちろん。“書いてある風の紙”なら完璧に揃えてある」
日下部(ジト目)
「……また字を汚して誤魔化してるだけだろ」
蓮司
「芸術だよ、“努力した感”の造形」
(日下部、遥の方をちらっと見る)
日下部
「……遥、お前も出すぞ。やってるか?」
遥(無言でカバンをガサゴソ。何も出てこない)
蓮司(静かに)
「……あー、なるほど。“ない”のね」
遥(机に突っ伏して)
「……時間がなかった」
日下部
「昨日、帰ってからずっと家だったって言ってたろ」
遥
「……“やれる”時間が、なかった」
蓮司
「名言出たな。“やれる時間がなかった”。精神的ブラックホール系のやつじゃん」
日下部(静かに、目を伏せて)
「……教師に言っとく。体調不良だったって、適当に」
遥(顔をあげずに)
「……ありがと。でも、怒られるの慣れてるから、いい」
蓮司
「……慣れてるって言うなよ。もっと適当に苦しめ。こっちがムカつくわ」
遥(小さく笑って)
「じゃあ今から苦しむわ。“あーつらい〜提出してない〜”ってやつ」
蓮司(鼻で笑って)
「そのテンションの低さで苦しむ演技すな」
日下部(ノートを差し出しながら)
「……このページだけでも写せ。間に合うかもしれん」
遥(それを受け取りながら)
「……ありがと。日下部、やさしいな」
日下部(目をそらして)
「いいから……早くしろ」
蓮司
「いいねぇ、友情と偽造が交差するこの瞬間」