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朝は早かった。
まだ空が白くなり始めたころだった。
レオルが言った。
「出発します」
陽和は起き上がった。
鎧が鳴る。
もう慣れていた。
火は消えていた。
空気は冷たかった。
いつもより冷たかった。
氷王の城はすぐ近くだった。
歩き始める。
四人ともあまり話さなかった。
風の音だけがしていた。
やがて館の前に着いた。
大きかった。
黒い石でできていた。
門は開いていた。
誰もいなかった。
ミナが言った。
「入りやすいわね」
レオルが言った。
「警戒してください」
中へ入る。
石の床だった。
足音が響いた。
空気が冷たかった。
はっきり冷たかった。
陽和は言った。
「寒いですね」
ミナが言った。
「外より寒いわ」
フィルが言った。
「魔の気配です!」
奥へ進む。
広い廊下だった。
窓は少なかった。
光が弱かった。
吐く息が白かった。
レオルが言った。
「この先です」
扉があった。
大きかった。
重そうだった。
レオルが押す。
開いた。
広い部屋だった。
天井が高い。
奥に玉座があった。
誰かが座っていた。
黒い衣だった。
細かった。
静かだった。
氷王だった。
氷王が言った。
「遅かったな」
声は静かだった。
陽和は言った。
「すみません」
ミナが言った。
「謝らなくていい」
氷王が立ち上がる。
空気が変わった。
冷たくなった。
一気に冷えた。
今までと違った。
はっきり違った。
レオルが剣を抜く。
「勇者様、下がってください!」
陽和は下がろうとした。
だが止まった。
いつもと同じ場所だった。
ミナが言った。
「そこでいい!」
フィルが祈る。
氷王が手を上げる。
白い霧のようなものが広がる。
冷たかった。
息が詰まる。
床が白くなっていく。
レオルが言った。
「冷気魔法か」
ミナが言った。
「強いわよこれ!」
陽和は立っていた。
寒かった。
だが少し違った。
完全ではなかった。
少しだけましだった。
レオルが前へ出る。
剣を振る。
氷王が避ける。
ミナの火球が飛ぶ。
霧の中で弱くなる。
フィルの声が響く。
祈りは続いていた。
氷王が言った。
「妙だな」
こちらを見る。
「寒くないのか」
陽和は言った。
「寒いです」
正直だった。
氷王が少し考える。
それから言った。
「だが弱い」
また手を上げる。
冷気が強くなる。
一気に下がる。
床が凍る。
息が白くなる。
レオルの動きが遅くなる。
ミナが言った。
「まずい!」
フィルの声が震える。
陽和は立っていた。
寒かった。
だが倒れなかった。
少しだけ違った。
ほんの少しだけ。
レオルが言った。
「動ける」
ミナが言った。
「まだ撃てる」
フィルが言った。
「祝福です!」
氷王が言った。
「なるほど」
初めて少し驚いた顔をした。
「お前か」
陽和を見た。
「暖かいな」
陽和は言った。
「少しだけです」
氷王は言った。
「邪魔だな」
冷気がさらに強くなる。
部屋が白くなった。
凍る音がした。
レオルが踏み出す。
ミナが詠唱する。
フィルが祈る。
陽和は立っていた。
寒かった。
だが完全ではなかった。
少しだけ残っていた。
どうやらこの祝福は、
初めて意味を持つ場所に来たらしかった。