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昼休み、三人とも食べてはいるが、同じ机ではない。微妙な距離。でも声は届く。
そして、話題は唐突に振られる。
蓮司「なあ、遥ってさ、好きな人とかいたことあんの?」
遥「……いきなり何?」
蓮司「いや、恋バナでもしてみよっかなーって。日下部の恋愛とか想像できないし、お前のもできないし」
日下部「……俺は別に、いい」
蓮司「だろうな。で、遥は?」
遥「……ないよ。そういうの」
蓮司「本当か?」
遥「うっせえな……。
てか“好き”とか言われても、何がどうなるとそうなるのかわかんないし」
蓮司「わかんないから経験するんだよ、たぶん。
ほら、好きな子と目合うとドキドキするとか──そういうのないの?」
遥「ない。……てか、俺がそもそも、誰かに好かれる前提で話すのおかしくない?」
一瞬、空気が止まる。
遥はそれを気にしてる風はないけど、目だけは弁当に落ちてる。
蓮司「……自分のこと、めっちゃ評価低いよなお前」
遥「だって現実だし。
俺と喋りたい奴なんかいないだろ、普通に」
日下部「……いるよ。ここに」
遥、手を止める。
でも顔は上げない。
蓮司「“普通”とか基準にするからだよ。
お前、顔とか性格とかより、“誰より一緒にいて気になる存在”っぽいもん」
遥「……それ、褒めてんの? からかってんの?」
蓮司「両方。からかいながら思ってる。
でも、わかんないのは別に変じゃないよ。
俺も、“好き”って感情たまに嘘くさく見えるし」
日下部「……」
遥「……あー、なんか、気持ち悪くなってきた。もう話終わり」
蓮司「逃げた。わかりやすいな」
遥「うるせえ」
日下部「……」
蓮司は笑って、遥はそっぽを向いて、
日下部は少しだけ、遥の方を見ていた。何も言わずに。
昼の時間は、いつも通り終わった。
でも、いつもより少しだけ長く、誰もスマホに触れなかった。