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※小学生。
廊下の角を曲がると、数人のクラスメイトが待ち構えていた。
「お、来た来た、今日も遅刻ギリギリか?」
「また、こいつだけ取り残されるな」
遥は一歩下がる。口元がひきつり、体が自然に縮こまる。
「おい、今日の掃除当番はお前だろ?」
「う、うん……」
声は震えていた。誰も手を貸さない。全員がその場で待ち構え、遥の動きを観察している。
「お前、雑巾絞るの下手すぎだろ」
「もっと力入れろよ、気持ちいいくらいに絞れ」
床に這わされる。手も膝も泥まみれになりながら、遥は必死に雑巾を絞る。
「もうちょっと腰入れろよ、そんな腰じゃ雑巾も泣くわ」
「は、はい……ごめんなさい……」
涙がにじむ。言葉も息も、雑巾の水も全て一緒に押しつぶされる。
「ほら、もっと早く!」
「お前、ほんとに何やっても使えねえな」
嘲る声が廊下中に響く。遥はただひたすら命令に従い、心の中で自分を責める。
「俺は……どうしてこんなにダメなんだろ……」
ふと、隣の教室からささやき声が聞こえる。
「見ろよ、あいつまた床舐めるみたいにやってる」
「マジでキモい、笑える」
その言葉に遥の顔が熱くなる。羞恥と痛みが一気に押し寄せ、身体が硬直する。
「おい、雑巾の頭、もっと床に押し付けろ」
「……はい……」
声がかすれる。必死に動かす手、膝、腰。目には涙。だが、誰も助けてはくれない。
「お前って、ほんとにどうしようもねえな」
「雑巾として生まれてきたのか?」
言葉の刃が容赦なく刺さる。痛みと恥の中で、遥は自分を小さく小さく縮める。
「こんな自分、いなくなればいいのに……」
だが、次の命令はすぐに飛んでくる。遥はまた床に這い、雑巾のように押し付けられる。
「まだ拭き残しあるぞ、見えねえのか?」
「は、はい……」
汗と涙、泥と水が混ざり合う。身体中に力が入らず、震えが止まらない。
「お前の存在自体、無駄だな」
「……う……」
声にならない呻き。全員が笑い、残酷な遊びは終わらない。