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中学2年・Yさん
テストのために、いつもより勉強しました。
友達と遊ぶ時間も減らしたし、苦手なところも何度もやり直しました。
自分なりに頑張ったと思います。
でも、結果は思っていたほどよくありませんでした。
平均点は超えたけど、目標には届きませんでした。
それだけなら、次に頑張ればいいと思えるはずなのに、今はもう勉強したくありません。
あんなに時間を使ったのに、これだけしか取れないなら、最初からやらなければよかったと思います。
頑張っていたときの自分まで、馬鹿みたいに思えてきます。
周りからは「次があるよ」と言われますが、次も同じだったらと思うと、また頑張る気になれません。
結果が出なかったとき、どうやって気持ちを切り替えればいいですか?
遥「……次があるって言われても、今の結果が変わるわけじゃないもんな」
Y「そうなんです。次の話をされても、今まで頑張った時間が無駄だった気がして」
蓮司「平均点は超えたんだろ?」
Y「はい。でも目標には届きませんでした」
蓮司「じゃあ、何もできなかったわけじゃない。でも、おまえが欲しかった結果ではなかった」
Y「……はい」
蓮司「その二つを一緒にしてないか?」
Y「どういうことですか?」
蓮司「目標に届かなかったから、勉強した時間まで全部ダメだったことにしてる」
Y「でも、頑張ったのに結果が出なかったんです」
蓮司「それは事実だろ。だからって、頑張らなかったのと同じにはならない」
Y「……」
遥「でも、頑張ったからこそ悔しいんじゃないかな」
Y「……そうです」
遥「そんなに勉強してなかったら、ここまで悔しくなかったかもしれない。でも今回は、いけるかもしれないって思ったんだよな」
Y「はい。前よりはできると思ってました」
遥「だから、点数を見たとき、結果だけじゃなくて期待してた自分まで恥ずかしくなった?」
Y「……なりました」
蓮司「なるほど。点数が低かったことより、『自分ならできるかもしれない』と思ったことまで後悔してるのか」
Y「はい。期待しなければ、こんなに落ち込まなかったのにって」
日下部「次から期待しなければいい、という話でもないだろ」
Y「……」
日下部「期待しなかったら、今回の結果に納得できたのか?」
Y「……分かりません」
日下部「たぶん、別の後悔が残る。もっと勉強すればよかったとか、本気でやればよかったとか」
Y「……そうかもしれません」
蓮司「つまり、どっちに転んでも後悔する可能性はあるんだよ」
Y「じゃあ、どうすればいいんですか」
蓮司「後悔をゼロにする方法を探すより、今回の結果から何が分かるかを見た方がいい」
Y「でも、今はテストのことを考えたくないです」
遥「それは、今すぐ考えなくてもいいんじゃないかな」
Y「……休んでもいいんですか?」
遥「休んだら全部解決するとは思わないけど、悔しいままの頭で次の勉強方法を決めても、まともに考えられないかもしれない」
日下部「少なくとも、今すぐ次の計画を立てる必要はない」
Y「……」
日下部「ただ、落ち着いてから結果は見直した方がいい。何を間違えたのか、時間が足りなかったのか、覚えたつもりで身についていなかったのか」
Y「それを考えるのが怖いです」
日下部「何が?」
Y「自分の勉強方法が間違っていたって分かるのが」
蓮司「そこか」
Y「……」
蓮司「頑張った時間が無駄だったと思いたくない。でも、やり方が間違っていたと分かったら、その時間まで否定される気がするんだろ」
Y「はい」
蓮司「でも、やり方を変える必要があることと、頑張ったことに意味がなかったことは別だ」
Y「……」
蓮司「例えば、単語を何十回も書いて覚えようとして、テストで思い出せなかったとする」
Y「はい」
蓮司「それなら、次は書く回数を増やすより、何も見ずに思い出す練習をした方がいいかもしれない」
Y「……」
蓮司「それが分かったら、今回の勉強は少なくとも次のやり方を考える材料になる」
Y「でも、最初からその方法を知っていたら、もっと点数が取れたかもしれない」
蓮司「そうだな」
Y「……」
蓮司「そこは悔しがっていいだろ。実際、もっと取れた可能性はあるんだから」
遥「蓮司、そこで否定しないんだな」
蓮司「何でも前向きに変換すればいいわけじゃないだろ」
Y「……」
蓮司「知らなかったことを悔しいと思うのは普通だ。でも、今知ったなら、次にどう使うかは変えられる」
日下部「結果が出なかった理由は、一つとは限らない。勉強方法だけじゃなく、問題との相性や時間配分もある」
Y「……はい」
日下部「だから、点数だけで『自分には能力がない』と決めるのは早い」
Y「でも、結果が出せないなら、頑張っても意味がない気がします」
遥「……結果が欲しいんだよな」
Y「はい。
頑張ったことを褒めてほしいわけじゃないんです。点数が欲しかったんです」
遥「それは、そうだと思う」
Y「……」
遥「頑張ったんだから点数が取れなくてもいい、なんて言われても、納得できないよな」
Y「そうです。頑張ったことだけ見てほしいわけじゃないんです」
蓮司「それは分けて考えればいい。おまえが欲しいのは結果。今回、結果は足りなかった。だから悔しい。それでいい」
Y「……」
蓮司「その上で、努力した自分を馬鹿にする必要まであるのかって話」
Y「……頑張ったのに取れなかった自分が、すごく格好悪く感じます」
遥「できると思って頑張ったのに、できなかったから?」
Y「はい」
遥「……俺は、できるかもしれないと思ってたことまで、恥ずかしいことにしなくていいと思う」
Y「……」
遥「できると思ったから、時間を使ったんだろ。最初から無理だと思ってたら、そこまでやらなかったかもしれない」
Y「……そうですね」
遥「期待したこと自体が間違いだったわけじゃないと思う」
日下部「ただ、次に同じ量を勉強するかどうかは別だ」
Y「……」
日下部「今回と同じ方法、同じ時間で繰り返す必要はない。やり方を変える、勉強量を調整する、先生に答案を見てもらう。手段はある」
Y「また同じ結果だったら、どうしたらいいですか?」
日下部「そのときは、その結果を見て次を考える」
Y「……ずっとそれの繰り返しですか」
日下部「そうだ。毎回必ず成功する方法があるなら、誰も苦労しない」
Y「……」
日下部「ただし、同じやり方を続けるしかないわけでもない」
蓮司「あと、おまえは『次も失敗したら』って考えてるけど、次に勉強するのは今回とまったく同じ条件じゃない」
Y「どういうことですか?」
蓮司「今回の答案を見て、どこで間違えたか分かるかもしれない。苦手な部分も見つかるかもしれない。次は違う方法を試せる。
それでも結果が出る保証はない。でも、今回の続きがそのまま再生されるわけじゃない」
Y「……」
遥「今は、次も頑張ろうと思えなくてもいいと思う」
Y「……はい」
遥「悔しいのに、すぐ切り替えられる方が難しいよ」
Y「でも、切り替えないといけない気がして」
日下部「切り替えることと、次の行動を決めることは別だ」
Y「……」
日下部「気持ちが残っていても、あとで答案を見直すことはできる。悔しさが消えてからでなければ何もできない、というわけでもない」
蓮司「逆に、無理やり切り替えたふりをして、何も変えずに同じことをするのも違うしな」
Y「……確かに」
遥「今日は、頑張った自分を好きになれなくてもいいんじゃないかな」
Y「……」
遥「ただ、馬鹿だったって決めるのは、もう少し待ってもいいと思う」
Y「どうしてですか?」
遥「今回の結果が悔しいことは、もう分かったから。でも、何が足りなかったかは、まだ全部分かってないんだろ?」
Y「……はい」
遥「分かってないことまで、自分がダメだったって結論にしなくてもいいんじゃないかな」
Yは答案を取り出した。何度も見直したはずの点数を、もう一度見つめる。
Y「……まだ、悔しいです」
蓮司「そりゃそうだろ」
Y「頑張った時間を無駄だったと思いたいのに、無駄じゃなかったって思いたい自分もいて」
遥「どっちもいるんだな」
Y「はい」
日下部「今日はそれでいい。答案を見直すのは、少し落ち着いてからでいい」
Y「……分かりました」
相談室を出る前、Yは答案を鞄にしまった。
点数は変わらない。悔しさも、まだ残っている。
それでも、頑張った時間を今すぐ全部捨てる必要はないのかもしれない。
Yはそう思いながら、扉を開けた。
🗝 三人からのことば
遥
結果が欲しかったのに届かなかった。その悔しさを、無理に「頑張ったからいい」と片づけなくていい。
でも、期待した自分まで恥ずかしいことにしなくてもいい。
蓮司
努力したことと、方法が合っていたことは別。結果が出なかったなら、悔しがるだけでなく、何が起きたのかを調べればいい。
今回の失敗を、次も同じ結果になる証拠にするな。
日下部
結果は変えられないが、結果の原因を調べて次の方法を変えることはできる。
気持ちを完全に切り替えてから動く必要はない。まずは、今回の答案から分かることを見ればいい。
コメント
1件
読ませていただきました……これは、すごくリアルな悩みだなと思いました。Yさんの「頑張った時間までなかったことにしたい」っていう気持ち、すごくわかります。努力した自分が報われないと、その時間ごと否定したくなるんですよね。でも蓮司たちの「頑張ったことと結果は別」「やり方を変えればいい」っていう言葉が、すごく沁みました。特に、無理に前向きにさせようとしないところが、ruruhaさんの優しさだなって思います。悔しさを認めた上で、次につなげる視点をくれる、本当に温かいお話でした🌷
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