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4話 リカとおかあさん620のショッピング街へ行く
入口は広く、
人の流れが一定だった。
立ち止まる人も、
走る人もいない。
リカの隣には、
おかあさんが歩いている。
肩までの髪をまとめ、
動きやすそうな上着。
両手が空く形の鞄を前に掛け、
歩幅は迷いがない。
リカは、
少し後ろ。
長めの袖。
慣れた靴。
腰元で、
電子マネーのキーホルダーが
小さく鳴る。
620の通路は、
広いのに圧迫感がない。
店は多い。
同じものも多い。
違いは、
置き方と距離だけ。
おかあさんは、
一軒ずつ立ち止まる。
触って、
確かめて、
戻す。
急がない。
「これ、どう?」
リカは、
一度だけ目を向ける。
「いいんじゃない」
それ以上は言わない。
必要なものは、
決まっている。
それ以外は、
無理に選ばない。
上の階へ行く。
エスカレーターは静かで、
会話が途切れない。
家のこと。
学校のこと。
次に買うもの。
特別な話はない。
それが、
少し楽だった。
レジの前で、
おかあさんは
支払いを済ませる。
現金。
迷いなく。
リカは、
その横で立っている。
数字が表示され、
処理が終わる。
外へ出ると、
人の流れがまた続く。
129のショッピングセンターより、
ずっと大きい。
それでも、
歩く距離は
不思議と長く感じない。
帰り道。
おかあさんは、
袋を持ち替える。
リカは、
キーホルダーを握る。
今日も、
移動は使わなかった。
それだけで、
この場所が
少しだけ身近になった気がした。